2023年10月31日、Liberaware(リベラウェア)は、建設業界向けの人材サービス事業を行うワット・コンサルティングに、点検用小型ドローン「IBIS(アイビス)」を導入したことを発表した。

狭く危険を伴う天井裏の作業にIBISを導入

 現在、高度経済成長期に建設された建物が更新の時期を迎え、リニューアルや建て替えの工事が増えることが見込まれている。リニューアル工事には、建設当時の図面が必要となるが、図面がない場合や図面と現況が異なっていることも少なくない。特に天井裏は内装工事のたびに手が加えられ、建設当時から大きく状態が変わっているという。また、ダクトや配管、配線類が敷設されているため、工事着工にあたっては現況調査が必要となる。

 天井裏の現況調査は、これまで人が天井裏に入り、構造物や配管・ダクト類の寸法を測定したり、写真を撮影したりして資料を作り、リニューアルの設計を行っていた。しかし、天井裏は人が入って作業するには狭く危険を伴うことから、IBISの導入に至った。

 IBISを活用することで、天井裏の様子を映像として見られるだけでなく、映像から点群データを作ることができるほか、建物の地下ピットや下水関連施設など、さまざまな場所への応用も可能である。

IBISの活用場面

 IBISを使った天井裏の調査では、レーザースキャナと組み合わせる形で、点群データから詳細な図面を作成。点群データを活用して作業を効率化する。

 下水処理施設の調査では、汚泥を浄化する沈殿槽といった水槽の劣化状況の確認時にIBISを使用。鉄筋コンクリートでできた水槽の壁面や天井部、内部に設置してある機械や装置の劣化状況を撮影している。従来は水槽の水を抜き、立てづらい場所に足場を設置して点検作業をするため、コストや時間がかかっていた。

 下水処理施設の水槽を点検する際は、万が一IBISが墜落したときのことを考え、機体に浮きを付けて沈まないようにする対策をリベラウェアと開発。飛行に影響しない浮きの取り付け場所や、着水した後、数十分間浮いていられるかなどを両社で検討した。

 配管が入り組んだ廊下壁面の漏水調査では、レーザースキャナを使って三次元化した場合、床に設置したレーザースキャナからは配管やケーブルラックの上面がスキャンできなかった。そこで、IBISを飛行させて設備の上面を撮影し、レーザースキャナのデータを合わせることで詳細な図面を作成している。

建設の各分野に精通した4名をIBISパイロットとして育成

 IBISを導入するにあたり、ワット・コンサルティング社員をリベラウェアに3カ月出向させる形で、4名のパイロットを育成した。社内で公募を行い選抜した4名は、建築、プラントなど、ドローンによる調査や点検の対象となる各分野に精通している。同社はビルの天井裏を模した環境を整備し、日常的にIBISの操縦訓練を行っている。また、IBISのレンタルサービスは何度でも修理・交換が可能であるため、機体を壊してしまうことがあっても、気負わずに練習ができるという。

下水道関連設備で点検準備をする様子

 ワット・コンサルティング代表取締役社長の水谷辰雄氏は「現在は横浜のDXセンターに拠点を置いているが、将来的には関西、九州、北海道など全国の拠点にパイロットチームを置くことを目指している。また、今はリベラウェアがメーカーとしてサービスを行ってるが、いずれはワット・コンサルティングがプロバイダサービスを担っていけるような体制を築きたい」と、コメントしている。