写真:展示された空飛ぶクルマ、ポーズをとるミャクミャク

 大阪市高速電気軌道(以下、Osaka Metro)と大阪市は、2025年大阪・関西万博(以下、万博)でのデモフライトを計画するSkyDriveの「空飛ぶクルマ」が使用する会場外ポート「大阪港バーティポート」の竣工セレモニーを3月28日に開催した。当日は完成したバーティポートをはじめ、乗客を受け入れる旅客施設、機体の整備や補給、待機などに使用する格納庫、そして「SKYDRIVE SD-05型」のフルスケールモックアップが初公開された。

写真:大阪港バーティポート、銘板
大阪港の中央突堤にある「大阪港バーティポート」

 セレモニーには大阪市副市長の高橋 徹氏をはじめ、Osaka Metro代表取締役社長の河井 英明氏、SkyDrive代表取締役CEOの福澤 知浩氏の他、関係者が参加し、「空飛ぶクルマ」に対する期待が寄せられた。

写真:セレモニーの様子
大阪港地区の会場外ポート竣工セレモニーが行われた

 Osaka Metroは運営する地下鉄やバス、シェアサイクルなどを一元的に提供する都市型MaaS構想「e METRO」を推進しており、空飛ぶクルマも新たなモビリティの一つに位置付けている。2024年8月にSkyDriveと業務提携契約を締結し、2024年1月に大阪市の公募による「『空飛ぶクルマ』会場外ポート事業者」に選定後は、大阪港地区で整備を協力して進めてきた。場所は大阪メトロ中央線大阪港駅に近い中央突堤にあり、オンデマンドバスやシェアサイクルで移動できる。

写真:停車するバス、旅客施設、格納庫
左手が旅客施設、奥の白い建物が格納庫

 約1万2,000平方メートルの敷地内に、バーティポート、格納庫、旅客施設、充電施設(設置中)や消火設備、駐車場などが設置されている。万博会期中は、夢洲(ゆめしま)会場内に同日完成した「EXPO Vertiport」との2区間でデモフライトが予定されている他、一般向けにモックアップの搭乗体験や搭乗時に使用する顔認証チェックイン、VRによるバーチャルフライト体験などの実施を計画している。

写真:旅客施設の外観
バーティポート側から見た旅客施設
写真:ソファや机が配置されたラウンジスペース
ラウンジスペース
写真:設置されたタブレット端末
顔認証チェックイン
写真:テーブルに置かれた4人分のHDM、コントローラー
VR体験も用意されている

 バーティポートは、15メートルの離着陸スペースがあり、最大離陸重量は5トンとなっている。デモフライトを予定しているSkyDriveの機体「SD-05型」は直径11.5メートル、幅11.3メートル、ローターを含む高さは約3メートルで、最大離陸重量は1.4トンだが、その他の機体が使用することも想定した仕様になっている。会期中は、2024年8月に業務提携契約を締結したSkyDriveのみが使用するが、施設そのものは2026年度(2027年3月中)まで運営する契約になっているためだ。

写真:離着陸スペース
写真:バーティポート
バーティポートは広々としたヘリポートといった印象

 格納庫は幅25メートル、奥行き20メートル、高さ9メートルあり、一般的なヘリコプターで使用されるものと同じような機能を想定して設計されている。空飛ぶクルマをより身近に感じてもらうため、フルスケールのモックアップを使用したさまざまな体験イベントを4月中旬以降から実施し、公式サイト「空クルラボ」で随時情報を公開する。

写真:SD-05型のフルスケールモックアップ
デモフライトで使用するSD-05型のフルスケールモックアップ公開は初めて
写真:SD-05型の機内の様子(前の座席部分)
写真:SD-05型の機内の様子
座席は3人乗りで広々としている

 囲み取材に登壇したOsaka Metro代表取締役社長の河井 英明氏は、「空飛ぶクルマの実装に向け機運を高めるためにも、多くの人たちにバーティポートを訪れてもらい、搭乗の流れやモックアップに乗ってもらうことで、SFの世界ではなく現実だと実感してもらいたい」と話す。また、大阪港以外にも森ノ宮パーティーコートを設置することを計画しており、「万博をきっかけに大阪で初の商用運航を目指したい」とし、モビリティの一つとして運用することに意欲を見せた。

 同じく囲み取材に登壇したSkyDrive代表取締役CEOの福澤 知浩氏は、「機体の飛行性能に関しては2月に国土交通省から型式証明の適用基準を発行されており、追加項目をクリアできれば証明が取れるというのは大きな前進であり、きちんとやりきっていくのが大事」と述べた。デモフライトに関しても試験飛行は順調のようだ。

写真:取材に応じる2人
囲み取材に応じるOsaka Metro代表取締役社長の河井 英明氏(右)とSkyDrive代表取締役CEOの福澤 知浩氏

 使用する機体は1機のみで、風などの飛行条件はヘリコプターとほぼ同じになることが想定されている。とはいえ、あくまでもデモフライトのため、会場の制約などにあわせた運航になるようだ。飛行回数や時期についてもまだ調整中とのことだが、早ければ4月9日に行われる万博のメディアデーで見ることができるかもしれない。