2024年3月26日、KDDIスマートドローン、KDDI総合研究所、プロドローンは、東京湾・中防大橋において、新たに共同開発した水空合体ドローン新型機によるモバイル通信を用いた遠隔での橋脚水中点検に成功したことを発表した。

水空合体ドローンによる橋脚水中点検実証の様子

 水空合体ドローンは、空中ドローンと水中ドローンが合体したもので、2021年5月に3社が開発した。モバイル通信による遠隔操作で飛行し、水中ドローン部分が水に潜り調査・点検等を実施する。音響測位装置により、衛星利用測位システム(GPS)が使えない水中でもドローンの位置情報を取得できる。

 新型機の水中ドローンはプロドローンが開発し、水中維持機能などのカスタマイズ開発が可能になった。また、音響測位装置を改良し、揺れや流れのある実海域でも安定して水中での位置を把握しながら点検ができる。タブレットで空中・水上・水中カメラの映像・情報を確認できるようになり、少人数で効率的に点検が行える。

水空合体ドローン新型機

 橋脚は全国に約73万橋あり、2030年にはその55%が築50年以上となる。点検の効率化が課題となっているが、橋脚水中部の点検は船やダイバーが必要となるため点検実施率が低く、より安全で効率的な点検手法が求められている。

 未来のサステナブルな都市を実現する東京都「東京ベイeSGプロジェクト」の採択事業として行った今回の実証では、船を出さずに陸から遠隔で橋脚水中部分の点検を水空合体ドローンによって実施できることを確認した。2024年度は、同プロジェクトにおいて社会実装に向けた実用化実証を行うとしている。

水空合体ドローン橋脚水中点検実証

 橋梁橋脚の点検では、[1] 水上部変状、[2] 水中部変状、[3] 基底部洗堀状況の確認が必要となる。今回の実証では、水空合体ドローンでこれらの劣化状況を遠隔で撮影できるかを検証した。

日程:2024年3月5日
場所:東京湾中防大橋

水空合体ドローン橋脚水中点検実証 点検内容

 [1] 水上部変状は空中ドローンカメラ、[2][3] の水中部の変状は水中ドローンカメラで撮影を行い、水産基盤施設点検基準に基づき老朽化度を判定した結果、広範囲の鉄筋露出・中詰め材が流出するような損傷は見られず、問題のないことを確認した。

【実証体制】

東京都「東京ベイeSGプロジェクト」主催
KDDIスマートドローンスマートドローンプラットフォーム
KDDI総合研究所音響測位技術
プロドローン機体製作

水空合体ドローン新型機

 空中ドローンと水中ドローンを組み合わせ、空を飛び、水中に潜ることができる。水中のタービンで水上を移動し、GPS・GNSS等の情報により、海流や風に流されることなく水上の位置を維持することが可能になった。新機体ではフロートを大型化し、水上の移動性能を向上させている。

 船を出さずに沿岸から水中の様子を確認できることから、日常的に船で養殖場や定置網の様子を確認している水産業監視、洋上風力・ダム・橋脚などの水中インフラ点検、ブルーカーボン測定などさまざまな用途での活用が期待される。

【基本スペック】

サイズ1670mm✕1670mm✕665mm
重量31kg
耐風性~10m/s
耐水性IP55
耐潮流性~1m/s
飛行時間~15分
潜航時間約1時間(海流による)
ケーブル70m

【水中ドローンと音響測位装置】

 今後の水中自動航行に向けて、音響測位情報に基づき水中での位置を維持する機能を搭載し、ハード・ソフトともにカスタマイズ可能な水中ドローンをプロドローンが開発。また、測位頻度を秒間1回から5回とし、動揺補正を精緻化した音響測位装置(音響発生装置・音響受信装置)を新たに開発することで、実環境での測位精度を向上させた。さらに、小型化することで水中ドローンに搭載しやすくした。

【水空合体ドローン統合管理アプリ】

 これまでばらばらに管理していた空中・水上・水中の映像・情報を、スマートドローンプラットフォーム(モバイル通信による目視外自律飛行、遠隔監視制御を実現するためのプラットフォーム)上に集約し、タブレットアプリに統合。タブレット上で水中ドローンの映像と位置を見ながら操作ができるようになった。