2022年6月14日、イクシスは大成建設と共同で、BIM登録情報とロボットを連携させた施設内設備点検の実証を行い、その実現性を確認したことを発表した。

 インフラ施設の老朽化や点検技術者不足を背景に、施設内設備点検の省力化が求められている中、ロボットによる施設点検の期待が高まっている。一方、実現に向けては課題がある。
 地上走行ロボットの自律走行のために一般的なSLAM技術(ロボットの自己位置推定とロボット周囲の環境地図作成を同時に行う技術)を用いる場合、自律走行前にロボットを手動走行させて走行環境マップを作成する必要がある。特に、同一環境で複数ロボットが共存する場合など、ロボット機種ごとにそれぞれマップ作成をする手間と時間が必要になる。また、ロボットによる施設点検を行う際、点検を行うべき設備(管、扉、照明等)の図面からの抽出や、点検タスクのロボットへの指示の方法等に手間がかかってしまう。

 今回の共同実証では、イクシスが開発したBIM/CIM(※1)とロボットの双方向連携プラットフォーム「i-Con Walker」の技術を活用し、大成建設の実運用中のオフィス環境でロボット実機を稼働させて、次の2点を実証した。

1. BIM情報を活用したロボットの自律走行
 ロボットの自律走行のため、ロボットによる事前マップ作成を行わず、竣工時図面から作成したBIM情報を活用できること。

2. BIM情報を活用した施設内点検
 施設内点検のため、BIM内の部材情報を活用して、ロボットの自動巡回による施設内点検ができること。

 両社は今回の実証を通して、BIM登録情報とロボットを連携させた施設内点検の実現性を確認することができた。

※BIM/CIM:Building Information Modeling/ Construction Information Modeling(Management)。計画、調査、設計段階から3 次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階において3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組み。

BIM登録情報をもとにして自動生成された施設内設備点検経路
ロボットが点検対象のドアに正対して写真撮影する様子(左)、実際に撮影された写真(右)
点検後にBIMソフトウェア上で撮影写真を確認する様子

 今後、大成建設はIoTセンサーやロボット等で集約したさまざまな建物内情報をBIM上で統合管理し、それらデジタルデータを建物利用者や管理者が有効活用するためのシステムを開発する。イクシスは今後も、BIMとロボットの双方向連携技術であるi-Con Walkerの機能を拡充するとしている。双方の取り組みを活用しつつ、イクシスは大成建設と共同で、設備点検ロボットとBIMを連携させた新たなデジタルツイン(サイバー空間に現実空間をコピーし、シミュレーション予測等ができる技術)の実現について検討していく。