福島第一原発における放射性物質のモニタリングや、火山・火口調査など、危機管理分野において多彩なソリューションを提供しているJDRONEが、新たにドローンを活用した“災害時の物資輸送”への取り組みをスタートさせた。無人ヘリコプター「FAZER R G2」と、物流ドローン「FlyCart 30」の二つの機体を、目的や環境に合わせて使い分けることで、物資輸送における多彩なニーズに応える。

(左)株式会社JDRONE 第2サービス部 南相馬サービスグループ グループリーダー 高村 善英氏、(右)株式会社JDRONE 第1サービス部 シニアエキスパート 野口 克也氏、(機体・左)ヤマハ発動機「FAZER R G2」、(機体・右)DJI「FlyCart 30」
(左)株式会社JDRONE 第2サービス部 南相馬サービスグループ グループリーダー 高村 善英氏、(右)株式会社JDRONE 第1サービス部 シニアエキスパート 野口 克也氏、(機体・左)ヤマハ発動機「FAZER R G2」、(機体・右)DJI「FlyCart 30」

 産業用ドローンのトータルプロバイダーであるJDRONEが、2024年7月から、山岳地帯や森林環境、また災害等で通常の物流ルートが使用不可能となった環境下における物資輸送ドローンの運用サービスを開始した。

 災害時の物資輸送に取り組むきっかけについて、同社の野口克也氏は「以前から物資輸送への取り組みは視野に入れていましたが、2024年年始の能登半島地震によって、災害時に孤立した集落などへの物資輸送の必要性を強く感じたことが大きいです」と語る。

 とはいえ、従来の物資輸送ドローンは、機体のコストや使いにくさから導入のハードルが高かった。そこに、2024年1月、DJIの物流ドローン「FlyCart 30」が登場し、すぐに導入を決めた。「FlyCart 30」は、同メーカー製空撮用ドローンと同様に操縦システムやバッテリー性能、耐候性に優れていることから、建設資材の運搬や山小屋への生活用品の輸送、発災時の物資輸送など、物資輸送の可能性が大きく広がったという。

機体の“二刀流”で目的や環境に合わせて、最適なソリューションを提供

 JDRONEは、従来活用している無人ヘリコプター「FAZER R G2」と、新たな武器である物流ドローン「FlyCart 30」の2タイプの機体それぞれの特長を活かす、機体の”二刀流”で、輸送の目的や環境状況を考慮し、最適な機体を選択する。

 「FAZER R G2」の特徴は、簡潔に言えば、「長距離・長時間飛行に向いている」ことだ。衛星通信の搭載により、通信コストはかかるものの百数十kmの長距離飛行が可能になった。常に基地局のコントロール下で飛行時の映像伝送や機体制御ができるため、LTE(モバイル回線)が整備されていない場所での飛行や、回線バックアップ用としても活用可能だ。自動航行やレベル3飛行の目視外飛行にも対応できる。ガソリンで動くため、補給さえ行えば連続飛行が可能なのも長距離フライトに向いていると言えるだろう。

 一方、「FlyCart 30」は、「短距離・短時間で、パワフルな飛行に向いている」と言える。ウインチでの吊り下げ運搬では荷物の接地時に自動リリースできるため、着陸が困難な場所でも荷下ろしが可能だ。また機体の姿勢や荷物の揺れを最小限に抑えるなど安定性を向上させる様々な制御が施されているほか、飛行中リアルタイムでバッテリー残量、飛行距離を確認し、飛行シミュレーションをおこなうことができる。バッテリー運用であるため比較的飛行時間が短いという懸念点をアプリケーションでもサポートしている。「FlyCart 30」は過酷な気象条件下でドローンによる自動輸送するための完成度の高いシステムと言える。

 JDRONEはそれぞれの特性を把握し運用機体として取り揃えており、輸送ニーズに合わせ、長距離・長時間は「FAZER R G2」、短距離・短時間は「FlyCart 30」と、最適な機体を提案できるというわけだ。

「FlyCart 30」と「FAZER R G2」の比較
「FlyCart 30」と「FAZER R G2」の比較

シビアな現場での経験が、災害時に活かされる

 JDRONEの特長は、人の立入りが規制された危険な場所におけるドローン運用実績が豊富なことにある。これまでも、福島第一原子力発電所事故に関する放射性物質のモニタリングや、原子力施設の事故を想定した無人航空機の防災適用研究など、実証実験にとどまらない多彩な業務に取り組んできた。
 また、野口氏率いるJDRONEの特殊空撮ブランド「ヘキサメディア」は、火山災害による土石流や降灰調査でも功績を挙げている。シビアな現場でのドローン運用で蓄積されたノウハウと経験があるからこそ、万が一の災害時において機動力と的確な判断が発揮される。

優れたパイロットの育成と自己管理により、墜落リスクを減らす

 JDRONEの強みは、顧客に寄り添い、機体と通信手段の使い分けだけではなく、テスト飛行環境やアタッチメント開発など、豊富な選択肢から最適な包括提案ができることだ。今年初めに首都高速道路㈱がおこなったドローンポートを用いた長大橋の自動点検に向けた実証実験では、AtrasPRO/AtrasNEST(Atras社〔ラトビア〕製)で見事ユーザー要望に応えた。

 ドローンの安全運航には、機体を操縦するパイロット自身にも高度な技能と健やかな身体が必要条件だ。ドローンの物流事業で必要とされるレベル3.5飛行での運用を見据えて、ドローンの国家資格「無人航空機操縦者技能証明」の一等資格(基本に限定解除の目視・昼間・25kg以上を含む)の年内取得に取り組むなど、パイロットの高スキルも確保している。当資格は身体検査が必要であるが、JDRONEが属するトーテックグループ各社は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人である「健康経営優良法人」としても認定されている。

 「我々が運用する大型機体は、万が一墜落等の事故を起こすと、甚大な被害を及ぼします。日頃から安全で確実な業務遂行を念頭においた計画立案や飛行業務を指導しています」と高村氏が語るように、パイロットの育成と自己管理を重視している。

被害を最小限にとどめる「減災」への取り組み

 JDRONEはその他にも、危機管理分野に対する様々な取り組みを行っている。例えば、衛星通信を搭載した無人ヘリコプターによる、ため池の災害状況把握だ。仙台市内に約100カ所ある防災重点農業用ため池は、震度5弱以上の地震や大雨特別警報が発令した際、市の職員が現地を点検し国に報告する義務がある。そこで、職員に代わって、無人ヘリコプターによる点検を行い、災害対策本部へリアルタイムに映像を共有することで二次災害リスクを回避しながら迅速に状況把握を行う。

 また、今年3月には首都高速道路㈱と「災害時等における無人航空機の運用に関する協定」を民間事業者第一号として締結。首都直下地震等の大規模災害時において無人航空機を活用し、被害情報の収集と状況の把握を行い、迅速な緊急交通路確保と早期復旧の支援・協力を行う。

 自然災害の発生を防ぐことは難しいが、JDRONEは「災害は起きる」という前提のもと、被害を最小限にとどめるための「減災」への対応も積極的だ。

危機管理におけるドローン運用のパイオニアとして社会貢献

 日本は自然災害が多いわりに、災害時の運用シミュレーションはいまだ充分に整備されてはいないのが現状だ。JDRONEはドローンも主要なインフラのひとつとしてとらえ、災害が起きやすい地域で協議会を設立し、安全な自動離着陸を実現するドローンポートを設置するなど遠隔操縦ができる運用技術の開発も想定している。

 「災害対策にとどまらず、ドローンで人を救う方法はいろいろ提案できる。ドローンが“ヒーロー”になる世の中を創造していきたい」と野口氏が語るように、JDRONEは危機管理分野におけるドローン運用のパイオニアとして、事業活動を通じた社会貢献を模索している。

お問い合わせ先

株式会社JDRONE
本社住所:東京都新宿区西新宿二丁目1番1号 新宿三井ビルディング 17階
E-mail:contact@jdrone.tokyo