2024年6月3日、NTTドコモ、Space Compass(NTTとスカパーJSATの合弁会社)は、エアバス・ディフェンス&スペース(以下、エアバス)、エアバス子会社のAALTO HAPS(以下、AALTO)と、HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)の早期商用化を目的とした資本業務提携に合意したことを発表した。

 NTTドコモとSpace Compassが主導し、みずほ銀行と日本政策投資銀行が参画するコンソーシアム HAPS JAPANを通じて、AALTOに対し最大1億ドル(約156億円)を出資する。なおエアバスは、同出資後もAALTOの最大出資者として残る予定。この出資により、AALTOの商用ロードマップ実現を支援し、日本における2026年のHAPSサービス提供開始とグローバル展開を目指す。

 HAPSは、地上約20km上空の成層圏を数か月にわたって無着陸で飛行し、地上への通信・観測サービスの提供を行う無人飛行体。HAPSを利用することで、通信環境が整っていない空や海上、山間部における端末との高速大容量・低遅延の直接通信が可能となり、災害時の被災状況のリアルタイム観測、送電線監視保守業務など長期間の定点観測を、高精細映像で提供することが期待される。

 AALTOが製造・運用するHAPS「Zephyr」は、2022年に64日間の滞空飛行を実現。これにNTTドコモの地上ネットワークの専門知識と、エアバスの観測ソリューションを組み合わせることで、HAPSベースの非地上ネットワークにおいて日本が主導的な地位を握ることが可能になるとしている。

 今回の出資に合わせて、今後数年間にわたる日本、アジアでの商用パートナーシップ契約を締結し、引き続き各社共同でHAPS事業を推進する方針だ。

各社コメント

NTTドコモ 常務執行役員CTO 佐藤 隆明 氏

 NTTドコモは、ネットワークの高度化・高速化に加えて、継続的な通信品質の改善を続けており、お客さまに信頼性の高い通信環境を提供しています。HAPSソリューションは、最先端の技術と経済性を兼ね備えており、山間部や遠隔地へのエリアの拡大や、自然災害への早期対応が可能となる革新的な技術であると感じています。Space Compass、エアバス、コンソーシアム内のパートナーとともに、顧客体験を変革するためにAALTOと共創することを楽しみにしています。

Space Compass 代表取締役Co-CEO 堀 茂弘 氏

 NTNは、日本における通信環境を大きく変革する可能性を秘めています。日本には多くの離島や山岳地帯があり、人口減少の時代において、新しい通信インフラであるHAPSは重要な役割を果たすと考えています。

Space Compass 代表取締役Co-CEO 松藤 浩一郎 氏

「Zephyr」はHAPSの中で最先端の無人航空機であり、その能力を最大限活用していきます。

 私たちは、日本においてさまざまなユースケースを創出し、アジアにも広げていきたいと考えています。

エアバス・ディフェンス&スペース エアパワー責任者(AALTO取締役会 議長)ジャン=ブリス・デュモン氏

 エアバスが開発の指揮をとった10年を経て、Zephyrは世界で最も先進的なHAPSプラットフォームとしての地位を確立しました。Zephyrは、成層圏を活用した官民デュアルユースサービスとして、宇宙および防衛産業において重要な役割を果たします。この投資により、NTT、NTTドコモとスカパーJSATとのパートナーシップを強化することができました。AALTOが今後数年間にわたる成長を推進するための優れた戦略的パートナーを得られたことを大変嬉しく思います。

AALTO CEO サマー・ハラウィ氏

 これはAALTOにとって画期的な投資であり、当社の技術を商業化するためのロードマップとして重要なステップです。この投資を通して、HAPSの高成長ポテンシャルとその戦略的なアプリケーションを有する通信および航空の世界リーダーが集まりました。

 この投資は、AALTOが次の商用に向けた開発段階に入ったことを示しています。これらには来年中に顧客向けのミッションを達成し、Zephyrの離着陸サイトを確立し、認証プロセスを進めることが含まれます。私たちは、成層圏からの持続可能な接続性および地球観測の新たなフロンティアを築きながら、社会にとって重要な価値を生み出すことに喜びを感じています。