2023年10月17日、東京都⽴産業技術研究センター(以下、都産技研)とアップウィンドテクノロジー・インコーポレイテッド、東京都⽴⼤学、五洋建設は、⾃律移動しながら桟橋の点検を⾏う点検⽀援ロボット「YURA(Your Under-the-pier Robotic Assistant、ユラ)」を開発したことを発表した。

⾃律型桟橋点検支援ロボット「YURA」

 これまでの桟橋点検作業は、⽼朽化したものも多い桟橋の下に作業員が船で⼊り写真を撮るという、危険を伴うものであった。YURAを利⽤することで作業者が安全に点検作業を⾏うことが可能になる。

 YURAは、揺れに強いコンパクトな水上移動ロボットで、波の影響を受ける海上でも安定した⾛⾏を行う。90×60cmの小型ボディと旋回機能により、狭い桟橋の下でも全⽅位に⾃在に移動することができる。

 また、360°カメラによる高画質動画のリアルタイム送信が可能。地上の点検作業者に対し、ローカル5G/Wi-Fi 6の使い分けで、遅延なく高速動画送信を行う。

 今後、港湾施設での実証実験の評価を⾏い、2024年度の製品販売を目指すとしている。

技術概要

 日本全国の港湾施設に多数存在する桟橋は⽼朽化が進んでおり、維持管理のためには定期的な点検が必要となる。しかし、技術者不⾜や点検範囲の広さ、人が⼊りにくい狭い箇所の点検の安全性確保、航空機や船舶運航による時間の制約、波浪の影響など、さまざまな課題がある。

 これらの課題を解決するため、桟橋下の波のある海⾯を⾃律航⾏し、点検箇所の画像や映像を高速かつリアルタイム送信でき、少人数で運⽤可能な桟橋点検支援ロボットが求められていた。同ロボットによって桟橋の点検作業の安全性向上、効率化、点検コスト削減を目指す。

⾃律型桟橋点検⽀援ロボット「YURA」

【ロボット】
 東京都⽴⼤学 武居研究室が開発した⽔上⾃律移動ロボット。LiDARの3次元データを⽤いて⾃⼰位置推定を⾏い、8つのスラスターにより前進後退のほか旋回を含む全⽅向の移動が可能。波浪状態(周期2秒、波高30cm)でも姿勢を保ちながら⾃動衝突回避を⾏い、指定された経路を指定された位置まで⾃動航⾏する。

⾃律型桟橋点検支援ロボット「YURA」

【検査画像の高速転送/ローカル5Gの活⽤】
 ローカル5G通信の低遅延かつ安定した接続性を利⽤したロボットの遠隔操作(コマンド送信、状態・位置情報取得)、画像転送(360°カメラで撮影した4K/30fpsの高画質動画データを低遅延でオペレーターPCに転送)を実現。ロボットがローカル5G電波の圏外となった場合には、⾃動的にバックアップ⽤の通信回線であるWi-Fi 6に切り替えてロボットの遠隔操作や画像転送を継続する。

構成図

【実証実験】
 都産技研のDX推進センター内ローカル5G基地局設置場所において、通信試験と性能評価を実施。五洋建設技術研究所内の造波装置を備えた⽔理実験⽔槽では、ロボットの姿勢制御試験、⾃動航⾏試験、障害物回避試験などの評価を実施した。

⾃動航⾏試験の様子
360°カメラ画像
LiDARによる点検場所のレーダー画像(SLAM画像)