写真測量専用ドローン「エアロボ」やGNSS受信機内蔵の対空標識「エアロボマーカー」を販売するエアロセンスは、光学30倍ズーム・4Kカメラ搭載の有線給電式ドローン「エアロボオンエア」の使い勝手を向上する「エアロボリール」を出展した。

車両と連携してドローンの素早い準備を可能にしたエアロボリール

ベースステーションを介してケーブルにつなぐことで、電源供給と映像伝送を有線で行う。長時間開催のイベント撮影などを想定して開発された。

 イベントなどの映像撮影用に開発されたエアロボオンエアは、地上からケーブルを通じて電力を供給しながら飛行し続けることができる有線給電式ドローンだ。2020年には改良が施され、防滴防塵化や軽量化、さらには10m/sの耐風性能を実現するに至った。それに加え、エアロボオンエアの最大の特長となる光学30倍ズームでは、機体の揺れによるブレが抑えられる構造設計となり、遠くからでも鮮明な映像撮影を可能にした。

 そして、エアロセンスは機体の機能面から使い勝手にも目を向け、新たに全自動で光ファイバーケーブルの巻取り、巻き出しを行う「エアロボリール」を開発。ブースでは、外部出力を行う「ベースステーション」とエアロボオンエアにエアロボリールを接続した状態で展示していた。

ボックス型のエアロボリール。AC100Vで稼働し、緊急停止ボタンや漏電遮断ブレーカーを設けた安全設計。
背面のインジケーターパネルでは、ステータスを一目で確認できる。

 エアロボリールは100m長のケーブルを収納するボックス型のリールで、サイズは508×544×350mm。近頃の水中ドローンでも電動リールをオプションで用意しているが、それに比べるとだいぶ大きい印象だ。というのも、エアロボリールは車両との連携を想定して開発しており、放送車両や建設車両、消防車などの常備機材としてドローンを活用してもらう狙いがあるからだ。そのため、IP43相当の防水防塵構造としている。また、エアロボオンエアの利用者からはケーブルの収納が大変で、絡まってしまうという声も多く、全自動機能を持たせた。給電と映像伝送を担うケーブルは、高速かつ円滑に映像を伝送するために光ファイバーケーブルを採用。このケーブルはとても機能性が高い反面、折れてしまうと断線しやすく、扱いには気を遣う。そこで、エアロボリールはテンションを最小となるようコントロールし、繊細な制御を行うためケーブルの絡まりを防ぎ、作業の効率化を図ることができる。なお、巻取りと巻き出しはオートモードとマニュアルモードで切り替えが可能。さらには音声による案内も備えており、背面のパネルでモードの切り替えや音声の音量調整を行うことができる。エアロボリールの価格は約600万円で、ベースステーションとエアロボオンエアのパッケージは約1600万円となる。今後はリースでの提供も検討しているという。

PPKの搭載でエアロボをプラットフォーム化

 エアロボリールのほかに、エアロボにマルチスペクトルカメラやPPKおよびジンバルを搭載した「エアロボスペクトル」と「エアロボPPK」も展示していた。

MicaSense ALTUMを搭載したエアロボスペクトル。機体とは有線で接続されており、機体の位置情報とカメラが連携している。

 エアロボスペクトルはエアロボにMicaSense製のマルチスペクトルカメラ「ALTUM」を搭載したモデルで、エアロボに搭載されたPPKによって高精度な圃場センシングを実現する。これまでにも多くのメーカーでマルチスペクトルカメラを搭載したドローンがリリースされてきたが、エアロボスペクトルはカメラと機体がリンクしており、カメラに機体の位置情報を付与する仕組みになっている。取得したデータはエアロボクラウドにアップロードすることで、自動で植生分析が行われ、NDVIデータとして出力される。NDVIは植生状況を色や数値で表示したもので、肥料が足りていない箇所や作物が順調に育っている箇所を一目で判断できる。ただし、ドローンにマルチスペクトルカメラを搭載しただけでは、位置情報に誤差が生じてしまう。そこで、クラウド側で位置情報を補正するPPKと組み合わせることで、より精度の高い位置情報が取得可能になった。これにより、肥料コストは30%削減でき、収穫量は10%以上向上するなど、農業分野に与えるメリットは大きいという。

 また、エアロセンスはドローンで取得したデータを基に、農業機械との連携を進めている。NDVIデータから可変施肥マップの出力に対応したことで、トラクターとの連携が可能になった。トラクターに可変施肥マップを読み込ませれば、肥料を自動で散布するだけでなく、肥料が足りていない場所と足りている場所を判断し、最適な量を撒くことができる。自動で散布するためには自動運転機能付きのトラクターのほか、粒状・砂状の肥料や薬剤を散布するブロードキャスターがGPSに対応している必要があるという。

ジンバルを搭載したエアロボPPK。

 そして、もう1つ展示されていたのがエアロボPPKだ。このモデルはエアロボスペクトル同様に、クラウドの後処理で位置情報を補正するシステムを搭載している。エアロボとの違いはPPKの搭載で高精度な位置情報が取得でき、補正用のエアロボマーカーの設置が不要になったことが大きいが、これに加え、新たにカメラ用ジンバルを搭載した点にも注目したい。

ジンバルにはソニー製のα6000、α7が搭載可能。とくに相性が良いのはα6000だという。

 これまでエアロボは、ジンバル機能を持たないカメラで最適な測量業務を提供してきた。以前の取材では「写真測量は斜めの角度から撮影したデータを混ぜることで、ドーミング現象を解消できる。ジンバルを搭載しなくても、移動時に発生する機体の傾きなどによって自然にさまざまな角度で撮影が可能なため、エアロボはジンバルを搭載していない」と教えてくれた。一方で、今回出展したエアロボPPKはエアロボと同じく、測量用ドローンとして開発されたにもかかわらず、ジンバルが搭載されている。これについて担当者は「平面の測量であればエアロボを使って最適なデータ取得ができる。しかし、法面のような斜面では、真下に固定されたカメラでは正確にデータ取得ができない。それに加え、エアロボマーカーの設置も難しい。そこで、ジンバルを搭載したエアロボであれば斜めからの撮影が可能となり、PPKによってエアロボマーカーの設置も必要なくなる。そのほか、ジンバルを搭載することで施工現場の進捗管理にもエアロボを役立てることが可能になった」と説明した。エアロセンスはジンバルを搭載することで、同じ測量業務であってもこれまでとは異なるニーズに応えていく。

 そして、今後は新たにAirpeakを立ち上げたソニーとの関係性にも期待が寄せられる。ソニーのグループ会社であるエアロセンスは、ソリューション開発企業として、ハード開発メーカーのソニーと連携していくという。エアロセンスのソリューションを組み合わせ、ソニー製ドローンのブラッシュアップを図り、ソニー製ドローンを使ったソリューション開発を進めるなど、今後の両社の展開に期待が高まる。