2023年1月11日、屋内空間専用の産業用小型ドローン「IBIS(アイビス)」を開発するLiberawareは、物流・メンテナンスサービスを提供する山九にIBISを導入したことを発表した。山九は顧客向けに、崩落やガス発生など危険・不良箇所のIBISによる点検を開始し、費用を削減しながら安全性の高い点検と故障した設備の早期復旧を実現した。

 エンジニアリングをはじめロジスティクス、オペレーションサポートなどを行うプラント保守大手の山九は、プラントエンジニアリングにおいて鉄鋼や石油化学、環境、電力といった幅広い産業分野に関わっており、その中で新規プラントの建設や改造のための設計から工事にいたるまで、顧客に応じてさまざまなサービスを提供している。同社ではこうしたサービスのひとつとして、設備の不良箇所を点検する目視点検にIBISを導入した。

 プラント設備で不良箇所を確認する点検作業は人による目視点検が中心であるため、足場を設置したり、高所作業車を使用する必要があり、時間やコストがかかっていた。さらにこうした設備の不良箇所は、高所や人が入りづらい狭くて暗い場所にあることが多く、作業は困難で危険を伴う。また、有害なガスが充満する空間を点検する場合もあり、その際はガスを取り除いた後に作業者がマンホールから進入して点検を行うが、ガスの排出が不十分で作業者が酸欠になるリスクも想定される。

 山九はこうした場所に対して人の代わりに点検を行う手段としてIBISを導入し、ドローンによる点検を開始した。IBISは一般的なドローンでは困難な屋内・狭小空間も飛行でき、機体が軽いため点検対象に接触しても壊れにくいという。またLiberawareは、パイロット育成のために講習会やスペシャリスト試験といったサポートも提供している。

 山九は2020年よりIBISを導入し、これまでに鉄鋼メーカー、石油化学メーカーの生産設備などの点検を行ってきた。ガス洗浄設備や排ガスダクトといった設備を撮影し、さらにその写真からオルソモザイクを生成し、点検作業の精度向上につなげている。また、これまでの人による目視点検では実施できていなかった箇所の点検が新たに可能になったという。今後、天井が崩落するリスクがある地下ピットや、酸欠・ガス中毒といった危険性が極めて高い場所でのドローン点検の実施を検討している。

 同社はLiberawareの分析解析サービスを利用し、IBISが撮影した画像のオルソ化、点群化、三次元モデル化といったデータを顧客へ提供している。今後はこれらのデータを山九の設計や工事部門でも活用し、設備の時系列管理や、設備の設計業務の付加価値向上につなげることを目指すとしている。

産業用小型ドローン「IBIS」

サイズ191×179×54mm(プロペラガード込み)
重量185g(バッテリ込み)
装備類・超高感度カメラ
・LED照明
・防塵用モーター
・独自設計のプロペラ 他