ヤマハ発動機は、2020年4月より、静岡県浜松市の複数のばれいしょ畑において、生産者、薬剤メーカー、JA、県農林事務所と協同で、産業用オートパイロットマルチローター「YMR-08AP」による実証散布を開始した。収穫期を迎える6月初旬まで地上散布と比較しながら続けられる。

浜松市の複数のばれいしょ畑で始まったドローンによる実証散布

 就業人口の減少や働き手の高齢化など、多くの課題を抱える日本の農業にあって、ロボット技術や情報通信技術を用いた「スマート農業」が大きな期待を集めている。同社でも、UMS(Unmanned System)技術を活かした産業用無人ヘリコプターや産業用マルチローター(ドローン)といった製品に加え、作物の生育状況に応じて最適な防除や追肥を管理するプラットフォーム「YSAP(Yamaha Motor Smart Agriculture Platform)」を展開するなど、スマート農業の発展に向けた取り組みを進めている。

 実証散布に使用されている産業用オートパイロットマルチローター「YMR-08AP」は、今春発売された新製品で、オートパイロット機能による自動散布、専用ソフトによる簡単なルート作成等の特長を持ち、省力化や効率化に貢献しながら同社産業用無人ヘリコプターに匹敵する高い散布品質を実現するモデルである。

「YMR-08AP」プロモーション映像

 ドローンによる散布には、散布時間の短縮以外にもさまざまなメリットがある。たとえば農薬取締法では散布方法ごとに希釈薬液(水道水)の量が定められており、高濃度少量散布が可能な空中散布であれば、面積当たり必要な水を地上散布に対して大幅に削減できる。これまで1tトラックに大きな水タンクを積んでいた畑までの移動も、軽トラック1台で可能になることを確認しているという。

 同社UMS統括部 武内真一氏は、次のように述べている。

 今回の実証散布の目的は、ドローンを使った防除体系の確立です。

 疫病や害虫に弱いばれいしょは、他の野菜類と比較しても非常にたくさんの作業労力を要する作物です。ですから防除のための散布も小まめに行う必要があるのですが、一旦、手堀りによる収穫期に突入すると防除まで手が回らないといった生産者の皆さんの実情があります。防除の効率化という多くの生産者にとって非常に大きな関心ごとを、ドローンの自動飛行によってどれだけ貢献できるのか、今回の実証散布ではそれを数値化することまで目指しています。

 農業従事者の高齢化が進み、今後も生産量を維持していくには新しい力が必要です。ドローンの散布は、生産者の皆さんの期待も非常に大きい。重いホースを引きずって高齢者が防除している姿を目にすると、一刻も早く実用化しなければという思いを強くします。

産業用ドローンの自動機「YMR-08AP」

▼産業用オートパイロットマルチローター「YMR-08AP」
https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/multi_ap/