2021年8月19日、エアロディベロップジャパン(以下ADJ)は、シリーズAラウンドの資金調達を実施し、ガスタービン動力と発電機を組み合わせたハイブリッド動力システムの量産機開発に着手したことを発表した。新たに、大手航空エンジンメーカーでジェット・ロケットエンジンを開発してきた太田豊彦氏がCTOに就任。2022年内にハイブリッド動力システムおよび同システム搭載ドローンの販売開始を目指す。ドローンサービスにおける協業パートナー候補の募集も開始する。

 これまでのドローンは総重量25kg以下の小型機がほとんどで、測量・空撮・検査といった用途が主である。そうしたなか、欧米を中心に、重量物・長距離輸送を可能にする大型ドローンの実用化、空飛ぶクルマ(以下UAM:Urban Air Mobility)に対する期待が高まっており、日本でも2022年の大型ドローン目視外・有人地帯上空飛行の実現に向けた法整備が進められている。

 一方で、大型ドローン実用化には動力源がボトルネックとなる。既存ドローンの多くに使われるリチウムイオンバッテリーは、単位重量当たりの発電量(kWh/kg)が大型ドローン用途には不十分なため、より単位重量当たりの発電量が大きい動力源開発が求められている。

 そこで同社は、ガスタービンと小型発電機を組み合わせたハイブリッド動力ユニットの開発に着手。ガスタービンを高速回転(1分間あたり9~10万回転)させ発電機を駆動することで、単位重量当たりの発電量を大きくすることができる。一般的なリチウムイオンバッテリーの単位重量当たりの発電量が0.2~0.25kWh/kg程度であるのに対し、ADJハイブリッド動力ユニットは約5倍の1kWh/kgを超えると計算されている(同社試算)。

 ADJは創業以来、ハイブリッド動力システムの試作機開発を進めおり、2021年6月にはオーストリア製10kWガスタービン3基と発電機を組み合わせたハイブリッド動力ユニット、およびAC200V高電圧対応プロペラ用モータ・ESCを合わせたハイブリッド動力システムを搭載した総重量約80kgドローンの浮上試験を実施。浮上性能を確認し、試作機開発に成功している。

 そして今回、開発した試作機のハイブリッド動力システムを国内量産化するため、ガスタービン開発において高速回転機体の設計技術を持つ太田氏をCTOに据え、試作機に比べて単位重量当たりの発電量・耐久性の高い量産用の実機開発に着手する。太田氏は、H-Ⅱロケットエンジン用ターボポンプ開発等、航空宇宙分野での実績を有する。

CTOに就任した太田豊彦氏

 同社は、2022年内にハイブリッド動力システムおよびハイブリッド動力ドローン量産機の市場投入を目指すとしている。

量産機の目標スペック
離着陸総重量150kg
ペイロード50kg
飛行時間1時間

 また、量産機の開発資金を、ドローン事業を展開、あるいは参入予定の事業会社を引受先とする第三者割当増資により調達した。引受先は五百部商事、三和綜合土木、長岡商事の3社で、大型ドローンを用いたドローンサービス(DaaS:Drone as a Service)事業の協業パートナーとなる。

 資金調達に合わせ、武蔵小金井に開発拠点を新設。拠点立上げとともに、UAM開発の知見を有する法政大学・御法川研究室(小金井キャンパス)が協力を開始する。

 近年、欧米を中心に電動航空機の開発競争が始まり、UAMの2023年実用化が見込まれることなどから、脱炭素・ゼロエミッションに対応する動力が求められている。電動化・脱炭素につながる可能性を持つハイブリッド動力システムは、ガスタービンの燃焼器部分の仕様変更によってバイオ燃料、液体水素にも対応可能だ。

 ADJは、大型ドローン向け動力システムの開発を進め、海外ドローン・UAMメーカー向けにハイブリッド動力システムを供給するとともに、国産UAMメーカー創出に向け優位なポジションを築く、としている。