ドローン操縦士協会(DPA)は1月29日、東京都板橋区で「DPA認定校フォーラム2024-2025」を開催した。このフォーラムは、ドローン業界の現況や同協会の活動状況などを同協会に加盟している認定校関係者に対して説明する会合で、年1~2回行われている。今回はオンラインと実参加のハイブリッドの形式で開催された。
航空局の勝間氏がライセンス制度と機体認証制度の現況を報告
フォーラムでは、<基調講演①>として、国土交通省航空局無人航空機安全課課長補佐の勝間裕章氏が「無人航空機に係る制度運用の状況と最近の動き」と題した講演を行った。
勝間氏は2015年にスタートしたドローンの許可・承認制度の変遷などを説明。国家ライセンス制度においては、昨年2024年末時点で一等無人航空機操縦者技能証明は2484件、二等は1万9723件が発行されたと紹介した。一方で機体に関して第一種の型式認証を受けたのはACSL社の1機種だけとなり、第二種は5機種にとどまっていると話した上で「(航空局は)ライセンスと機体認証をセットにして推進したいと考えている。ライセンスについては順調に伸びてきているが、機体認証については、まだ十分ではないと認識しており、今後は機体型式認証を促進していきたい」と話した。
また、DPAは民間の操縦ライセンスも発行しているが、勝間氏は「国家ライセンスはカテゴリー2以上での飛行で求められる基本的な知識や能力を証明するもの」と規定したうえで「民間ライセンスは完全な初心者の飛行からインフラ点検、農薬散布など多種多様なドローン活用での知識や能力を付加するもの」と区分けについて述べた。また、国家ライセンスの有効期間は3年で、初期に取得したライセンスの更新が来年になることから「更新方法については早急に検討する方針だが、保持者に大きな負担をかけない方法を検討したい」と話した。
一方、2024年1月1日に発生した能登半島地震については「災害で本格的にドローンが利用された初のケース」と話し、物資輸送や携帯電話の電波中継などに使われた例を紹介。航空法では「捜索・救助」目的で、緊急用務空域指定でもドローンの飛行が可能となっているが、現場から「何が飛行可能に該当するかわかりにくい」という声があったことから、関連の通達を改正して災害関連死防止の観点から「医薬品などの物資輸送」や「住宅の危険箇所点検」などでの飛行も可能にするとし、国交省のホームページに事例集を掲載したと話した。
2機種のドローンがデモンストレーション飛行
フォーラムでは<トピックス>としてDPAと協力関係にあるKDDIスマートドローン執行役員の杉田博司氏も登壇。インフラ点検などの作業員に危険が及ぶ場所で、ドローンへの置き換えが進んできたという現状を話したうえで「実際のビジネスでは単にドローンを導入するだけではなく、業務全体を見てのDX化でコンサルタントすることが重要」と強調した。また、ドローン製造のタイプエス代表取締役の設楽丘氏が、同社が開発した屋内練習用ドローン「TS-350」を紹介。この機体は、小型かつガードに囲われた形状でATTIなどさまざまな状況を屋内で訓練できるのが特徴だとした。
屋外会場では「TS-350」と、KDDIスマートドローンが出資している米国Skydio社の最新型「Skydio X10」の2機種のドローンのデモンストレーション飛行も行われた。
DPAはマイページを通じて保険や飛行申請などサービス強化
フォーラムでは「DPA2024年度上期活動報告と2025年度活動計画」も同事務局から発表された。現在、DPAの認定校は41校。その多くが国家ライセンスの登録講習機関だが、修了審査の質を向上させるための研修会を行ったことが報告された。また昨年12月から「DPAドローン操縦士回転翼3級」などの資格取得者向けのシステム「DPA-CRM」が稼動。個人用ページ(マイページ)を通じて保険や飛行申請などサービスの強化を図る方針も示された。
ドローンサービス規格「JIS Y1011」の説明も
さらに<基調講演②>では「ドローンサービスの品質-ドローンサービス事業者に対するプロセス要求事項(JIS Y1011)の制定とそれに伴う認証制度について」と題して、ドローンサービス推進協議会(DSPA)理事の市川芳明氏が登壇。昨年8月に制定されたJIS Y1011は、事業者がドローンによるサービスを提供する場合、人員の能力確保、事故対策やプライバシー保護などを規定、要求するJIS規格。DSPAを通じて日本品質保証機構(JQA)に審査依頼され、認証が承認される。市川氏は取得のための手順などを説明したうえで「JIS Y1011の認証を受けることによりサービスの品質を一定に保つことができ、顧客からの信頼も確保できる」と述べた。