第3回ドローンサミットが2024年10月1日・2日、北海道 札幌コンベンションセンターで開催された。ドローンサミットとは、経済産業省、国土交通省、ドローン活用に先進的に取り組む自治体が主催する、日本有数の規模を誇るドローンのイベントだ。今回は「ミライづくりフォーラム」との併催で、2日間で4,374名が来場した。

 初日には、北海道知事の鈴木直道氏が開会式での挨拶や、屋外での災害時ドローン活用のデモフライも視察し、「北海道は、ドローンをはじめDX、AI、衛星など、さまざまな未来技術の実証フィールドだ」と話した。

写真:登壇する鈴木知事
鈴木知事は「ドローンフィールド北海道」として多様な分野でのドローンの社会実装を進めることを公約に掲げている
写真:ドローンを手にする3人。3人の前には2機のドローン。
災害時ドローン活用のデモフライトは、JUIDAらが能登半島地震での活動を踏まえて実施。佐川急便トラックでのドローン搬送や、倒壊家屋内のドローン調査なども行われた。「フェーズフリー」という言葉は本デモに限らず、講演でも多く語られていた

 第3回ドローンサミットの舞台である北海道は、特に測量や農業の分野において、ドローンの活用が進んでいるエリアだ。例えば新十津川町では、「農家の4割がドローンを保有し、農家100名以上が民間ライセンスを取得している」(新十津川町 総務課 政所氏)という。また上士幌町は、2023年12月に日本初のレベル3.5飛行を実施し、ドローン配送も進めている。

写真:講演の様子(連結協定締結についてまとめたスライド)
2日目のシンポジウムでは、上士幌町、新十津川町が、エンジニア人材育成を核に地域産業振興を推進する石川県加賀市、橋梁のドローン点検を自治体主導で推進してきた千葉県君津市とともに講演を行った
写真:4人が向かい合って立ち話をする様子
新十津川町、上士幌町、新スマート物流の3者合同ブースでは、キーマンが集まって談笑する一幕も

 このように北海道は、先進事例が生まれやすい土壌であるようだが、一方で「北海道にこれだけの機体が集結したのは初めてだ」と各所で聞いた。「東京に行かなくても北海道で見れたら、ホットな気持ちを継続しやすい」という喜びの声もあがっていた。

 展示ブースには、DJI、Skydio、ELIOSといった海外製品から、ACSL、イームズロボティクス、Liberawareなどの国産機、水中ドローンも国内外の豊富なラインナップが並んだ。J-inSPACEの米国製ドローン「ULTRA SPIRIT」などの実力派のほか、セコム、ジャパン・インフラ・ウェイマーク、ヤマハ発動機、NTT e-Drone Technologyなど、そうそうたる顔ぶれが集まった。

写真:ドローンポートなどが展示されたブースの様子
HELICAMの展示ブース
写真:ドローンが展示されたブースの様子
AIRSTAGEの展示ブース
写真:「森飛」が展示されたブースの様子
ドリームベースの展示ブース。「森飛」は屋外デモでコストコの水(重量50kg)を運搬して見せた
写真:「ULTRA SPIRIT」が展示されたブースの様子
「ULTRA SPIRIT」(ドリームベース展示ブース内)。耐風・耐水性能が高く、完全防水。マイナス50度から最高50度までOKで、上下にカメラなどのペイロードを搭載できる
写真:「ACSL式PF4-CAT3型」が展示されたブースの様子
ACSLが第一種型式認証申請中の「ACSL式PF4-CAT3型」(ドリームベース展示ブース内)
写真:「E6150TC」が展示されたブースの様子
イームズロボティクスの第二種型式認証機「E6150TC」(福島県合同ブース内)
写真:ドローンや水中ドローンが展示された大歩の展示ブースの様子
大歩(DIVE)の展示ブース。潜水設備や、FIFISHシリーズ各機種、空中ドローンなど、同社が業務で用いる機器を幅広く展示した
写真:水中ドローンが展示されたブースの様子
大歩の隣では日本水中ドローン協会とスペースワンが合同展示ブースでCHASINGシリーズを紹介。絶えず来場者で賑わっていた
写真:シミュレーターを操作する様子
NJSの展示ブースではシミュレーター体験もできた。水中ドローンの操縦訓練用に開発され商用リリース済みで、クラックの発見やケーブルの絡まりなどリアリティある内容だった
写真:「セコムドローンXX」が展示されたブースの様子
セコムは、セキュリティドローン「セコムドローンXX(ダブルエックス)」を紹介した。AIで侵入者を検知し自動追尾できるという
写真:バイク搭載型ドローンポートを展示したブースの様子。迷彩柄の服装の人々が展示を眺めている。
デジタルカレッジKAGAのバイク搭載型ドローンポート。「自衛隊にはバイク部隊がいるので、彼らが災害時に使うことをイメージしている」そうで、開場直後から自衛隊の方々が足を止めて話し込んでいた。学生エンジニアからの興味関心も高かったという。エンジニア人材育成やリアルコミュニティを軸に産業振興を推進する加賀市らしい展示だ

 加えて見逃せないのが、未来技術の集積だ。半導体メーカーRapidusが千歳市で進める新工場の建設は象徴的だ。大樹町では宇宙港(スペースポート)の整備も進められている。また、二酸化炭素の吸収量を国が認証する「Jクレジット」創出事業、森林や藻場を活かしたブルーカーボンの促進、再生エネルギー発電にも力を入れている。他方、北海道は広大な土地があり、一次産業が盛んで、かつ寒冷地だ。

 このような未来技術やDXとドローンを掛け合わせ、地域特性をうまく取り入れることでドローンソリューションが発展し、結果としてドローンの社会実装が進む。その一端を垣間見せたところが、第3回ドローンサミットのキラリと光るポイントであった。

 例えば、桑原電装/TEAD/パナソニックシステムデザインは、もともと開発していた河川の不法投棄物をAI検知するシステムを転用し、鳥獣害対策システムを紹介した。さらに、もともとドローンで農薬散布している農家さんから「農地が広すぎて見回りできない」という話を聞いて、農地巡視システムの構築も手がけているという。

写真:桑原電装/TEAD/パナソニックシステムデザインの展示ブース
写真:モニターに映る、鳥獣をリアルタイムにAI検知する様子
ジオラマを用いて固定カメラとドローンの画角の比較をしつつ、鳥獣をリアルタイムにAI検知する様子を紹介した

 北海道大学広域複合災害研究センターは、火山噴火時や洪水氾濫時をはじめ、現地への立ち入りが不可能な状況でも、VTOLによる現況データ取得が可能であることを打ち出した。実際に国産VTOL「QUKAI FUSION」を使い、有珠山という活火山のモニタリングを実施した事例なども紹介した。

写真:展示されたQUKAI FUSION、VUX-120 23(LiDARセンサー)
QUKAI FUSIONのバージョンを見ると2.0だった。発売直後から先駆的に導入してきたことが分かる

 アラセ・アイザワ・アエロスパシアルは、コンクリート3Dプリンターとの掛け合わせを念頭に置いて開発した、エンジン搭載型産業ドローンを紹介した。同社はもともと、バクテリアの代謝機能を活⽤した⾃⼰治癒コンクリートや、構造物に継ぎ目が生じないコンクリート3Dプリンターなどを先駆的に手がける會澤高圧コンクリートが母体。将来的には洋上風力市場へのドローン供給も目指す。

写真:「AZ-250」を展示したブースの様子
アラセ・アイザワ・アエロスパシアルの産業用無人機AZシリーズの小型高性能汎用機「AZ-250」

 大深度潜水も行う大歩は、遠隔地にある船の底をドローン点検する様子を会場のモニターに映し出す実演を行い、「船舶の燃料の高騰で、付着物除去が注目されている。しかし潜水作業はストレスとの戦い。水中ドローンで見守ってもらえたら安心できる。これからはロボットも使って海洋調査やインフラ点検をできる、潜水士の仕事が変わりつつあることを若い人にも伝えたい」と説明した。「ロボットの業務活用による新たな担い手の獲得」という観点は、他の展示ブースでも話題に上がっていた。

写真:モニターに映る点検の様子
函館の漁港に停泊中の船艇を水中ドローンで点検している様子

 このほかにも、大規模農場における病気発見ソリューションや、衛星データとの組み合わせ活用、寒冷地における機体開発など、DXとの掛け合わせに関する話題が豊富だった。

 本イベント主催の北海道 総合政策部の甲元信宏氏は、「DXと掛け算でユースケースを見せていくことで、来場者の関心も高まると感じた」とコメントした。また甲元氏は、「北海道知事杯ドローンサッカー」についても触れて、「高校生や大学生が夢中で試合をしていた。技術を高める励みになったのでは」とも話した。

写真:ドローンサッカーの様子
初日から小学生から大学生が入り乱れてのトーナメント戦が繰り広げられ、保護者も含めて大勢の観客で賑わっていた。ドローンの展示会に学生が参加するのは日本では珍しい光景だった

 また、道内のドローン普及に3年前から奔走してきた北海道 総合政策部の黒澤厚氏は、「最近は、企業や市町村からドローン使いたいという相談が多い。たとえば森林が多い市町村なら、ドローンを使ったこういうソリューションがあるよとマッチングを図ることで、種を芽吹かせ、経済合理性を生み出すところへ、私たちも移行していかなければと思っている。そうすることで、市町村の地域課題を解決していきたい」と話した。

写真:黒澤氏
初日を終えてインタビューに応じる黒澤氏