2021年12月7日、エバーブルーテクノロジーズは、全長5mクラス帆船型ドローン「Type-Xプロトタイプ」を用いた、逗子湾を横断する貨物の運搬、搭乗者ありの遠隔・自動航行の製品化・市場導入に向けた自動航行デモンストレーションを実施したことを発表した。

 同社では海難救助や観光用途での利用の問い合わせが多く、搭乗者ありのニーズが高いことから、人を乗せたデモンストレーションを企業向けに行い、挙動や機能、活用方法などを確認した。

Type-Xの実証テスト風景

 デモンストレーションに使用したType-X プロトタイプは、100kg以上の積載能力(ペイロード)をもつ全長5mクラスの自動操船トリマランヨットである。Type-Xは、離島間の無人貨物運搬や非常時の救援物資輸送などさまざまな用途に対応できる実証機として開発したモデルとなっている。船長が必要な動力船では人件費や燃油代からコストが見合わない離島間の荷物運搬や、非常・災害時に陸路が使えず孤立した沿岸部の海岸へ直接着岸して支援物資を無人で送り届けることなどを想定している。

 同モデルは、2020年に開発した2mクラス帆船型ドローン(無人自動操船トリマランヨット)「Type-A」の拡大版として開発。Type-Aはこれまで自動航行などの海上テストを実施するなど、社会実装に向けた活動を続けてきた。

Type−Xの人物搬送

 デモンストレーションではType-Xを利用し、風力を使って洋上で長時間待機、漂流する遭難者を発見したり、指定した位置へ自動で航行し救助したりすることを想定した自動操船実験を、神奈川県逗子市の逗子海岸にて実施。製品化・商用化に向けたディスカッションを行った。
 安全の確保と積載する重量物の役割を兼ねて、船舶免許を持ちヨット操船の技術を有する監視要員が1名乗船。監視要員は乗船しているのみで、操縦は自動、または遠隔にて実施した。陸上から遠隔で設定した目的地に対し風力だけで自動航行、到達することを確認した。

実施エリア : 神奈川県逗子市 逗子海岸
風向 :北風(平均-10度)
風速 :最大7.54m/s(14.7ノット)平均2.21m/s(4.30ノット)
艇速 :最大 3.39m/s(6.59ノット)平均1.23m/s(2.39ノット)※自動操船時
航行距離 :N/A
稼働時間 :約85分 ※待機時間含む
積載量/搭乗者 :1名(約80kg)
※風向風速はType-X搭載の風向風速センサーから、艇速はGPS情報から取得

 無人帆走技術は人件費、燃油代がほぼかからないため小型な舟艇でもコストが安く、分散化することで、コストをあまり掛けられない水上移動手段や貨物運搬など、多種多様なニーズに対応が可能。また、港湾施設がない場所でも砂浜に着岸できる。そのため、土砂災害などで陸路が分断された沿岸部の市町村に対する支援物資の輸送への活用も期待される。

 また、飛行型ドローンに比べてペイロードが大型のため、飲料水や米穀、食料品などの重量物や、トイレットペーパー、おむつなど、かさばる日用品の運搬に向いている。 輸血用血液など急を要するものは飛行型ドローン、重量物や日用品は船舶型といった使い分けをすることで、災害時に効果的な対応が可能となる。