2024年2月1日、首都高速道路と首都高技術、JDRONE、NTTコミュニケーションズ、KDDIは、首都高速道路で初となるドローンポートを用いた自動飛行の実証実験を、首都高速道路の長大橋3橋（五色桜大橋、小松川斜張橋、レインボーブリッジ）を対象として、2024年1月25日に実施したことを発表した。同実証実験は、災害時などにおける迅速で確実な点検手法の確立を目的としている。

　自動でドローンの離着陸・充電ができるドローンポートを利用することで、あらかじめ橋梁付近にドローンを設置し、自動飛行するドローンの映像をもとに、遠隔地で迅速に橋梁点検が実施できることを確認した。

　首都高速道路では、大規模災害発生時における迅速な点検による早期の道路啓開を目指し、VTOL（垂直離着陸機）と無人ヘリを用いて中央環状線（葛西JCT～小松川JCT）の往復14kmの長距離自動飛行による高速上点検の実証実験（2023年1月）などを継続的に実施し、ドローンを活用した点検手法を検討してきた。

　今回、災害発生時に実施する高架下からの目視点検では損傷を見つけにくい長大橋を対象として、ドローンの自動飛行による点検の迅速化・確実化に向けた検証を行った。

　その結果、長大橋における遠隔地からの自動点検に対するドローンポートの有効性を確認した。一方、現場の通信環境がリアルタイムの映像品質に大きく影響を与えることがわかり、今後はドローンに適した通信環境の構築も含めて検討を進めるとしている。

実証実験の概要

1. ドローンポート対応型ドローン（AtlasPRO、SkydioX2、Matrice30T）を用いて、遠隔地（首都高速道路本社（東京都千代田区霞が関）内の災害対策室）からの点検開始の指示操作
2. ドローンポートから自動離陸
3. 対象の長大橋周辺を自動飛行しながら安定した映像を遠隔地にリアルタイムで配信
4. 遠隔地からの帰還指示の操作で同ポートに自動着陸

日時：2024年1月25日
場所：小松川斜張橋（高速7号小松川線）、五色桜大橋（高速中央環状線）、レインボーブリッジ（高速11号台場線）

橋の位置（左）、小松川斜張橋（右）
五色桜大橋（左）、レインボーブリッジ（右）
各社役割
会社名役割使用機体名実施場所
首都高速道路全体総括－－
首都高技術進捗管理・安全管理－－
JDRONE実証実験実施者AtlasPRO小松川斜張橋
NTTコミュニケーションズ実証実験実施者SkydioX2五色桜大橋
KDDI実証実験実施者Matrice30Tレインボーブリッジ

検証内容と結果

ドローンおよびドローンポートの適用性（機種や設置環境、GPS、通信環境など）
　各ドローンポートは問題なく稼働し、遠隔操作による自動離着陸が行えた。GPSや通信は比較的良好で途絶することはなかった。

ドローンで撮影した映像の確認方法（リアルタイムと生データの即時性、同時稼働時の対応）
　各映像をリアルタイムに確認することができた。同時に各橋梁それぞれの点検を実施できた。

事前に作成した飛行経路により確認できる映像（映像精度、現場状況の確認）
　現場の通信品質の違いや機体性能の違いにより映像品質にバラツキはあったが、被害状況や滞留状況などを十分に確認できる映像がリアルタイムで取得できた。都内ではさまざまな電波干渉があるため、安定した通信環境を現場に構築することが必要。

事前に作成した飛行経路に対する実際の飛行精度（構造物との適切な離隔保持性など）
　プログラムされた飛行経路から各機体とも逸脱することなく、安定した飛行を行った。

当日の様子

遠隔地（首都高速道路本社 災害対策室）

ドローン取得映像のリアルタイム確認
橋梁継目部のズーム映像（災害対策室から操作指示）

小松川斜張橋（JDRONE撮影）

飛行状況（別ドローン撮影）
ドローンポートでの離陸前状況
リアルタイム飛行取得映像

五色桜大橋（NTTコミュニケーションズ撮影）

飛行状況（別ドローン撮影）
ドローンポートでの着陸状況
橋梁部の映像

レインボーブリッジ（KDDI撮影）

飛行状況（別ドローン撮影）
ドローンポートでの着陸状況
リアルタイム飛行取得映像

使用機体と通信環境

　実際の災害時の利用を想定して複数の通信方法を準備した自動飛行を実施。NTTコミュニケーションズはモバイルWi-Fiによる通信をメインとし、バックアップとしてStarlink Business（※1）を利用した。JDRONE、KDDIはStarlink Businessによる通信をメインとし、バックアップとしてモバイルWi-Fiを活用した。

※1 大規模な低軌道衛星コンステレーション（衛星群）によって提供される衛星通信サービス。