2022年11月29日、衛星データ(Satellite)と機械学習(AI)、区画技術(GRID)を掛け合わせ、農業や環境における課題解決を目指す岐阜大学発ベンチャー企業のサグリは、経済産業省の令和4年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業における「衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業」で衛星データの無料利用事業者に採択されたこと、および十勝農業協同組合連合会(以下、十勝農協連)にAI画像認識技術を用いた農地の区画情報(ポリゴン)を提供することを発表した。

 サグリは以前より、「Local Innovation Challenge HOKKAIDO 2020」に採択され北海道新篠津村と衛星データによる土壌分析プロジェクトを行ってきたほか、2021年度よりJA新しのつ、2022年度よりホクレンと実証実験を行い、北海道の農業のDX化に取り組んできた。

 今回同社は、宇宙システム開発利用推進機構による、地方公共団体または民間企業等が行うさまざまな産業・地域の課題解決に向けた衛星データ利用ソリューションの開発にかかる経費の一部を補助する補助金の公募に採択されたことを受け、衛星データ無料利用事業を通じ、北海道の農業へのさらなる貢献を目指すとしている。

 近年、小型衛星の打ち上げ機会の拡大等により、衛星データの質や量が抜本的に向上しつつあり、さまざまな分野において衛星データによる社会課題解決が期待されている。経済産業省の「衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業」では、北海道をはじめとする選定地域において商用衛星データを追加的に調達し、衛星データ以外の地理空間データも充実させた上で、ソリューション開発実証を集中的に行う。

 今回の公募では、地域課題解決の事業化検討に必要な衛星データを、衛星データプラットフォーム「Tellus」上で無料利用することができる事業者を募集した。

 実証地域において搭載を準備している衛星データの種類は、光学衛星のアクセルスペース「GRUS」、Maxar「WorldView/GeoEye」シリーズ、Airbus「Pleiades」シリーズ、 CNES「SPOT」シリーズ。SAR衛星は、JAXA「ALOS-2」、Synspective「StriX」シリーズ、QPS研究所「イザナギ」「イザナミ」、JEOSS「ASNARO-2」となる。

北海道の実証地域(赤枠)

 サグリの農地自動区画化技術「AIポリゴン」は、高解像度衛星画像を用いてAIの画像認識技術による自動区画化を行い、農地をポリゴン化する。農地の区画情報(ポリゴン)は、ドローンや衛星画像などのAI解析において、大量の筆単位の農地を解析する上で必要な基礎情報となるものであり、現在、国内では地域JAへの提供を行っている。また、タイでは農業・協同組合省の土地開発局やインドのHP州政府への提供を開始しており、国連開発計画(UNDP)のカタログ掲載も決まったという。国内では特許権利化を完了し、グローバルでは12カ国において特許出願を終えている。

 今後、実証の対象となる十勝農協連をはじめとした実証地域において、AIによって自動生成した農地区画を目視により確認し、漏れがある箇所の農地区画の作成および修正するウェブアプリケーションの開発を目指す。AIによる自動生成に加え、目視を経た判定精度の高い農地区画の提供を行うことで、農業の課題解決に向けた事業としての実現可能性を検討する。
 また、衛星データを活用した事業開発を積極的に進めるとしており、すでに実証実験を開始している新篠津やホクレン、今回採択された十勝農協連の他、課題を抱える地域において概念実証や事業化に取り組む。