2024年3月6日、宇宙用作業ロボットの研究開発・製造を手掛ける米国のGITAI USA(以下GITAI)とKDDIは、2023年12月7日にロボットで基地局アンテナを設置する実証を実施し、成功したことを発表した。

 両社は、ロボットのみで設置可能な基地局の支柱やアンテナを新たに試作。実証では、あらかじめ設置していた支柱に探査車がアンテナを運搬し、GITAIのアーム型ロボットがアンテナを支柱頭頂部に設置を行いケーブルに接続のうえ、通電に成功した。

ロボットで設置した基地局

 NASAやJAXAをはじめとした世界各国の宇宙機関は、2020年代後半の有人月面着陸および、継続した月面探査活動を通じた科学的発見・産業振興・次世代の育成を目指す「アルテミス計画」を進めている。継続した月面探査活動には高速大容量な通信環境が必要とされており、月面でのモバイルネットワーク構築が期待されている。

 月面は放射線量が地球上の200倍、気温が -170℃から110℃まで変化するなど過酷な環境であり、モバイルネットワーク構築には無人での基地局設置が必要となる。一方、基地局の機器は有人設置を前提に設計されているため、ロボットのみで設置が可能な支柱やアンテナなどを開発する必要があった。

 KDDIは、2022年からJAXAとの月面の測位・通信に関する技術検討を実施しており、今回の成果とモバイルネットワークインフラの構築に関する知見を活用し、アルテミス計画に貢献するとしている。

実証について

1. 月面模擬環境にあらかじめ設置していた5mの支柱まで、探査車(GITAIローバー)がアンテナを運搬

2. 2台のGITAIアーム型ロボットが、アンテナを支柱頭頂部まで持ち上げ支柱に接続

3. GITAIローバーに接続されている別のGITAIアーム型ロボットが、アンテナのケーブルを接続し通電

4. GITAIアーム型ロボットでケーブル、支柱頭頂部のアンテナを取り外し

実証実験の様子(3分7秒から5分29秒までが本実証)
使用機器
支柱GITAIが試作したロボットアームで建設可能な支柱
アンテナ地上で利用しているアンテナ
探査車GITAIローバー(R1.5A)
アーム型ロボットGITAIロボットアーム(IN2)
各社の役割
GITAI探査車・アーム型ロボットの提供、事前屋内検証、屋外検証、モックアップ製作
KDDI地上基地局設備の仕様、設置に係る知見の提供