2020年12月22日、西日本電信電話(以下NTT西日本)と、ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下JIW)、岡山県真庭市の三者は、岡山県真庭市をフィールドとした、ドローンによる広葉樹測量を用いた人工知能による樹種・材積量の視える化についての実証実験を開始することを発表した。

背景・経緯

 近年の人口減少により、特に地域社会においては、既存の社会インフラや従来型の経済システムでは維持が困難となり、存続が危ぶまれている。岡山県真庭市では、森林資源など豊かな地域資源を活かし、バイオマスを活用したエネルギーの利用、協働を進め、地域の活性化とともに再生資源を基盤とした自立型社会の実現を推進している。
 その中で、森林資源のさらなる活用と地域内の電力自給率100%に向けて、未利用の材木や一般木材に加え、広葉樹の燃料化の検討を始めている。
 広葉樹の多くは天然林で生育していることから生息・分布状況の把握が困難であり、野放しのままでは土砂崩れなどの災害を引き起こす危険性がある。それだけでなく、広葉樹の伐採・運搬を密生地以外で実施すると高コストとなるため、広葉樹の区画毎の材積状況の事前把握が重要課題であった。

 一方で、NTT西日本とNTT西日本グループのJIWは、インフラ点検で培ったドローン空撮ノウハウやICTを用いたデータ解析ノウハウを有しており、今回、広葉樹燃料化の課題解決に向けて、岡山県真庭市にてドローン・画像解析等の新技術を活用した広葉樹林測量の実証実験を行うこととなった。

実証実験の概要

 ドローンの空撮・測量データに基づいた樹種の自動判別や樹木サイズの推定に基づく材積量算出を行うため、京都大学の伊勢准教授と連携しデータ解析を実施。当該研究室にてディープラーニング技術を用いて開発した人工知能モデルを活用する(※1)。

実証実験フロー。ドローン空撮・測量によるデータ収集には、テラドローン社のTerraLidarを使用する。

・実施期間 :2020年11月~2021年3月
・場所 :岡山県真庭市鉄山 約10ha

※1 参考:京都大学森里海連環学教育研究ユニット RE:CONNECT「ディープラーニングで植生を識別する」伊勢研究室の挑戦 https://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/reconnect/deepforest/

各社・自治体の役割

・NTT西日本 :実証実験の全体調整、ICTを用いた森林測量・解析事業の構築・事業性の検証
・JIW :ドローンを用いた空撮、測量、データ加工
・岡山県真庭市 :実証フィールドの提供、資源有効活用モデルの構築

今後の展望

 岡山県真庭市では正確な材積量を把握し、バイオマス発電における燃料のさらなる安定調達と、地域内エネルギー利用を拡大し地域全体での資源循環・経済循環モデルの構築を進めていく予定である。
 NTT西日本グループは、樹木測量による材積量視える化を他エリアにも展開し、各エリアのバイオマス関連事業者と連携することで、さらなる地域課題の解決に貢献していく、としている。