2021年4月30日、A.L.I. Technologies(以下、A.L.I.)は、福井県越前町とAOIエネルギーソリューションが主体となり行った、ドローン物流実用化のための実証実験に運航担当として参画し、レベル3(目視外飛行・補助者なし)での飛行に成功したと発表した。地域社会の持続可能な物流システムとして2022年度の実用化を目指す。

 この実験は、環境省と国土交通省の公募(※1)により、輸配送の効率化による二酸化炭素排出量の削減および災害時も含めた持続可能な物流網の構築を同時実現する事業を実施するための計画策定を目的に、ドローン飛行の実証を行うものである(ドローンを活用した際に必要な課題拠出とマニュアル等作成を含む)。

 越前町は中山間地の集落が多く、災害時の集落孤立や人口減少、少子高齢化が進む中、輸送・物流手段によるサービスの品質維持が課題となっている。そこで、物流手段をドローンに代替することでCO2排出量削減と、地域社会と協働した持続可能な物流システム構築が検討されている。

 今回の実験は、同事業のアドバイザーである空の駅協議会の協力を得て実施。道路崩落により孤立した集落に食品や救急・応急用品等の物資をドローンで輸送するという想定の下、物資を配送拠点(越前町立ホッケー場)から各中継拠点へ輸送した。今後の実験では、さらに中継地点から孤立集落まで輸送する予定である。

 物流へのドローン活用によるCO2削減効果の検証だけでなく、災害時を想定した防災への利活用にも可能な飛行とデータの取得を同時に実現することで、地域住民へ貢献できるデジタルデータ化も合わせて検証。また、ドローンの持続可能な運航のために、複数のドローンの飛行情報をリアルタイムで閲覧できるシステムを実装し、住民の安全に対する施策を行った。

 実証実験の成功により、中山間地域の集落間における平時の物流手段および災害時の輸送手段としての有用性が実証できた。今後は、A.L.I.東京オフィス等のドローンオペレーティングルームより遠隔地の運航管理を行う想定だという。
 同社は、今後増えていくと予想されるレベル4(有人地帯での目視外・補助者なし)の飛行実証や実用化に向け、安全対策をアップデートしていき、様々な地域特性に合わせた課題解決への貢献を目指すとしている。

実証実験概要

日時 :2021年4月21日~22日
場所 :福井県越前町
4月21日 越前町立ホッケー場 ↔ 宮崎コミュニティセンター
4月22日 越前町立ホッケー場 ↔ 織田コミュニティセンター

実験に使用したドローン

 実験で使用したドローンは、約1kgの物資を搭載し、片道約7kmを約30分で飛行した。時速18km、対地高度は最大約140m。

実証実験の技術/安全対策 概要

ドローン本体でのデータ記録
クラウドシステムでのデータ記録
衝突回避センサー搭載
360度カメラによるリアルタイム監視
一般実用化を想定した、離陸時ボタンの簡易化
遠隔操縦機能
手動操作への切り替え機能
タイムスタンプのブロックチェーン記録
3次元地図によるデジタル表示
City GMLによる事前フライトシミュレーションによるルート策定
C.O.S.M.O.S(A.L.I.開発の管制システム)による飛行管制
トラブル発生時の着陸/墜落場所の予測
ドローンの飛行中を喚起する看板の設置
安全管理責任者情報等の表示
トラブル発生時の着陸/墜落場所の予測も可視化

C.O.S.M.O.Sによる飛行情報画面


※1 環境省と国土交通省が共同で公募した「令和2年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業)」のうち「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業(計画策定に対する補助)」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/enetoku_butsuryu.html