山田商会ホールディング(以下、山田商会HD)は、2024年12月4日、Liberaware(以下、リベラウェア)と連携し、世界遺産である真言宗御室派総本山 仁和寺においてドローンによる床下・天井裏点検実証を行った。

写真:仁和寺白書院の室内、点検を行う様子

 自然災害が多い日本では、地震をはじめとするさまざまな災害に対応できるレジリエンスが求められている。特に、寺院のように長く建物を使い続けることが前提となる建造物では、床下や天井裏をはじめ定期的な点検とメンテナンスが必要となる。

 仁和寺でも国の補助金等を活用し、建物ごとに設計士が現場を確認して修繕計画の仕様や概算見積を策定、専門資格を有する宮大工会社が現場を確認しながら修繕を行っている。

 仁和寺白書院の修繕を担当する宮大工の立ち会いのもとドローンによる点検を行い、その可能性について検証した。

【実証概要】

目的小型ドローンによる床下・屋根裏点検の実現可能性検証
実証場所仁和寺 白書院床下
床面積概算196m²(仁和寺白書院 建築面積)
使用機体リベラウェア製「IBIS2」
点検箇所床下および天井裏
点検必要時間床下、天井裏:各1時間

 実証の結果、小型ドローンによる点検は、設計士による仕様策定、宮大工による点検・修繕業務の両方で活用できることがわかった。床下点検は仕様策定時の事前確認作業の効率を高め、屋根裏点検は、事前確認作業に加え状況確認・記録、寸法計測業務の効率化に活用可能。また、ドローンの活用により、屋根裏点検では従来4人で3日かけていた初期の確認作業を半日程度に短縮することができた。

各者コメント

仁和寺

 仁和寺ではこれまで、仁和寺の文化財が鑑賞できるオンライン特別サイト「御室デジタルミュージアムオンライン」の制作や境内の歴史的建造物「松林庵」を宿泊施設として活用する事業など、先人たちから受け継いだ建造物を含む文化を100年、200年先に伝えるために時代に応じた取り組みにより新たな付加価値を発信しています。各地域で古くから大切に守られてきた寺院の維持・管理は、その時代の様々な関係者の協力の元、日々効果的な方法を模索し、積み上げられてきたものです。この度の小型ドローンを活用した点検により、寺院の点検業務が効率化されることは既存文化財の維持だけでなく、新たな文化財の創出や技術の継承にもつながる取り組みだと考えています。

リベラウェア

 Liberawareが開発・提供する小型ドローン「IBIS2」は、主に「狭い・暗い・危険」なインフラ、設備の点検シーンで活用されてきましたが、今回の取り組みの中で、歴史的建造物の点検や改修工事時の現況調査においても、「人の危険な現場への侵入を回避」「点検、調査に必要な時間を大幅に短縮する」という観点で有効であることがわかりました。特に、改修工事に関しては、頻繁に行われるものではないことから過去のデータが無いことが多く、技術継承に必要な情報が十分ではないケースが多いと考えられます。小型ドローンの活用により、技術者間で共有しやすい動画や点群データを継続的に取得していくことが、重要な歴史的文化財を効率的に維持していくためにも大きな価値があると考えています。

山田商会HD

 山田商会は創業から120年もの間、ガス工事を通じて街や建物のレジリエンス向上に努めてまいりました。今回のLiberawareとの実証を通じて、従来の点検方法に比べて、作業性と安全性を共に高めることができると確認できました。古くから大切にされてきた文化財をデジタルデータとして残すことで、災害に対するレジリエンスを向上させるとともに、時空を超えてその価値を伝えられる可能性を感じました。