2019年、ドローンの社会実装がいよいよ進んでいく。そのようななかドローンを活用したビジネスで成功を収めるうえで重要なポイントとなるのが、人材だ。本特集は「ドローンビジネスが求める人材」をテーマに、いち早くドローンの人材派遣サービスを手掛けているパーソルテクノロジースタッフ金子祐輝氏と、ドローン業界のアナリストでもある春原久徳氏にインタビューを行った。聞き手は、ドローンジャーナル編集部。

ドローン・ジャパン 春原久徳氏(左)パーソルテクノロジースタッフ 金子祐輝氏(右)

拡大するドローンビジネス市場、日本におけるその現状とは

──日本におけるドローンビジネスの現状について教えていただけますか。

春原 :2015年ごろから始まった日本のドローンビジネスですが、2018年度に900億円もの市場が形成されており、2024年度には5000億円の市場へと成長することが見込まれています。現在は、分野によってビジネスのフェーズに入ったものと、未だに実証実験段階のものがあります。前者は、農薬散布や空撮、土木測量、ソーラーパネルや屋根等の設備点検、災害調査などがあげられます。ドローンの活用が期待されている分野は数多くあり、技術開発や実証実験を経て、商用化が検討されていくでしょう。

ドローンの活躍が期待される分野や用途

 また、特徴的なのは都会ではなく地方の、特にフィールドを中心にドローンの活用が進んでいるということです。“ビジネス”というとどこか人が集まる都会を中心にしたものというイメージがありますが、ドローン産業に関して言えば、地方での活用が成功しつつあるのが大きな特徴です。

 業態別にみると、機体やカメラを中心にした周辺機器も含めたハードウエアの開発、製造、販売と、ソフトウェア、ソリューションの開発、販売を行う企業、そしてこれらのソフトとソリューションを利用してサービスを提供する企業があります。

ドローンの活用と3つの目的

──ビジネスの分野で、ドローンを活用する目的は何でしょうか?

春原 :ビジネスの現場では、ドローンは目的を達成するための、ひとつの手段でしかありません。そしてその目的は、大きく三つに分けられます。

 まずひとつは“空撮”です。今やドローンはテレビや映画の撮影で当たり前のように使われていて、最近ではバラエティ番組でも空撮カットが数多く使われています。

 もうひとつは“作業代替”としてのドローンです。物流、農薬や肥料の散布、高所作業などこれまで人間が行っていた作業を代替する役割です。

 三つ目は“データ収集の端末(デジタルセンシング)”としてのドローンです。例えば農業であれば特殊なカメラで上空から農地を撮影することで、農作物の生育状況や収穫時期を予測するためのデータが取得できます。ドローンでデータを取得して、それをシステムに取り入れて活用します。

 ここまで説明した三つの目的のうち、空撮とほとんどのデジタルセンシングは、DJIのドローンのような汎用機で行えますが、作業代替として活用されるドローンは、それぞれの用途に合ったカスタマイズが必要で、もっぱら専用機が用いられています。

日本が抱える課題とドローンへの期待の高まり

──では、なぜここ数年、日本において産業用途でのドローンに期待が寄せられているのでしょうか?

春原 :日本は今、急速な高齢化と人口減少によって、労働人口が減っているということはみなさんもご存じのとおりです。
 そこで、「スマート農業」の自動農機や「スマート土木」の自動建機のように、こうした分野の省力化を図るためにロボットに期待が寄せられています。ロボットというと二足歩行型やコミュニケーション型のようなものがまずは思い浮かびますが、フィールドにおいて重要なのは“動く”こと。実はこの動くことというのはロボットにとって難しいことで、それを、空を飛ぶ形で実現したのがドローンなのです。

春原氏

──具体的にドローンに期待されるのはどういったことでしょうか?

春原 :コストや労働力の削減と作業効率や安全性の向上などが挙げられます。大きく分けると、業務に対しての売り上げや利益、質が上がる方向に対して寄与するものと、コストを削減する方向に寄与するもの。ドローンが社会実装されるには、このメリットを用途ごとに明確に打ち出す必要があると思います。ただ、今はまだ、社会実装をするうえでドローンがわかる人材がまだまだ少ないのではないかと思います。