2021年7月27日、エアロセンスは、LTE通信モジュール内蔵の垂直離着型固定翼(VTOL)ドローンの「エアロボウイング」を使用し、緊急支援物資を長距離配送する実証実験を実施したことを発表した。NTTドコモのLTEネットワークを活用して、往復20kmにおよぶ長距離地点間配送に成功した。

 一般的に、ドローンでは2.4GHz帯の無線通信により制御を行うが、電波の届く距離は短く、長距離の物流用途には向いていない。LTE通信モジュールを内蔵することで、配送拠点からの無線通信距離の制約なく、目視外での遠隔制御による長距離物流が可能になる。

 実証実験では災害時を想定して、配送拠点にいるオペレーターがエアロボウイングの遠隔操作を行った。配送拠点から約10km離れた目的地に医薬品を届け、配送拠点に機体を戻すことに成功した。

実証実験時の飛行計画

 エアロボウイングは、垂直離着型固定翼により安定した輸送が可能で、最大時速100km、最大航続距離50km、100haの広域も1回で飛行することができる。LTE通信モジュールを内蔵することで、機体制御に加えてカメラの撮影映像の配信も可能となることから、今後は緊急性の高い医薬品配送に加えて、災害状況の把握など迅速な災害復旧支援も検討するとしている。

LTE通信モジュール内蔵のエアロボウイング

実証実験について

 配送拠点である北海道北広島市の防災センターから目的地まで、片道10kmを往復する目視外飛行を実施した。エアロボウイングは千歳川の上空を自律飛行し、約10分で目的地に到着。飛行中の安全確認は機体のカメラから送られてくる映像と、補助者による監視を併用した。オペレーターは配送拠点から遠隔で操作し、復路も離陸から着陸まで遠隔で実施した。LTE通信による安定した目視外飛行と輸送の安全性の確認を行った。

 搭載物は、薄いガラス製のアンプル剤(注射剤を入れる密封容器)。輸送品質の確認として、振動による破損や温度変化を含めて検証した。

飛行経路