4月10日~12日に東京ビッグサイトで開催された「Sea Japan 2024」の併設展「Offshore & Port Tech 2024」では、さまざまな水中・水上ドローンが展示されて連日多くの来場者で賑わっていた。特にFINDiの新機体「FF2」の実機や、SIX VOICE(屋号:水中ドローン社)の水空連携測位などは、いつブースを覗いても来場者が途切れず、熱心に話に聞き入っていた。

水中ドローン「実用性重視」の傾向強く

 本展示でおそらく注目度が最も高かった水中ドローンは、FINDiの新機体「FF2」の実機ではないだろうか。同社は本展示に初出展だったというが、出展者プレゼンでも立ち見が続出。「まさに自社で調査業務を行いながら、機体を改良し、また業務に使っていくというサイクルで開発し、機体を鍛えてきた」という。

潜水士との業務の棲み分けと「協業姿勢」を明確に示した(FINDiプレゼン資料)
新機種「FF2」(左)と従来機種「FF1」(右)(FINDiプレゼン資料)

 同社の機体開発の大前提は、直径が600mmに収まること。「FF2」は、横幅478mmで、マンホールにもすっぽり入るサイズ感だ。なおかつ機体上面をマルチプラットフォーム化した。撮影用カメラ、操縦カメラ、ライト4灯、全周音響ソナーを標準搭載しているほかに、「ユーザーがペイロードエリアを自由に使って機材を搭載できる」という点は、現場で重宝されそうだ。

 今後は、ソフトウェア開発にも力を入れていくという。先行して水中での機体操縦トレーニングができる「FFバーチャル」をリリース予定だ。マルチビームソナー活用の訓練や、ケーブルの引っかかりも体感でき、有用性を感じた。さらには位置情報と紐付けたデータ管理、自動操縦、水中の三次元データ化なども見据えている。

展示された「FF2」は、これまでも数々の現場で使い込まれてきた実機だそう
操縦トレーニングシステムの説明

 もう1つの目玉は、SIX VOICE(屋号:水中ドローン社)が今年から販売を開始したという「水空連携システム」だ。みちびき(準天頂衛星システム)のCLASと、Water Linked社のDVL「A50」を組み合わせることで、水中ドローンの高精度な位置測位を、従来価格の約5分の1程度の安価で実現したという。同社が開発したアプリをBlueOSにアップロードして利用できる。

水中ドローン操作画面の地図上に、赤い線で機体の軌跡が表示される

 水中潜航前に海上で緯度経度をCLASで取得し、水中ではIMU(慣性航法装置)による積算で相対位置を計算して、操作画面の地図上に機体の向き、緯度経度、水深を表示するというものだ。

 実際に海洋でBlueROV2を運用し、操作画面の地図を見ながら20~30分間の水中作業後に浮上させると、地図に示された位置から3~5m四方の誤差範囲で、機体が戻ってきたという。

機体の操作画面。展示会場(陸上)に青い機体のアイコンが表示されていた
展示ブースでは出展者プレゼンでも注目度の高かった「水中ケレン装置」のデモが行われていた

 ちなみに出展者プレゼン「BlueROV2を活用した水中ケレン・清掃システム」も、ほぼ満席という活況ぶりだった。「たとえば全長300mのコンテナ船では、直径約6mのプロペラの表裏を2時間で清掃完了できる作業性能を持つ」と、具体的な実績紹介もあった。

 ケレン作業に耐えうる電力供給システムや、ケレン後には先端工具を付け替えて厚み計測も可能だという作業性も特長だ。なおかつ、前述の位置測位機能や、同じDVLを活用した定点保持機能を併用することで、作業安全性向上や点検後のレポーティングが可能になるということで、聴講者がメモを取る姿も目立った。

水中ケレン装置 部品構成(SIX VOICEプレゼン資料)
水中ケレン装置の標準システム構成(SIX VOICEプレゼン資料)

水中・水上ドローンの現行機種も“勢揃い”

 本展示は、水中ドローン、水上ドローンの現行機種が一挙勢揃いしたことも印象的だった。ジュンテクノサービスは水槽を使ってAI画像認識による機体操作のデモを実施した。

ジュンテクノサービスによるAI画像認識による機体操作

 日本水中ドローン協会は、1コマというコンパクトなブースながら、CHASING M2 PRO MAXとBlueye X3の2機種を展示。こっそりと近日公開予定という新製品「CHASING X」の告知チラシが貼られているのも見逃せなかった。

 ALSEAMAR社は、水中グライダー「SEA EXPLORER X2」を展示した。特徴は、イリジウム通信による遠隔操作やデータ受信が可能な点で、SeaBreath社が取り扱っている。

 水上ドローンでは、炎重工とエバーブルーテクノロジーズが並んで出展し、両社らが一丸となって立ち上げた「日本水上ドローン協会」ののぼりも設置されていた。

左が炎重工、右がエバーブルーテクノロジーズの展示ブース
エバーブルーテクノロジーズ「高機動型水上ドローン AST-181」
炎重工は目的や用途に合わせて選べる多様な機種を打ち出していた

 2023年11月に開催されたプレイベントに出展していた水龍堂も参加したほか、いであのホバリング型AUV「YOUZAN」、やや離れたところのKDDIのブースでは、水空合体ドローンも展示されて注目を集めていた。

水龍堂の展示
KDDI「水空合体ドローン」

今後の進展を注目したい3つの展示

 最後に、今後の進展を注目したい展示についても、3つ紹介しておきたい。1つめは、自律航行船の実証を数多く手がけてきたエイトノットだ。今回の展示では、小型船舶向けにリリースしたという自動航行支援ソリューション「AI CAPTAIN」をメインに紹介した。自動航行に関する技術要素を切り出して他社とパートナーシップを結ぶことも視野に入れて、国内外の海運事業者向けにソフトウェアを販売提供していく事業方針を打ち出していた。

 2つめ、静岡県でも面白い動きが続きそうだ。同県はかねてより、清水港を中心とする駿河湾を実証フィールドとして企業や団体の誘致に力を入れてきたが、今後もその吸引力の強化に努めるようだ。2024年7月17日~18日には、海洋産業展「BLUE ECONOMY EXPO」を開催予定だ。日本水中ドローン協会らとも協働し、海洋経済(ブルエコノミー)に関する国際会議と多種多様な海洋産業が一同に集結するイベントも同時開催予定だという。

 3つめは、共同で出展したFlyabilityとブルーイノベーション。新製品「ELIOS 3 UT検査ペイロード」の実機展示と、超音波厚み計測を行うデモンストレーションを行った。船での新たなユースケースを提案しており、今後の活用の広がりに注目したい。