2021年4月27日、エバーブルーテクノロジーズは、2mクラス帆船型ドローン「Type-Aプロトタイプ」を用いた、逗子湾を横断する貨物輸送の実証テストに成功したことを発表した。
Type-Aプロトタイプは、2020年に開発した2mクラス無人操船ヨット(帆船型ドローン)の実証機として、これまで機動性テストや滞在型テスト、長時間稼働テストを行い調整してきた。実証テストでは、離島への貨物輸送や、土砂災害で孤立した沿岸部の市町村に救援物資を届けることを想定し、神奈川県葉山町小浜海岸から逗子市逗子海岸への1,000mを無人で自動帆走した。
エバーブルーテクノロジーズは、2021年1月より逗子市の協力を得て、逗子海岸の湾内にて船体の動作確認、予め設定したウェイポイント(経由地)に沿って移動させる自動航行などを実施。逗子市長をはじめ関係者による実際の運用を想定した意見を受けながら、社会実装に向けた活動を続けている。
実証テスト概要
実施エリア :神奈川県逗子市 逗子海岸
概要 :救援物資、医薬品に見立てたプリンと保冷剤をクーラーバッグに入れ、Type-Aプロトタイプのカーゴエリアに搭載。葉山町小浜海岸に機体を浮かべた後、遠隔で自動モードに切替。自動帆走技術により帆と舵を自動制御、予め設定された航路に沿って風力だけで逗子海岸のヨット利用エリア前に到達し、位置を保持した。
風向 :南西の風(平均-137度)
風速 :最大7.68m/s(14.9ノット)平均4.82m/s(9.36ノット)
艇速 :最大2.59m/s(5.03ノット)平均1.49m/s(2.89ノット)
航行距離 :約1,000m
所要時間 :約12分
搭載物 :プリン(約0.5kg)、ソナーユニット(約1kg)合計1.5kg
※風向風速はType-Aプロトタイプ搭載の風向風速センサーから、艇速はGPS情報から取得
物流業界は現在、グローバリゼーションにより増加し、コロナ禍の影響による人流減少の影響でも重要視されている。一方で少子高齢化により、特に地方部、離島では労働人口が減少。また、社会課題である地球温暖化防止の観点により、今後ゼロエミッションのモビリティにシフトしていく必要がある。
離島への物流は定期フェリーなどの動力船を利用しているが、利用者の減少や燃油代の高騰により収益性が悪化、労働者の確保が困難などの厳しい状況が予想される。それに対し、無人操船ヨット技術は、人件費と燃油代を大幅に削減、ほぼゼロにすることが可能で収益性を大幅に改善することが見込まれる。そのため小型な舟艇でもコストが安く、分散化することで多種多様なニーズに対応が可能となる。また、小型帆船は港湾施設がない場所でも砂浜に着岸できるため輸送の自由度が上がり、沿岸部の必要な場所へ直接届けることが可能である。
こうした特徴から、小型無人操船ヨットは災害時、土砂災害で陸路が分断された沿岸部の市町村への支援物資の輸送に活用できる。具体的には、近隣の市町村から支援物資を積載した小型無人操船ヨットを出帆、海上を風力で移動して物資を届ける。小型ヨットは港湾施設が損壊した場合でも砂浜があれば着岸可能だ。
また、飛行型ドローンに比べてペイロードが大型のため飲料水や米穀、食料品などの重量物や、トイレットペーパー、おむつなど場所をとる日用品の運搬に向いている。輸血用血液など急を要するものは飛行型ドローン、重量物や日用品は船舶型といった使い分けをすることで、災害時に効果的な対応が可能である。
Type-Aプロトタイプは、ヨットレース アメリカズカップのレース艇や商船設計を手掛けるACTの金井氏が、無人ヨットに最適なトリマランとして基本設計を行っている。そして、現役カーデザイナーなど様々なバックグラウンドをもつ専門家がリファインし、3Dプリンタを利用して造形しており、現在、本格的な導入に向けて量産型の設計を行っている。
エバーブルーテクノロジーズでは今回の実証実験の成功を受け、現在開発中の5mクラスヨットを利用し、100kgの貨物輸送実験を2021年夏頃に予定している。さらに、飛行型と船舶型ドローンのハイブリッドであるType-Pの研究開発もシンガポール国立大学と共に進めている。