広島県神石高原町では、ドローンの社会実装への取り組みとして、2019年より防災・減災をテーマとしたドローン事業を推進している。2019年、2020年は、ドローンの基本操作や安全運航に焦点を当ててきた。2021年度はより防災に特化させ、災害時にドローンを活用した災害状況把握を町民主体で実施できる仕組みづくりを行った。

 同町では、人が立ち入るには危険であったり災害状況が不明な地域において、安全に短時間で情報収集・把握することを実現するため、災害対応において積極的にドローンを取り入れてきた。2019年にはドローンコンソーシアムを立ち上げ、ドローンを活用した災害対応に必要な操作スキルや知識を学び、2年間で町民の約8名を操作が行える担い手として育成。2021年度は、町民主体で災害時対応が可能になることを目的として、以下3つの活動を実施した。

ドローンを活用した災害対応講習の実施

 2019年、2020年にドローンの担い手となった8名の町民向けに、協力会社であるパーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)による災害時の運航に特化した3つのドローンの災害対応知識の習得を目指した講習を実施した。

1. 安全運航(災害状況下における、機体による事故を防ぐ運航の方法の理解)
2. 空間情報(災害状況下における、ドローンによる災害場所撮影写真を作成するための飛行設定(高度、ルート)の考え方の理解)
3. 自然災害(災害状況下における、二次災害にならない離着陸地点(配置)の考え方の理解)

ドローンを活用した災害対応講習の様子(2021年12月開催)

ドローンを活用した災害対応フロー(災害現場をドローンで撮影し、自治体へ共有するまで)の構築

 発災後に担い手が町の要請を受け、自らの安全を確保しながら情報収集や画像処理、関係者へ共有する仕組みを構築した。2022年2月、3月には実際にドローンを飛行させ、災害時の自治体の要請から共有に至るまで一連のプロセスの演習を行った。

 参加者からは、災害時の役場との連携フロー・アプリの使い方について理解できたという声や、自動航行の分解能と速度の関係を理解する必要があるといった意見があったという。

担い手が災害対応に当たる様子(2022年3月)

ドローンの担い手を増やす活動

 同町では2019年から毎年担い手を増やしており、2021度は町内にあるドローンスクールを受講して基礎的なドローンの知識や操作方法を学んだ5名の担い手に対し、2022年2月にパーソルP&Tによる法令順守および安全運航に関する講習を行った。

講習の様子(2022年2月開催)

 同町は、災害時に瞬時に状況を把握できる体制を構築するために、ドローンを活用して町民主体による地域防災力の強化を進めるとともに、ドローンをほかの分野にも活用していく予定だという。

 さらに、2022年度にはドローンフィールドを開設し、ドローンの社会実装へのサポートを行っていくとしている。同町は今回の成果を、今後ほかの自治体や地域、産業にも広げていくことを目指す方針だ。