2023年3月31日、奈良市は、奈良市消防団の新たな取り組みとして、ドローンを活用した情報収集部隊を創設することを発表した。4月1日より運用を開始する。

 消防団員数は年々減少傾向にある一方、風水害などの災害が多発化・激甚化するなか、消防団に求められる役割は多様化・複雑化している。消防団の機動力を活かして情報収集部隊を設置し、広範囲の火災などの災害情報をドローンによりいち早く収集する。すでに運用を開始している常備消防と連携して必要資機材の準備と災害対策をとり、災害の早期収束を目指す。

 2021年12月末時点で、全国の2,198消防団のうち40団体に60機が導入されているが、奈良県では初の事業だという。なお同事業は、全額国費(消防庁「消防団の力向上モデル事業」)で実施するものとなる。

 山間部や過疎地域など、消防隊の現場到着までに時間がかかる地域で活躍することが期待される。また、消防団が新たな取り組みを行っていることを市民にも周知し、団員の入団促進につなげるとしている。

発足式の様子(2023年2月15日)
飛行するドローン

 部隊の体制は、部隊長、副部隊長、および2班10名体制(1班5名)。1班に4名のドローン操縦士を配置する。操縦士は無人航空機技能認定講習を受け、飛行に関する知識や技能を習得する。市内2カ所(奈良市消防局総務課・奈良市東消防署)に各1基のドローンを配置する(GPS受信機能、障害物回避機能、映像撮影機能を備える)。出動範囲は奈良市内全域とし、他都市よりの要請があれば状況により出動する。

 春日原生林等での加点確認が困難な立ち木火災や広範囲におよぶ雑草火災、土砂災害における崩落個所の確認、河川氾濫などの被害状況確認など、上空からの確認により効果的に災害情報が取得できる事案を想定している。

 従来は災害状況を団員が現地で目視により確認していたが、二次災害の防止を念頭に置き、ドローンを活用して上空より状況を確認。必要な情報を団員が本部へ報告し、必要資機材の準備や出動体制などの参考とする。災害時のドローン飛行は航空法により特例が認められており、許可無しで飛行が可能(後日報告)。

 通常時は定期訓練を実施し、安全飛行を最優先として技術向上に努める。今後は自主防災防犯訓練等にも参加し、消防団と地域が一体となり地域防災力の向上を目指す。また、防災訓練等に参加することで、市民に対し新たな取り組みを行っていることを理解してもらい、入団促進につなげるとしている。