2023年9月21日、KDDIとアイサンテクノロジーは、2023年9月8日、長野県塩尻市の中山間地域で、多様な位置測位方式を連携させ、自動運転車からドローンが離着陸する物流実証に成功したことを発表した。
同実証では、自動運転車とドローンそれぞれの異なる測位方式を、2社が開発した「協調制御プラットフォーム」を活用することで連携可能にし、自動運転車とドローンがお互いの位置情報を把握して協調動作できることを確認した。
[自動運転車] SLAM(Simultaneous Localization and Mapping):移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術。
[ドローン] PPP-RTK(Precise Point Positioning RTK):PPP方式のカバー範囲の広さとRTK方式の測位精度の高さの両者のメリットを併せ持つ高精度位置測位技術。
2社は今後、労働力不足が顕在化する2030年を目途に、都市部からの大規模な配送は自動運転車、陸上からの輸送が困難な経路ではドローンで配送を行うといった全自動の荷物配送サービスの社会実装を目指すとしている。
なお同実証は、情報通信研究機構から受託した「スマートモビリティプラットフォームの実現に向けたドローン・自動運転車の協調制御プラットフォームの研究開発」の一環であり、KDDIスマートドローン、KDDI総合研究所およびティアフォーの協力のもと実施した。
人口減少に伴う労働力不足、懸念される買い物困難者の増加
2030年の日本において、急速な人口減少に伴う労働力不足が課題となっている。特に中山間地域では公共交通機関の縮小や小売業者の減少などにより、日常生活を営む上で必要となる買い物が困難になる人の増加が予想される。こうした課題を解決する手段として、自動運転車やドローンなどのスマートモビリティの連携による自動配送の仕組みの構築が重要となっている。
しかし、スマートモビリティはそれぞれの測位方式で動作しており、方式が異なるモビリティを連携するには各モビリティに専用の受信機を取り付けるなどのカスタマイズが必要なため、モビリティ連携の障壁となっている。そのため、モビリティを汎用的に統合管理可能な仕組みが必要とされている。
実証概要
2023年3月に、移動する自動運転車の位置に合わせてドローンが離着陸する実証に成功しており、今回の実証も同様に、荷物を載せたドローンが自動運転車上から飛び立ち、中山間地域を飛行したのち自動運転車上へ帰還するシナリオで実施した。
前回(2023年3月)の実証では、PPP-RTK方式の高精度位置測位サービスに対応したドローンと同サービスに対応した受信機を取り付けた自動運転車で、位置情報を連携した。今回は、自動運転車に受信機は取り付けず、協調制御プラットフォームを活用することで、モビリティが持つ本来の測位方式(自動運転車:SLAM方式、ドローン:PPP-RTK方式)をそのまま使用できることを確認した。これにより、各モビリティに対して機器設置などのカスタマイズの手間を削減することができる。
<実証に利用したスマートモビリティ>
<異なる測位システムが連携する位置測位技術イメージ>
<各者の役割>
KDDI | ・本研究開発の全体統括および統合実証主管 ・異なる測位方式の連携(座標変換システム)構築 ・ドローンと自動運転車の協調制御プラットフォームの開発 ・PPP-RTK方式の高精度位置測位サービスの提供 |
アイサンテクノロジー | ・高精度3次元地図の製作 ・ドローンと自動運転車の協調制御のための位置座標補正システムの開発 ・自動運転車運行のための行政や関係者との調整、協議、許認可手続き |
KDDIスマートドローン | ・ドローン飛行のための行政や関係者との調整・協議・許認可手続き ・ドローン飛行システムの技術開発・提供 |
KDDI総合研究所 | ・衛星回線とセルラー回線のシームレスな切り替え手段の開発 |
ティアフォー | ・自動運転システムの技術開発・提供 |
将来的に荷物配送計画から配送・帰還まで自動で行えるよう機能を拡張
今後、自動荷物配送サービスの社会実装に向けて、荷物配送計画から配送・帰還までをすべて自動で行えるよう協調制御プラットフォームの機能を拡張していく。
また、異なる測位方式を使用するスマートモビリティの協調制御に成功したことにより、この技術を応用することで、自動走行ロボットや水空合体ドローン(親機である空中ドローンに、子機となる水中ドローンを搭載した合体型のドローン)などの多様なスマートモビリティ同士の連携が可能となった。今後、多様なスマートモビリティを活用したユースケースも想定し、同プラットフォームの機能開発を推進するとしている。