広島県神石高原町とパーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、2021年度に自治体と町民によるドローンを活用した災害対応の実現に向けた取り組みを実施。その結果、迅速な初動対応や応急処置につなげるドローンを活用した災害状況の把握、その情報を関係者に共有する一連の流れ(以下、災害対応フロー)を構築した。また、ドローン活用人材(以下、担い手)の育成を行い、災害対応フローに対応できる人材として新たに町民8名が認定された。

ドローンを活用した災害対応の様子

 神石高原町では、自治体と町民によるドローンを活用した町の課題解決を目指し、さまざまな取り組みを行っている。今回の取り組みは、内閣府の「地方創生推進交付金」と、広島県が行う「デジタル技術を活用した中山間地域の生活環境向上事業」から採択を受け、3カ年計画のうちの初年度に当たる。

 神石高原町では、災害時に町民によるドローンを活用した災害現場の撮影を行うことで、その撮影データから1枚のオルソ画像を作成し、遠隔地にいる自治体に画像データとして共有を行う流れの構築を構想している。オルソ画像を活用することで、文字情報だけでなく視覚的に災害情報を把握できるようになり、迅速な災害対応や応急処置の実現に向けて同事業を推進している。

 今回、2021年7月から2022年3月にかけてパーソルP&Tが中心となり、災害対応フローの構築のほか、町民自身が安全を確保してドローンを飛行させるノウハウや、災害時のドローン運航に関する講習を行った。

 神石高原町では、中山間地域特有の地勢的条件に起因する防災課題を解決するため、ドローンを用いた町民による災害対応能力を高める方策を推進していくとしている。

2021年度の取り組み

 担い手が災害時に自治体から要請を受けて、ドローンを活用した災害対応が実施できる体制を構築するため、①災害対応フローの作成と実習、②ドローンを活用した災害対応に関する講習 を実施した。今回は図1で示した災害対応フローから、青枠にある担い手の対応項目に焦点を当てている。

図1:災害対応フローの全体図

①災害対応フロー

 災害発生から、ドローンによる災害現場の撮影、オルソ画像の作成、共有データの確認まで一連の流れを落とし込み、災害時に担い手が対応できる災害対応フローを作成した。
 2022年2月、3月には実際にドローンを飛行させて、自動航行機能を使った飛行訓練や災害対応フローの定着を促すための実習を行った。担い手が監督者、パイロット、補助者どの役割もこなせるように、役割を変えて繰り返し訓練を行い災害対応フローの定着を目指した。

災害対応フロー

②ドローンを活用した災害対応に関する講習

 災害時の情報収集活動にドローンを活用するため、災害時の基礎知識・運用方法、システムの操作習得を目的に講習を実施した。災害対応の心構えをはじめ、神石高原町では周囲が山に囲まれていることから風や地形図に関する講習、チーム内での安全確保やシステムの操作訓練を行った。
 また、ドローン実機を使用した仕様書のマニュアルに関する読み合わせを行い、低温でのバッテリー使用限界や各種センサーの範囲等を学んだ。

 参加した担い手へ実施したアンケートでは、今回の成果として理解度に関して4.25点(5点満点中)の結果となり、自動飛行がままならなかった状態から、担い手がそれぞれの役割(監督者、パイロット、補助者)を理解し、役場から要請が入ってから災害対応フローを自立して完遂できるレベルに到達することができた。
 一方、操縦アプリやオルソ画像作成を行うソフトウェアの操作習得には時間がかかるといった意見があり、担い手が実施している自主飛行訓練にも今回の訓練内容を取り入れるなど、スキルの習熟に関して担い手の積極的な自主提案につながった。

講習の様子

​ 上記に加えて、2019年度から担い手が不在の地域において、新たに5名の町民に向けて法令順守および安全飛行に関する講習を実施した。ドローンにまつわる法律やリスクについて考え、ドローンの安全な運用方法を習得した。講習を受けた町民が災害時にドローンを活用していくことで、町内においてより広域の災害対応が行えるようになる。今回の講習はその導入準備の位置づけだという。

 神石高原町は、人口に対して面積が広いため、災害時の状況把握や物資の配送に課題を持っている。同町は、2019年10月にドローン技術を持つ企業や団体によるドローンコンソーシアムを組成。ドローンの活用により災害時の対応のほか、橋梁の点検や農地、固定資産の確認などの省人化が期待できる。
 パーソルP&Tはコンソーシアム立ち上げから参画し、ドローンの活用におけるノウハウやリソースの供給、プロセス設計の支援を行ってきた。2020年度にはコロナ禍の中、地域の担い手に対してドローンに関する知識向上のためオンラインで講習を行った。

 今後、町全体にドローンを実装させていく担い手を拡大する予定で、2022年度は新たに10名の育成を目標としている。また、災害分野において神石高原町だけでなく、隣接する地域にも対応できるようなフローを構築し、広域災害にも対応できるよう取り組むとしている。