2023年9月28日、エアロダインジャパンは、山梨県が実施する「第4期TRY!YAMANASHI!実証サポート事業」に採択され、ドローン目視外飛行に向けた「ドローン物流推奨飛行ルート」を山梨県北杜市に8ルート作成したことを発表した。

ドライバー不足により求められる物流の効率化

 物流業界では、ECの伸びを背景に増え続ける貨物量とトラックドライバーの高齢化で、人手不足が慢性化している。特に過疎地域では、地域の物流網が限界に達している所もあり、今後は物流網を維持できない恐れがある。また、2024年から始まるドライバーの労働時間規制により、ドライバー不足が加速すると考えられる。それに伴い、代替の輸送手段や物流の高効率化が求められており、その解決策の1つとしてドローン物流に期待が集まっている。

課題となる「目視外飛行」の安全性の確保

 解決策としてドローン物流が期待されているが、インフラとして社会実装するには課題が多い。その課題の1つとして、安全な「目視外飛行」の航路の設定が挙げられる。ドローンの飛行ルート設計には、地上・上空を含めた現場の環境のリスクアセスメントのほか、法規制を守りながら、不慮の事態が起きた際にも安全に着陸できるよう、あらゆる角度から安全性の確保を検討しなければならない。また、LTE通信などを使い、常にドローンの周囲を監視し、異常事態に即応できる体制が不可欠だ。これらは一般的な「目視内飛行」とは異なるスキル・経験が求められるだけでなく、何度も現地踏査が必要となる地道な作業が求められる。

 今回はそれらの課題解決に焦点を当て、飛行ルート設計とLTE電波の調査を含めた「推奨飛行ルート」を設定する実証実験を行った。

「ドローン物流推奨飛行ルート」の評価・選定

 まず、公共施設を結ぶ飛行ルート案を机上検討にて100本程度作成。現地踏査を行い、地形や地上障害物の有無など、リスクヘッジを行い数十本に絞り込んだ。その上で実際にドローンを飛行させ、上空LTEの電波強度を計測して、飛行ルートの上空の安全性を評価した。

 これらの結果から、地上・上空の安全性が高くドローン飛行に適したルート8つを、「ドローン物流推奨飛行ルート」として設定した。ルートの検討にあたっては、離着陸場の安全確保のほか、鉄塔や樹木などの地上障害物の有無や見通しの良さ、上空LTE電波の伝送速度や電波安定性などを検証し選定した。

 災害時や平時には、これら事前に設定したルートを使い、ドローンが荷物を積んで飛び立つことができる。飛行方法は目視外飛行(システムによる自律飛行)を想定しているが、今後の実証実験においてパイロットが伴走することも想定し、ドローンを目視しやすい伴走用地上ルートも設定した。

 推奨飛行ルートは、ドローン運航管理システムなどを通じて運行事業者に提供するため、ワンクリックで飛行させることが可能だという。今後はこれらのルートを用いて、ドローン物流やその実証実験に取り組みたい物流事業者などとの協業を進めるとしている。

作成した推奨飛行ルート(8ルート)

1. 塩川病院~明野総合支所
2. 塩川病院~須玉ふれあい館
3. 明野総合支所~明野ひまわり畑
4. 須玉ふれあい館~高根総合支所
5. 高根総合支所~大泉総合支所
6. 高根総合支所~花の森公園
7. 大泉総合支所~大泉駅前駐車場
8. 大泉総合支所~三分一湧水館