2022年1月18日、広島県神石高原町は、2022年度よりドローンフィールドを開設することを発表した。飛行訓練や新しい機能、機体、サービス開発のための実証場所となる。開設に先駆け、2021年度はドローン事業者へ先行的にフィールドを開放して実証実験を行った。

 同町は、2019年度よりドローンの社会実装や活用の推進を目指してドローンコンソーシアムを立ち上げ、町民を主体とするドローンを活用した災害対応の取り組みを進めている。今年度は、町内の広大で山間部の起伏に富んだ土地を利用したドローン事業者向けのドローンフィールドの開設に向けて準備を進めている。

 同フィールドを広く活用してもらうことで、新しいドローンソリューションを実証実験やコンセプトだけで終わらせるのではなく、社会への実装支援を行い、暮らしや生活に価値のあるドローンの活用を応援、推進することを目指すとしている。

神石高原町のドローンフィールドの一例

2021年度に実施した実証実験

1,000m高高度、水平飛行の電波通信性能検証 (センチュリー)

 町内のゴルフ場を利用して、センチュリーが開発した防災ドローンを活用し、1,000mの高高度飛行実験および、1,000mの水平飛行実験、5.7GHz帯で機体操縦・画像転送・データ転送の検証を実施した。

 同社は2021年3月に神石高原町主催で行われた「ドローン実証デモ」に参加しており、今回も同社が保有する防災ドローンの社会実装の一環として参画。今後の高高度飛行による広範囲の周辺状況把握や、災害時に道路状況の影響を受けない上空から遠方への救援物資輸送など、災害対応における手段として有効であることを確認した。

実証実験の様子

獣害対策用赤外線カメラの性能試験 (スカイシーカー)

 スカイシーカーは神石高原町役場と協働して、町内の獣害の発生が想定される場所を夜間に新機種の赤外線カメラで撮影し、従来の赤外線カメラと比較することで性能検証を行った。実証試験の結果、従来のカメラと比較してより鮮明に撮影でき、周辺の鳥獣による掘り起こしなどを確認することができた。

実証実験の様子

 近年ドローンの開発が国内外で進む中、法規制の観点より、都市部では飛ばせるフィールドは制限されている。同町は7割が森林地帯で、標高差のある地形など中山間地ならではの特色もあることから、都市部にはない地形を活かしたドローンの実証等が可能であり、寒冷地域の特性も有している。
 今後、点検・物流・災害対応・調査などの用途でドローン利活用が進むと想定され、社会実装に至るまでには、さまざまな実証が必要となる。こうした背景から、同町ではドローンの社会実装拡大に向けてドローンフィールド設立し、実験・検証場所を提供するとしている。