2022年6月20日、ドローン・ジャパンはイームズロボティクスと、国内ドローン関連の製品・サービスの社会実装を加速するため、各ドローン関連企業の技術連携が可能なプラットフォームを形成することを目的に「ドローンオープンプラットフォームプロジェクト」を開始することを発表した。経済産業省や国土交通省が策定しているガイドラインや標準化、グローバルな視点も取り込みながら進めるとしている。
ドローン産業の社会実装が本格化してきている。同産業の健全な発展には、ドローン本体の基本機能だけでなく、機体の拡張機能、ペイロードなどの周辺機器や通信、アプリケーションも各業務分野の特性に合わせて適切に構成する必要がある。また、上空LTEのサービス化が進む中で、安全性やセキュリティの向上も欠かせない。
日本のドローン機体メーカーはベンチャー企業が多く、すべてを含む垂直統合型の企業に成長するにはコストと時間がかかる。米国ではこうした課題解決のため、オープン系の機体プラットフォームの採用を行っている。日本においても、社会実装を加速するために各ドローン関連企業が連携可能な形でのプラットフォームの形成が急務となっている。
ドローンオープンプラットフォームプロジェクト
ドローンオープンプラットフォームプロジェクトでは、ドローン・ジャパンとイームズロボティクス、同プロジェクトの参加パートナーが構成員(プロジェクトメンバー)となる。各ドローン関連企業の技術連携が可能なプラットフォームを形成するため、ドローンを以下のように各技術ブロックに分解する。
各技術ブロックの内容
【ドローン本体】
・Flight Controller
基本機体制御、高可用性、二重化など、安定性や安全性を高める技術を提供。
・センサー (IMU、コンパス、GPS/GNSS、気圧計など)
自己診断など、安全性や安定性を高める技術を提供。
・バッテリー
二重化、自己診断など、安全性を高め扱いやすい技術を提供。
・モーター
熱や回転むらなどの異常検知といった安全性を高める技術を提供。
・Flight Code
基本機体制御の中で、セキュリティ(セキュアフライトモード)、フェイルセーフなど、他の技術ブロックと連携し、安全性や安定性を高める技術を提供。
・Companion Computer
業務に合わせた飛行が可能な高度な機体制御、ドローンに搭載するペイロードの機体と連動した制御、通信の優先順位などを制御する通信制御、ユーザーがより使いやすい機体管理が可能な技術の提供。
・ペイロード
搬送物、散布機、カメラ、ロボットアーム、パラシュートなどのペイロードを遠隔で操作、機体と連動する技術を提供。
【ドローン外部】
・通信
通常の無線、LTE、5Gなどの通信に対応し、通信の安定性や安全性を高めるため、二重化やフェイルセーフ、セキュリティなどの技術を提供。
・アプリ
使用環境に応じて使いやすいアプリケーションを提供するとともに、安定性・安全性を考慮し、リスク回避やセキュリティを強化したアプリケーションの提供。
・プロポ
二重化、セキュリティなど、安定性や安全性を高める技術を提供。
・クラウド
実運用に向けて機体やパイロットの管理、搭載しているフライトコード管理などを容易に行うことができるソリューションや、安定性や安全性を向上させるためのログ自動解析ソリューションを提供する。
活動内容
1 :ブロック間の接続やデータ交換のルールの策定。
2 :各機能におけるドローンソリューションの整理。
3 :各業務分野におけるドローン技術の整理。
4 :プロジェクト推進のための人材育成。
5 :共通したサポート体制の構築。
さらに、各参加パートナーの技術やソリューションが揃ってきた段階で、各参画企業の技術やソリューションの紹介やソリューション別・業務別の事例の紹介、ユーザー顧客とのエンゲージメントを行うとしている。
参加メリット
同プロジェクトに参加することで、各技術ブロックサービス提供企業は、自社開発した技術をさまざまな機体メーカー、ドローンサービス提供企業、ドローン活用企業に展開可能。将来的には日本だけでなく諸外国を視野に入れる。今後同様のプラットフォームをマルチコプターだけでなく固定翼やVTOL、陸上走行車、ボート、潜水艇にも提供できるとしている。
機体メーカーは開発コストを抑えて、新たな機体制御、ペイロード、アプリケーション、クラウドサービスを自社の強みと組み合わせて採用が可能。共通の技術人材におけるサポート網の確立といったメリットを得られる。
また、機体メーカーや各サービス提供企業の技術を活用するユーザーは、自社の活用領域に合わせて技術選定でき、独自開発が不要となる。1社だけへの技術依存が減ることでリスクを低減し、共通する知識を持つ技術人材の育成によりサポートコストが削減される。
なおプロジェクトへの参加にあたっては、MAVLinkでのコミュニケーションプロトコルを採用していること、ドローンオープンプラットフォームプロジェクトが策定する各技術ブロック間接続やデータ交換のルールに基づき機体提供を計画することが求められる。
両社の役割
ドローン・ジャパンはこのドローンオープンプラットフォームプロジェクトの活動において、各技術ブロックのとりまとめやプロジェクトメンバーへのコンサルティング、ユーザー企業へのプロジェクトメンバーが持つ技術紹介・提案とアレンジメントを担う。
イームズロボティクスは、オープンプラットフォームで長年培ってきた機体全般(UAV、UGV、USV他)の提供、ペイロード搭載と連携支援、制御アルゴリズム開発・AIモジュールの提供、リモートID送受信機・内蔵モジュール、3キャリア対応LTEモジュールの提供を行う。
今後について
両社は2022年度中に技術提供企業20社、機体メーカー10社、ドローンサービス企業5社、ユーザー企業10社の参加、ユーザー事例3〜5件(実証実験ベース)を目指すとしている。
また同プロジェクトは、世界で1,000社以上が参加するオープンソースコンソーシアムとの連携を予定している。各国の機体メーカー、センサーおよびデバイスメーカー、ソフトウェアハウスがそれぞれのシステムを提供する中、日本プロジェクトはハードウェアやソフトウェアにおいて共通のルールやドキュメントを揃えることで、グローバル展開への後押しとしたい考えだ。
さらに、内閣府が進める準天頂衛星みちびきの受信範囲での事業展開推進についても検討している。
プロジェクト開始時のプロジェクトメンバー
技術ブロックサービスパートナー
日本航空電子工業 | ・国産の高信頼性フライトコントローラ等の開発・提供(Fright Controller) |
古河電池 | ・インテリジェントな通信等による電池の安全な活用技術(バッテリー) |
アスター | ・ドローン用国産防塵防水モーター(モーター) ・ドローン用国産ESC(モーター) |
Ardu X Japan | ・フライトコードのカスタマイズ化(フライトコード) ・基本のモバイルアプリケーションの開発・提供(アプリ) |
NECソリューションイノベータ | ・コンパニオンコンピューターによる機体監視・制御(Companion Computer) ・通信方式の多重化(通信) |
パナソニックシステムデザイン | ・高度な機体制御(Companion Computer) ・LTE通信制御(Companion Computer) ・遠隔監視・制御(クラウド) ・機体・ペイロード管理(クラウド) ・機体認証とデータ保護によるドローンセキュリティコンサル |
パーソルプロフェッショナルアウトソーシング | ・ログの暗号化(Companion Computer) ・ログの自動解析(クラウド) ・クラウドサービスのセキュリティ対策・検査 |
日本工機 | ・ドローン用パラシュート装置の開発・製造(ペイロード) ・非火薬ガス発生剤および火薬利用のデバイス開発・製造(ペイロード) |
ザクティ | ・ソリューション開発・販売、事業支援サービス、デジタルカメラおよびデジタルイメージングデバイスの開発・製造・販売(ペイロード) |
TKKワークス | ・ドローン向け無線機の開発・製造・販売(通信・プロポ) ・カスタム機体の設計受託および試作機の製作 |
機体メーカー
石川エナジーリサーチ | ・機体プラットフォームの開発・販売 |
エアロジーラボ | ・UAVの機体開発(関連パーツやデバイスの統合を含む) |
ACSL | ・MAVLink対応のドローン開発・提供 |
空解 | ・長距離型VTOL固定翼ドローンの研究開発・製造販売・オペレーション(自社設計、日本製) |
セブントゥーファイブ | ・MAVLink対応機体の取り扱い ・ドローン開発・システム開発、ドローンを用いた点検サービス |
ジェットシステム | ・ヘルプデスクやオンサイトなど機体トラブルの一次診断や営業補助等 |
プロドローン | ・バッテリーマルチ/エンジンシングル機体開発生産 ・量産機種KDDIスマートドローン搭載 ・自社GCS開発販売 ・ワンオフドローン制作 |
アドバイズパートナー
DRONE FUND | ・企業連携に関してのアドバイス |
セキュアドローン協議会 | ・ドローンのセキュリティに関してのアドバイス |