2023年12月4日、KDDIとKDDIスマートドローンは、2023年11月20日から12月4日まで、人流データを活用した地上リスク評価およびドローンによる検体輸送の実証実験を実施したことを発表した。

 同実証では、スマートフォンの位置情報を基にした人流データを活用して、人通りが少なくリスクの低い飛行ルートを設計・選択し、病院から検査機関までドローンでの検体輸送を行った。

 同実証は、内閣府から採択された「先端的サービスの開発・構築や先端的サービス実装のためのデータ連携等に関する調査事業」の一環として、内閣府の「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定されている茨城県つくば市の協力のもと実施した。

 物流業界では、トラックドライバーの時間外労働の規制などによる「物流の2024年問題」が社会課題となっている。特に、医薬品や検体など納品遅延が致命的となる医療物資の配送時や、交通渋滞が発生する災害時などにおいて、交通状況に左右されない新たな配送手段としてドローンの利活用に期待が高まっている。一方、ドローン飛行に関する現行制度では、レベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)は低人口密度環境でのみ飛行が認められており、都市部でレベル4飛行が可能なエリアは極めて限定的である。

 同実証によりドローンでの検体輸送時に人流データを活用することで、リスクの低い飛行ルートを選択して安全に輸送できることを確認した。今後、実証結果や病院・検査機関からの評価を基に、社会実装に向けた課題検証を行い、地上リスク低減の仕組みを構築するとしている。

 また、地域住民の認知獲得および受容性向上にも取り組み、同実証ではつくば市の協力のもとスマートフォンアプリのプッシュ通知などを活用して、地域住民へ事前に飛行計画の通知を行った。

実証実験について

【実施内容】

1. 人流データの活用による地上リスク低減

 KDDIが保有するスマートフォンの位置情報からさらに細分化された時間軸での人流データ(ユーザーの同意を得たauスマートフォン端末)を活用し、飛行ルートにおける地上リスクの定量的な評価を行い、安全な飛行ルートを設計した。

 人流データを活用し、人口密度の低いエリアを飛行ルートとして設計。飛行ルートの設計上、人口密度の高いエリアを飛行する必要がある場合は、エリア内をさらに細分化して人口密度を分析した上で、飛行ルートの安全性を検証した。

KDDI Location Analyzerを活用した本実証でのルート設計方法

2. 検体輸送実証

 ドローンが定期運航・臨時運航している状況を想定し、モバイル通信と運航管理システムにより遠隔で自律飛行するドローンが、近隣のクリニックなどから実際の検体を回収して検査機関に輸送する実証を実施した。

 実証で得たクリニックなどからの評価は、ドローンによる検体輸送の社会実装に向けたサービス面や運用面における課題検証に活用する。

【実施期間】
2023年11月20日~12月4日

【配送ルート】

【使用機体】
量産型物流専用ドローン「AirTruck」

全長(プロペラ含む)1.7m×1.5m
高さ(アンテナ除く)0.44m
最大飛行速度10m/s
最大航続時間約50分
(ペイロード3.5kg、バッテリー22,000mAh×4本)
最大ペイロード5kg
耐風速10m/s

地域住民の認知獲得、受容性向上に向けた取り組み

 つくば市の協力のもと、ドローンが生活圏内の上空を飛行することを地域住民に対し、つくば市のスマートフォンアプリのプッシュ通知を通じて飛行経路や運行情報を通知した。

つくば市のスマートフォンアプリ画面(提供:TOPPANデジタル)
左、中央:飛行経路/運航情報通知、右:アプリとの位置情報連携イメージ(今後検証予定)

各者の役割

KDDI・事業全体の企画・統括
・委託事業管理
・人流データの解析
KDDIスマートドローン・プロジェクト支援
・ドローン実証および制度化に向けた推進
つくば市(協力)・事業への助言
・社会実装に向けた官学民連携の推進
・住民との合意形成
筑波大学(協力)・事業への助言
・社会実装に向けた官学民連携の推進
筑波大学病院(協力)
つくばi-Laboratory(協力)
LSIメディエンス(協力)
・事業への助言
・輸送オペレーションへの協力