ドローン販売のみならず、教育や受託業務といった事業も展開するセキドは、DJI初の運搬用ドローン「FlyCart 30」のほか、業務用ドローン「Matrice 350 RTK」と搭載カメラ「DJI Zenmuse L2」、カメラユニット「Zenmuse H30T」、遠隔地からの完全自動操作に対応したドローンポート「DJI Dock 2」など、DJIシリーズの新製品の紹介を行っていた。
全天候型(IP55)の大型運搬用ドローンFlyCart 30
ブースで一番注目されていたのが全天候型(IP55)の大型運搬用ドローンFlyCart 30だ。物流に特化した機能を備えたDJI初の物流用機体となる。中国では2023年から発売が開始され、山岳地域の輸送、港湾輸送、緊急救助などの物流配送に活用されているという。
FlyCart 30は、農業用の大型機体Agras T50の機体をベースに物流用の機能を備えており、基本性能は、デュアルバッテリーモードで最大積載量30kg(シングルバッテリーモードで40kg)、最大積載時で飛行距離16km(40kgの場合は8km)、最大飛行高度6000m(ペイロードなし)とパワフル。機体は全天候型(IP55)で、多少の雨なら問題なく運用することができる。
搭載モードは、ボックスタイプ(70リットル)とウィンチタイプ(別売のウィンチシステムキット)の2種類。実際の現場で使用することを考えるとボックスは最大容量70リットルあるものの、現場で運搬するものの形や大きさはさまざまで、一定サイズの箱には入りきらない可能性が高い。また、山岳地域での運用を想定すると、離着陸地点に平らな場所を確保することは難しいため、ウィンチタイプが威力を発揮しそうだ。
ウィンチタイプは、機体にウィンチシステムを取り付けて荷物を吊り下げて運搬し、現場に到着後、上空からケーブルを伸ばし荷物が地上に到達してテンションが緩むとフックが物理的に開放され、荷物だけが切り離されるという仕組みだ。説明員によると「フック部分に電子制御は一切使われておらず、バネの力によるもの」という。ケーブルの長さは20mで、ナイロン製。「飛行中、障害物に荷物が引っかかったりした場合、自動的にケーブルを切断する機能があり、熱処理で切断するためにナイロン製にしている。また、銅線は重たいため軽量化のためでもある」とのこと。
ウィンチユニットには揺れ抑制機能が搭載されており、機体のセンサー類が吊り下げた荷物の揺れを感知し、揺れが収まるように機体を自動的に制御することができる。「揺れた場合はオペレーターのテクニックで抑えていたが、機体が自動でやってくれるのでオペレーターの負担軽減が図れる」(説明員)。
物流管理プラットフォームDJI DeliveryHubでは、フライトプランの作成や管理のほか、ドローンの状態や位置情報のモニタリング、チームリソースなどの作業状況を包括的に把握でき、その内容を複数のデバイスで共有可能。フライトプランによる自動航行は、同じ現場に何度も荷物を搬送する場合にとても便利な機能となる。特に山岳地域のピンポイントの場所に荷物を毎回搬送するとなると手動で行うには熟練したパイロットの操作が必要だが、自動航行の機能を活用すれば、何回やっても同じ位置、同じ高度に機体を自動で移動してくれるためピストン輸送に求められる技量は格段に軽減されるとのこと。
「FlyCart 30は、機体、バッテリー、講習などを含めて500万円くらいの提案になるが、ヘリコプターで運搬する場合、1回のフライトで500万円くらいかかってしまうので費用対効果の良さを感じてもらえると思う。また、ヘリコプター輸送の場合、何度も運ぶことができないので、余分な物資も持って行ったのが、FlyCart 30ならば必要なものをその都度運ぶことができるので、物資ロスを減らせることも期待している」(説明員)
FlyCart 30は、林業、電力、港湾などの物資輸送、災害救助物資の輸送などの活用を想定している。「FlyCart 30ならば、山岳現場や災害現場など孤立した場所に簡単に物資を何度も運ぶことができる。孤立地域だと物資も必要だが、何かで他と繋がっているなという気持ちもモチベーションになる。それがFlyCart 30でできればと思っている」(説明員)
物流・運搬用ドローンとしては後発となるFlyCart 30だが、機能・性能ともにゲームチェンジャーとなる機体になるのではないだろうか。