2022年12月22日、INPEX、INPEXパイプライン(以下、INPEX PL)、三菱重工業(以下、三菱重工)および三菱重工マシナリーテクノロジー(以下、MHIMT)の4社は、INPEXが所有し、同100%子会社であるINPEX PLが維持管理する新潟県柏崎市のガスパイプライン沿線付近において、三菱重工の自律無人機ネットワーク型監視システム「CoasTitan」を適用したドローン飛行の実証試験を実施したことを発表した。

 同実証試験では、LTE通信を活用したドローンの長距離自律飛行時における安全性の確認と、リアルタイムでのAIによる道路状況の確認および画像伝送に成功し、自律無人機によるパイプラインパトロールの可能性を確認した。

 INPEXは、国内天然ガス事業において計1,500km以上の輸送パイプラインを有しており、これらの多くが公道下に埋設されている。INPEXやINPEX PLに未連絡で道路開削工事(未照会工事)が実施された場合、パイプラインの損傷やガス漏洩による事故につながることが懸念されている。このため、INPEX PLが全線にわたって車両巡回を実施し、未照会工事の事前または早期検知に努めているが、ドローンの利活用により、巡回頻度の増加とこれに基づく保安・安定供給の強化、パトロール員の長時間運転による交通事故リスク低減といった効用が期待される。

 三菱重工とINPEXは、2016年に「エネルギー分野における技術課題を共同検討する覚書」を締結しており、2020年度から共同でドローンの飛行実証試験も含めた自律無人機によるパイプラインパトロールの自動化を検討してきた。具体的には、三菱重工の防衛・宇宙セグメントが開発した自律無人機ネットワーク型監視システムCoasTitanと、MHIMTが新たに開発するAIでの道路状況自動判別システムを適用することで、これまでの車両巡回による目視確認の代替システムとすることを目指している。

 国土交通省によるドローンのカテゴリーIII(※1)飛行要件を定めた改正航空法施行を見据えて実施した今回の実証試験では、カテゴリーII(※2)条件のもと、代替システムの必要要件である安全な長距離自律飛行、ドローン搭載カメラによる道路状況のリアルタイムでの確認、ドローンオンボードAIによる物体自動判別の可能性について確認した。
 なお今回の実証試験は、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との共同研究の一部として実施したものとなる。

 今後はさらなる長距離自律飛行の実施、AIモデルの物体判別精度向上、安全飛行のための施策の検討などを行い、自律無人機によるパイプラインパトロール自動化の早期実装を目指すとともに、災害時におけるパイプライン周辺や近隣自治体の要望に応じた状況確認への活用なども視野に入れ検討を継続していくとしている。

※1 カテゴリーIII:航空法において、国土交通大臣の許可や承認が必要となる空域および方法での飛行である特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行(=第三者の上空で特定飛行を行う)。
※2 カテゴリーII:特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じた上で行う飛行(=第三者の上空を飛行しない)。

実証試験 概要

実証試験場所
新潟県柏崎市のINPEXガスパイプライン沿線付近

飛行概要
LTE通信を活用し、長距離の飛行制御ステータスおよび撮影画像や工事状況の判別結果を伝送。飛行ケースによっては、経路付近に道路開削工事の模擬現場も設置し、リアルタイムでの画像確認やドローンオンボードAI(道路工事特徴物を学習させ、ドローンに搭載したエッジコンピューターに装備されたAI)による物体の自動判別を実施。

ドローン
国産シングルローター型UAV。ガソリンエンジンを採用し最大100kmの飛行が可能。

工事状況の判別
バックホーや三角コーンといった道路工事特徴物をドローンオンボードAIにより自動判定、LTE通信にて地上システムに伝送。