山口県美祢市とセイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、エアロネクスト、NEXT DELIVERYは、2022年3月3日~5日にかけて、同市の秋芳町嘉万・八代地区において、ドローン配送実証実験を実施した。

 セイノーHDとエアロネクストが開発したドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けて実施するもので、ドローン配送サービス事業を主体とするエアロネクストの子会社NEXT DELIVERYが実施する。

 同実証実験は、官民連携フォーラム「デジテック for YAMAGUCHI」の会員が技術やノウハウ等を持ち寄り、山口県内をフィールドとした実証実験等を行うことで新たなソリューションなど先導的事例の創出を目指す「デジテック・オープンイノベーション」に採択され実施したものである。

美祢市の半田弁天湧水を積み込み飛び立つドローン(半田弁天脇)

 美祢市では小規模な集落が広く点在し、商店や飲食店も少なく、人口の約44%を高齢者が占めており、日常の買い物など生活利便性の維持が求められている。また運送業界では、人手不足や採算性から特に過疎地域における配送維持が課題となりつつある。

 そこで物流を最適化するため、ラストワンマイルにドローン配送を組み込み、地上輸送とドローン配送を連結・融合する新スマート物流システムの導入により、買い物代行や災害時支援、医薬品配送等を行う仕組みをつくり、課題の解決に向けた実証実験に民間企業と行政が協働して取り組む。

「秋芳八代ぬくもりの里」を仮設のドローンデポ(荷物等を集約化する倉庫)、最寄りの集会所(栢木公会堂、八代ふれあいセンター、半田公会堂)を仮設のドローンスタンド(ドローンの離発着地点)としてドローン配送を実施し、地元住民に市内スーパーの食料品の詰め合わせセット、日用品、防災用品等を配送した。

 3月3日の実証では、秋芳八代ぬくもりの里のドローンデポから、片道約2.1km先の半田弁天へ向けてドローンを飛行させて約5分で到着。そのドローンに住民がペットボトルに採水した半田弁天湧水を積み込み、秋芳八代ぬくもりの里まで飛行して持ち帰った。その後、待機していたキッチンカーで、持ち帰った水で淹れたコーヒーと、地元のニジマスを使った「ますバーガー」のセットを2名分用意し、栢木公会堂まで(片道約1.2km)約3分でドローン配送した。

キッチンカーで淹れたコーヒーを受け取るSkyHubスタッフ(秋芳八代ぬくもりの里)
美祢市八代地区を飛行するドローン
品物を届けて飛び立つドローン(栢木公会堂前)
届けられたコーヒーとますバーガー

 今後は過疎地域の課題解決を目指す新スマート物流の構築に向け、住民に対するニーズ調査や最適な物流網を調査検討したうえで、将来的な構想として、各社荷物等を集約化するドローンデポとドローンの着陸地点となる複数のドローンスタンドを設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買物代行サービスについて段階的に開始する予定である。