長崎大学 山本郁夫研究室は、2023年9月7日~8日に出島メッセ長崎で開催された「第2回ドローンサミット」に出展し、沿岸域における未踏領域の藻場生態系調査を可能にし、ブルーカーボンの定量化を実現する海中ドローン「REMONA」をお披露目した。
「REMONA」という名前は、ROV(Remotely Operated Vehicle)のRe、それから山本研究室ではさまざまなモビリティを開発しているのでMobilityのMo、長崎のNaを組み合わせて名付けたという。また、長崎(Na)で藻場(Mo)をリカバリ(回復させる)という想いも込められている。サイズは横幅450mm、縦幅400mm、高さ280mm、重量は15kg、バッテリー交換式で、8つのスラスタを搭載し、全方向に稼働できる。
もともと山本研究室では、洋上風力発電所などの海洋インフラの点検を主な目的として海中ドローンの開発を手がけてきたが、2022年からは水産学部と共同で、海藻によるCO2吸収量を計測するブルーカーボン調査にも取り組んでいるという。
いま、ブルーカーボン調査の重要度が増しているが、深度や潮流などの安全性を考慮すると、人間が潜って調査できる海域は限られている。また、水上や空中から藻場の面積を計測する方法では、海藻と地面の識別が難しく、濁りや天候にも左右されるうえ、海藻の高さと体積を計測できないため、CO2吸収量を正しく算出できないという課題があった。
けれども、海中ドローンを潜らせるだけでは、こうした課題の解決には至らない。というのも、従来のカメラでは奥行きの計測が不十分であることや、潮流によって機体が流されてしまうために画像の精度が低いこと、GPSを使えない水中では位置情報が取得できないことなど、複数の課題が残されていたからだ。
そこで、「REMONA SYSTEM」では、これらの複数の課題を同時に解決することで、ブルーカーボン調査における有用なデータ取得の実現を図った。
海中ドローンと、その母船となるASV(Autonomous Surface Vehicle)との連携システムを構築して、水上ではGPS情報を取得し、音響測位装置を使って海中ドローンの相対的な位置を把握することで、画像や映像をはじめ水温、溶存酸素、CO2濃度といった海中ドローンに搭載した各種センサーからの取得情報について、位置情報も確認できるようにした。
また、海中ドローンの前方向と下方向にステレオカメラを設置して、海藻までの距離、海底までの距離を計測することで、海藻の高さと体積を算出できるようにした。さらに、このカメラを用いたオプティカルフローによる自律制御を行うことで、潮流がある場所でも海中ドローンが定点を保持したまま任意の場所でとどまり続けることができるようにした。ちなみに、前方がRealSense、下方がZEDmini。
今後の研究としては、ケーブルの自動巻き取り機能やROVの無線化、独自のフライトコントローラーの開発なども視野に入っているという。
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