2024年5月31日、五洋建設とプロドローンは、離着水と海上航行が可能な海洋観測ドローン「Penta-Ocean Vanguard-DroneAqua(以下、POV-DA)」を開発したことを発表した。

 POV-DAは、離着水が可能なドローンに高精度GNSS、スラスター、測深ソナーを搭載したもの。着水したPOV-DAの現位置(X、Y、Z)と水深は、陸上の操作画面でリアルタイムに把握することができる。操作画面上で観測地点の平面位置(X、Y)を指定すると、水中のスラスターを使って機体を観測地点まで海上航行させることや、波や流れがある中で観測地点に定点保持させることも可能だ。これらの機能を使って陸上から操作し、手軽かつ効率的に水深測量、波浪観測が行える。

POV-DA
着水時の計測状況

1. 水深測量機能

 防波堤や岸壁などの築造工事の施工管理では、水中の状況を直接目視できないため、測量船を用いた深浅測量(※1)やレッド測深(※2)などを一般的に行っている。POV-DAは測深データを無線で操作画面上にリアルタイムに表示するため、水中作業の進捗状況や土砂投入量の過不足を把握することができ、継続作業のための判断の迅速化が可能となる。測深性能は、一般的な深浅測量方法と比較して±10cm程度で、施工管理上、実用的な精度を有している。

※1 深浅測量:単素子や複素子の音響探査機器を用いて移動しながら測深する方法。
※2 レッド測深:レッド(鉛)を付けたロープを海底に投下して、水深をロープの目盛りで測深する方法。

2. 波浪観測機能

 海上工事では施工管理、安全管理を行う上で、各種気・海象予報データや当該地点近傍の波浪観測データに基づき施工可否を判断している。施工前に海岸等から目視等でも可否判断を行っている。

 POV-DAは、GNSSデータから算出した波高・周期を操作画面上にリアルタイムに表示するため、現地の波浪状況を迅速に把握することができる。観測結果は、波高計による観測結果との差が平均で10%以内であり、施工管理上、実用的な精度を有している。

 同機は空撮もできるため、災害時には陸上・水中双方の状況を速やかに把握することも可能。今後、多項目水質計や採水器の搭載など海洋計測の機能拡張を進め、海上工事における海域環境の保全・調査にも展開する予定だ。

POV-DAの導入イメージ

【POV-DA 仕様・性能】

モーター軸間距離1280mm(折りたたみ時860mm)
全高600mm
機体重量13kg(バッテリーとカメラ含む)
最長飛行時間20分
最高速度60km/h
飛行可能最大風速10m/s
着水時最長航行時間60分
着水時最高航行時間約4ノット
離着水可能最大波高約2m
耐水性IP55相当
衛星測位システムRTK-GNSS
ソナーBlueRobotics製 pingsonar


【POV-DAの計測・観測精度】

1. 水深計測精度の比較

2. 波浪観測(波高・周期)精度の比較