2019年10月29日、住友商事と住友商事東北(以下、二社を総称して「住友商事グループ」)およびナイルワークス(以下、 三社を総称して「三社」)は、JAみやぎ登米と協業し、農業用ドローンとバッテリーシェアリングをパッケージ化して提供するサービスを確立したことを発表した。今後、大型JAや農業生産法人などへの展開に取り組む。

 日本の農業は、就農者の高齢化や担い手不足が進み、生産者にとって、病害虫や雑草の防除、水位管理などの農作業の負担が課題となっている。農作業の効率化に向けた先端技術の活用が進められており、近年では農業用ドローンが注目されているが、散布面積が拡大するほど多数のバッテリーが必要になるため、利用者にかかる経済的負担も大きくなる。本格的なドローンの導入には、運用コストの軽減が避けて通れない問題である。

 住友商事グループは、2018年よりJAみやぎ登米と共同で、ナイルワークス製農業用ドローンの導入実証を行っており、本年、ナイルワークス製ドローン「T-19」20台をJAみやぎ登米管内に導入した。また、学校法人三幸学園が運営する飛鳥未来きずな高等学校 登米本校(旧米山高校)の一部を借り受け、ドローンのバッテリーの保管・充電を行う施設「スマート農業センター登米」(以下「同施設」)を設立した。

 同施設では、安全面から温度・電圧・充放電回数を管理しながら給電を行うマクセル製のインテリジェント・バッテリーが充電・保管されている。 ドローンの利用者は、必要な時に必要な数のバッテリーを利用できる。バッテリーをシェアすることで、ドローンの導入費用削減や稼動の効率化が実現し、品種や地域に応じた適切防除も可能になる。

 なお、同施設については、JAみやぎ登米管内の約400ヘクタールの耕作地でドローンによるカメムシの集団防除を行った際に活用した実績があるが、今後住友商事が国内外から発掘した先端農業技術を展示・紹介するショールームとしても利用する予定である。

 また、全国各地で2019年に三社が防除した面積は1,000ヘクタールを超えており、そこで収集された圃場の画像情報は、生育診断システムの精度向上に役立て利用者に還元される。

 住友商事グループは、農業用ドローンとバッテリーシェアリングを組み合わせたサービスを、生産者との対話を通じ、農法やニーズに合わせた形で展開することを目指す。また、農業用ドローンに加え、水田センサーや農機の情報システムなどの先端技術を活用し、誰にでも使いやすく、分かりやすいサービスの構築にも取り組んでいく、としている。

 ナイルワークスは、今後、保有する技術を水稲以外の作物に展開し、日本のみならず海外にも進出することで、精密農業のリーダーになることを目指す、との展望を示した。

参考資料

「スマート農業センター登米」について
所在地:宮城県登米市米山町中津山筒場埣215
学校法人三幸学園 飛鳥未来きずな高等学校 登米本校 旧生徒会館

 飛鳥未来きずな高等学校は、学校法人三幸学園が運営する通信制高校。2015年に閉校した旧宮城県立米山高等学校の校舎を借り受け、2017年4月に登米本校を開校。

ナイルワークス製ドローン「T-19」について
 ナイルワークス製のドローン「T-19」は、センチメートル単位での機体制御と自動飛行を実現しており、高精度な農薬散布と生育診断が可能。1株ごとに生育を診断して最適な農薬・肥料の量を分析するほか、もみの数を数え、圃場の収量の予測も行う。国産にこだわり、プロペラガードを有するなど、安全に配慮した設計である。