2019年3月14日、ナイルワークスは、INCJ、住友化学、住友商事、クミアイ化学工業、 スパークス・グループを運営者とする未来創生2号ファンド、Drone Fund2号(以下、「出資企業・ファンド」)を引受先とする総額約16億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。創業以来の累計資金調達額は、約24億円となる。

 日本では、農業従事者の高齢化や後継者不足を背景に離農が加速しており、過去から培われてきたノウハウが失われつつある。また、生産者の減少により耕地の集約や農業法人の大規模化が進み、ドローンやロボット、ICT等を活用した農作業の省力化や、品質管理の効率化が求められている。

 ナイルワークスは、「空からの精密農業」をビジョンに掲げ、センチメートル精度で完全自動飛行する農業用ドローンの開発および、ドローンに搭載した専用カメラで作物の生育をリアルタイムで診断し、診断結果に基づいた栽培管理を提案する生育診断クラウドサービスの事業化を推進している。2018年夏には、全国各地で75回におよぶ実証実験で農作業の省力化を検証し、地域や水稲の品種ごとの生育データをもとに、診断技術の精緻化を行った。また、VAIOを委託先とした量産化体制を住友商事と共に構築し、量産化モデル第一弾である新型機「Nile-T19」を、2019年6月より販売開始するよう準備を進めている。「Nile-T19」は、プロペラガードを装着し、通信手段も二重化した作業者の安全性と作業の効率性を高めた機構になっている。販売にあたっては、出資企業・ファンドや、既存株主の全国農業協同組合連合会、農林中央金庫および各販売店とも協力しながら準備を進めている。

新機種「Nile‐T19」

ナイルワークス
 同社は、今後も各出資企業・ファンド・組合と連携し、保有する技術を水稲以外の作物に展開し、日本のみならず海外にも進出することで、精密農業のリーダーになることを目指す、としている。

INCJ
 同社は、一昨年に初回投資して以降、リードインベスターとして経営面のサポートを行ってきた。今後もナイルワークスへの継続的な支援を通して、我が国の農業の生産性向上・国際競争力の強化を支援するとともに、産業界の枠組を越えた連携・オープンイノベーションを推進することで、ICTと農業の融合による新しい産業の創出に貢献していく、としている。

住友化学
 同社は、総合化学メーカーとして長年培ってきた確かな技術とナイルワークスの先進的な技術を融合させ、農業の大幅な省力化・効率化と農作物の収量および品質の向上を目指す。また、農業経営の競争力強化を支援する「トータル・ソリューション・プロバイダー」型ビジネスならびに精密農業の取り組みをより一層加速させていく、としている。

住友商事
 同社は、革新的技術を有するナイルワークスを総合商社として広くバックアップし、早期事業化を支援する。また、ナイルワークスに加え、インターネットイニシアティブ、農業情報設計社などとも協業し、先端技術を分かりやすく、使いやすい形で生産者へ提供することで、精密農業の普及や農業の活性化を目指す、としている。

クミアイ化学工業
 同社は、国産第一号の農薬を市場に提供して以来、安全で効果的な農薬の研究開発・普及を図ってきた。スマート農業への取組みの一環として、ナイルワークスとは実証実験などを通じた協働を行っている。今後とも、農業生産の課題を技術革新で克服する「社会に貢献する企業」としての取り組みを進めていく、としている。

未来創生2号ファンド
 同社は、「知能化技術」、「ロボティクス」などの5分野で、未来社会に向けた革新技術を持つ企業を対象に出資を行っている。ドローン自動飛行技術や生育診断技術により世界の農業を変えようとしているナイルワークスへの出資を通して、より良い未来社会の実現とイノベーションの加速に貢献していく、としている。

「空からの精密農業」

 ナイルワークスでは、センチメートル精度でドローンを完全自動飛行する技術開発に成功しており、同技術を搭載したドローンを作物上空30~50cmの至近距離を飛行させることにより、薬剤の飛散量を大幅に抑えるだけでなく、作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断し、その診断結果に基づいて最適量の肥料・農薬を散布する技術に取り組んでいる。