2022年9月8日、Liberawareは、北越コーポレーションの新潟工場に小型軽量ドローン「IBIS」を使用した点検サービスを導入し、これまで人では点検することが困難だった排ガスダクトや配管内部といった狭小空間の点検を実施したことを発表した。

 IBISは寸法約20cm、重量185gの産業用小型ドローンで、高度な姿勢制御機能を搭載し、狭小で複雑な設備内部での安定飛行や高精度の撮影が可能。取得した動画データから点群などの三次元データ等を生成することができる。

排ガスダクトに設けられたマンホールからドローンを進入、ダクト内部を撮影する様子

 さまざまな紙製品を生産する北越コーポレーションは、同社の新潟工場で木材チップからパルプ、紙製品まで一貫した生産を行っている。この工場の電気や蒸気のエネルギーの約7割は、木材チップからパルプを製造する過程で発生する黒液を回収ボイラーで燃やすことで得られる。同社ではこの回収ボイラーの排ガスダクトの点検にIBISを導入した。

 ボイラー本体と電気集塵機を結ぶ排ガスダクトはボイラー建屋に沿って斜めに走り、その高さは60mになる。従来はダクト周りに足場をかけて点検しており、費用面で課題があった。また、日本海側に面した新潟の冬は悪天候の日が多く、点検作業をするうえで制約が生じたり、作業ができないことも多くあるという。さらに、排ガスダクトは保温材と板金に包まれているため、足場を組んで点検をしたとしても、あくまでも保温板金の上からしかその状態を確認することができない。
 そこで同社は、排ガスダクトの中を飛行することができるIBISを試験的に導入した。

 IBISによる点検は、2022年1月と4月に実施した。1月に行った1回目の点検では回収ボイラーと電気集塵機を結ぶダクトを、4月に実施した2回目の点検では黒液濃縮エバポレーターにつながるダクトをそれぞれ点検した。

 点検作業はダクト壁面に設けられたマンホールからIBISを進入させて、自由飛行で実施。形状が複雑な構造になっているダクト内を、20~30mほど上昇させながら内側壁面を全周に渡って撮影した。これにより外側から雨水が進入した跡などを発見し、これまで見たことのなかったダクト上部まで全体の腐食状況を確認できた。

 これまで外側から足場をかけて行っていた点検作業では、手続きに1カ月、足場の設置作業に1カ月と約2カ月を要していたが、今回のIBISによる点検作業は2日間で完了した。

 今回の8号ボイラーの点検結果を踏まえ、2022年10月~11月にかけて定期修繕作業を行う7号ボイラーでも、ボイラー出口から電気集塵機までの排ガスダクトの点検を実施する予定だという。さらに今後、高さ140mの回収ボイラー煙突内部への活用も検討するとしている。

産業用小型ドローン「IBIS」

産業用小型ドローン「IBIS」概要
サイズ:191×179×54mm(プロペラガード込み)
重量:185g(バッテリ込み)
装備類:超高感度カメラ、LED照明、防塵用モーター、独自設計のプロペラ他
提供開始:2020年10月
活用シーン:煙突の中や配管内、ボイラー内部、屋根裏といった人が進入することのできない、もしくは進入すると危険な場所の点検や計測。