水中ドローンの利用促進に関わる日本水中ドローン協会は海洋DXパビリオンの一角で、水中ドローンを展示した。
M2 PRO MAX、水の流れに負けない力強い推進力で活用領域を拡大
複数の水中ドローンが展示されていた中で目を引いたのが、中国深圳に本社を置くCHASINGのM2 PRO MAXだ。本体サイズは608×294×196mm、重量は8.0kg。空を飛ぶドローンはペイロード(積載量)に割ける重さを増やすため、あるいはバッテリー節約のため、とかく機体の軽量化が図られるが、M2 PRO MAXは日本水中ドローン協会が販売するCHASING製機体の中では最重量。「潮流が速い海中で使用するような場合、機体が流されるといった事態が発生します。機体をその場でとどめるため、重量を重くしておいたほうがいいこともあります」(担当者)。
スラスターの性能向上も見逃せない。機体には8基のスラスターが搭載されており、各モーターの出力は従来機のM2 PROより30%アップ。これにより潮流に耐える力も増した。なお、バッテリーはM2 PRO MAX専用に開発された300Whバッテリーを搭載し、長い機体の中に格納されている。またAC電源と接続して機体への常時給電も可能だ。
形状で特徴的なのは機体の両側に飛び出したライトだ。従来機ではライトは機体正面に埋め込まれていたが、カメラも並行して取り付けられていたため、ライトに照射された浮遊物のカメラへの映り込みが激しく、業務に支障をきたしていたのだ。そこでM2 PRO MAXではライトをカメラの上から照射するスタイルに変え、映り込みの軽減をねらった。
M2 PRO MAXはダムや港湾設備、河川で止水板がある場所、工場や発電所の主水路や排水路の点検に活用されている。また、増加傾向にある洋上風力発電施設やオイルフェンス、大型船が着岸する港湾などでの需要も増えているそうだ。
M2 PRO MAXは本体、ハードケース、コントローラー等がセットになって99万8,000円(税込)。なお、2024年内にはM2 PRO MAXよりも上位機となる「X」と呼ばれるタイプの投入も予定されている。
カナダ製水中ドローン「DEEP TREKKER」の取り扱い開始
ブースにはカナダのメーカー・DEEP TREKKERの水中ドローンも展示された。CHASINGの機体は小型で扱いやすいものの、環境によってはまったく太刀打ちできないケースもあるという。DEEP TREKKERの機体はCHASINGが使用できない場所での使用を想定している。M2 PRO MAXよりも重い機体を3種類ほどラインナップさせる予定だ。またDEEP TREKKERはクローラーを履く機体もリリースしている。満水に至っていない下水管の中などは水中ドローンが活動できない。ところがクローラー付き機体であれば安定して点検が行えるという。日本水中ドローン協会は今後取り扱いを始める予定だ。
日本水中ドローン協会では水中ドローンのレンタルも行っている。M2 PRO MAXであれば1日11万円(税込)でレンタル可能だ。「最近ではもともと点検業務に携わる事業者さんや、点検を内製化したいインフラ事業者さんが水中ドローンの導入を検討されています。でも、いきなり購入するのはハードルが高いということで、レンタルして試しに使用して検討したいというお問い合わせが増えています。また、我々が一度現場に伺い点検業務を行うトライアルプランも展開しています」(担当者)。水中ドローンは空のドローンに負けず劣らず、大きなニーズがあることが実感できた。
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