2022年4月22日、八重洲二丁目北地区市街地再開発組合の参加組合員として「東京ミッドタウン八重洲」の開発を進める三井不動産は、同施設において最先端技術を活かしたDX推進の一環として導入する各種ロボット・サービスの詳細を決定したことを発表した。

 デリバリーロボットによるフードデリバリーサービスの提供、自律走行する清掃ロボットによる清掃業務の完全省人化、そして運搬ロボットを活用して重量のある荷物を簡単に運搬できるようにすることで、多様な人材の就業を可能にするとしている。
 また、サービス導入にあたり、Uber Eats Japanを含むパートナー企業と「日本橋室町三井タワー」の三井不動産自社オフィス内にて実証実験を実施した。

「東京ミッドタウン八重洲」ロボット稼働イメージパース(提供:竹中工務店)

ロボットサービスの概要

・デリバリーロボット

 これまではセキュリティの観点から、フードデリバリーサービスの配達員はオフィスロビー等で受け渡しを行っていた。そのため、高層階で働くオフィスワーカーはロビーまで降りて品物を受け取る必要があった。

 東京ミッドタウン八重洲では、ロボットがオフィスロビーで配達員から品物を受け取り、オフィスワーカーに直接デリバリーするサービスを導入する。これにより利便性が向上するとともに、配達員との接触がなくなることで新型コロナウイルス感染症対策にも寄与する。また、東京ミッドタウン八重洲館内にある飲食店のテイクアウト品のデリバリーにも対応する。

デリバリーロボットサービスイメージ

・清掃ロボット

 同社の既存オフィスビルでは、労働力不足へ対応するため清掃ロボットなどの活用を進めてきたが、オフィスビル内でのロボット移動においては人がエレベーターに同乗する必要があり、これまで完全な省人化を実現できていなかった。
 東京ミッドタウン八重洲では、建物の実施設計者である竹中工務店とロボットフレンドリーな建物の構築を行い、ロボットがエレベーターを自分で呼び乗降する階を指定することができる。これにより完全な省人化が実現可能となった。

・運搬ロボット

 運搬ロボットの活用により、集荷業務等において重量のある荷物を誰でも移動させることができ、より多様な人材の就業が可能となる。これにより、日本政府が提唱する「Society 5.0」の“ロボットなどの技術で人の可能性が広がる社会の実現”を推進する。

 これらのロボットを導入するにあたり、「日本橋室町三井タワー」で実証実験を実施した。

ビル内でのロボット稼働イメージ(提供:竹中工務店)

「リアルエステート・アズ・ア・サービス」の取り組み

 東京ミッドタウン八重洲では、街を施設として捉えるのではなく、働く、遊ぶ、暮らすといった人の行動を提供するサービスで捉える街づくり「リアルエステート・アズ・ア・サービス」を、最先端技術を用いて実現する取り組みを行っている。
 例えば、完全タッチレスオフィスとして、顔認証によるオフィス入退館システムの導入や専有部入口の自動ドア化などにより、ハンズフリーで入室が可能となる。

 さらにオフィスビル内でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために、ロボットの活用を検討。オフィスビルにおけるロボット導入の大きな障壁であったロボットの垂直移動と水平移動を実現するため、自動ドアの積極的な活用に加えてエレベーターやセキュリティドアとの通信や連携を可能した。これによりロボットの完全自律走行が実現し、ロボット活用の本格導入を開始する。

 また、今後積極的に5Gを活用したさまざまな取り組みも導入するとしている。

導入するロボット・ロボット関連アプリ

・デリバリーロボット:アスラテック「RICE」

 自律走行型の屋内配送ロボット「RICE」は、ホテルやオフィスビル、ショッピングモールなど、屋内のさまざまな施設で活用することができる。物品の配送だけでなく、先導や案内といった用途にも利用が可能。
 人と協調して働くことを前提に設計されており、人との衝突を回避したり障害物を避けたりする機能などを備えている。エレベーターと連携することで、異なるフロアへの荷物配送も可能。心理的に抵抗感がなく、親しみやすく使いやすいデザインが採用されており、UI/UXも同様の考えで設計されている。

アスラテック「RICE」

・清掃ロボット:パナソニック「RULO Pro」

 清掃ロボット「RULO Pro」は、オフィスビル共用部を中心に床面清掃の自動化を実現する。4種のセンサーにより壁際まで接近して床面全体を効率的に清掃し、紙パックでのごみ捨て方式の採用等により作業軽減を実現する。長距離レーザーセンサーを搭載しており、エントランスホールや会議場といった大空間にも対応する。

パナソニック「RULO Pro」

・運搬ロボット:Doog「サウザー」

 サウザーシリーズは、運用が簡単でカスタマイズ性が高く、製造現場、物流倉庫のほか、鉄道・航空整備場、施設内バックヤード、工事現場や建築現場、農業など、さまざまなフィールドに導入されている。
 東京ミッドタウン八重洲では、大容量で小回りが利く新製品「サウザーライト」に専用の荷台を搭載したものを導入する。

Doog「サウザー」

・ロボット関連アプリ:TIS「RoboticBase」

 サービスロボットをインテグレーションするための統合管理機能を提供するソフトウェア。同プラットフォーム上では、さまざまな企業が開発・提供する警備や案内などの業務に特化した各種サービスロボットを束ね、統合的に業務活用することができる。
 運搬、清掃、案内、警備など、種類の違うサービスロボットやセンサー、カメラ、サイネージなどのIoTデバイスを統合管理する基本機能を備え、エレベーターやセキュリティドア等との設備連携や、企業システム、外部データとの連携などを実現する。