2024年5月22日、東京ガスは、日立LNG基地の地上タンク巡視点検においてドローンの活用を開始したことを発表した。これにより作業時間を1/3に短縮、高所での転倒や熱中症などのリスク回避が可能になった。

 茨城県日立市にある日立LNG基地は、地上式では世界最大級の大きさとなるLNGタンク23万kl2基と、LPGタンク5万kl1基を有している。3つの地上タンクの巡視点検は、社員1人が地上50m超の階段を毎日昇降して実施するため、時間を要し体力的な負荷が大きく、事故や熱中症のリスクも課題であった。

左:点検で上り下りする50m超の階段、右:目視で点検する様子(LNGタンク外径:90.2m)

 危険物を取り扱う基地では、通常「防爆型」の機器を取り扱うが、今回は「非防爆型」のドローンを導入するため、万が一ドローンが落下しても災害が発生しないようにすること、また巡視点検と同等の質をいかに担保するかを重視。この2つを両立させるために、さまざまな基準見直しや関係各所との調整を行った。

 ドローン選定においては、自動飛行機能や全方位障害物回避機能による飛行の安定性、カメラ性能(4K、1,200万画素)を考慮し、米国Skydio社のドローンを導入した。

採用した米国Skydio社のドローン

 2023年9月、ドローンを活用した点検を開始。従来は人の目で判断していた「ガス漏洩の有無」は現場に常時設置しているガス検知器システムで監視することとし、「設備の外観点検」はドローンに置き換え、保安レベルを目視点検と同様に維持しながら業務負荷を低減することができた。

 ドローンは社員1人がタブレット端末で動かすが、自動操縦のため操作はほぼ不要。設定したルートを飛行してタンクの映像を撮影し、タブレット上で社員が設備の破損やLNGの漏えいなどの異常の有無を確認する。ドローンは設備と一定の距離を保って飛び、通信が途絶えれば離陸地点まで自動で戻ってくるようにするなど、安全対策も施した。

 これにより、今まで90分を要していた目視点検の作業時間を1/3の30分に短縮することができた。現在は週7日のうち、1日は目視での点検、6日はドローンで点検を行っている。

ドローンで点検する様子
実際の点検画面(東京ガス)