2022年12月6日〜7日、福岡国際会議場で開催された「Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO in 九州2022」に出展したciRoboticsは、林業資材などの物資を現場上空からウィンチで吊り下ろして自動開放フックでリリースして搬送できる物資運搬ドローン「ciDrone TR-22」と、大型ドローン性能評価装置「ドローンアナライザー」の模型を展示していた。

物資運搬ドローン「ciDrone TR-22」

「ciDrone TR-22」は、最大積載重量20kgの物資運搬ドローンで、2022年に商品化してからすでに3台販売したという。電動ウィンチシステムを搭載しており、着陸せず上空から荷物を吊り下ろせるほか、折りたたんで車両で運ぶこともでき、ドローンのバッテリーから給電できるリモートIDも搭載済みだ。

 もともとは2019年頃、大分県佐伯市の森林組合の課題を解決するため、重量の大きな物資を搬送できるドローンの開発を始めたという。林業の現場では、苗木やネットなどの資材を作業員が背負って現場まで登山して運び、植樹するという作業を繰り返し行っていたため、高齢化が進む作業員への負担が大きく人手不足にも困っていた。

 そこで「吊り下ろしによる物資の搬送」をコンセプトに試作機を開発。2021年には、大分県の「救援物資配送×ドローン物流」社会実装事業に参画して、重量30kgの物資を搬送できる大型機を開発した。また、電波環境の悪い中山間地でも使いやすいようウィンチシステムの改善などにも取り組んだ。

 その後、現場での利便性向上などを考慮して、さらに改良を重ねた。2022年には、重量20kgの物資を搬送できる大型機ながら、折りたたんで車両で運ぶことができる可搬性を備え、ウィンチシステムと自動開放フックにより上空から荷物を吊り下ろすことができる「ciDrone TR-22」を商品化して販売を開始した。

 荷物を吊り下げた状態では、フックがしっかりと閉まっているが、吊り下ろされた荷物が地面に到着するとフックが自動的に緩んで、リリースされる。20kgの荷物を安全に吊り下ろしできる高度は10〜15m程度を想定。ワイヤーの全長は30m。

 機体の操縦と、ウィンチ操作、それぞれの専用プロポがあり、オペレーションが完全に分かれているのも特徴だ。完全に分業させることで安全性向上を図った。

 機体前方のカメラ映像は、機体側のプロポに伝送される。操縦者は、地図やフライト情報、カメラ映像を確認しながら操縦する。ウィンチの横にも可動式のカメラが付いており、ウィンチ側のプロポに映像が伝送される。カメラの向きはプロポで操作可能で、荷物がちゃんと地面に下ろされたか、荷物がフックから切り離されたか、ワイヤーがどれくらい巻き上げられているかなどを詳細に確認しながらウィンチ操作を行える。

 すでに販売した3台は、植樹など林業の現場において活用されているという。この場合は、基本的には山の下から上へという開けた場所で、近距離を多数往復する目視内飛行になる。かつ、荷物が地面に到着してから切り離すため、物件投下にも当たらない。しかし、災害時には孤立地域に向けての物資配送としても使える、という両面での安全性を示すためにも、今後は第2種の型式認証取得を目指すという。

大型ドローン性能評価装置「ドローンアナライザー」

 大型ドローン性能評価装置「ドローンアナライザー」は、実飛行なしに機体性能を測定できる装置として開発中で、模型が展示されていた。ロボット上にドローンを取り付けて、パソコンからドローンのモーターを制御して、ドローンの性能を測定するという。

 狙うのは、定量データの取得だ。例えば、設計上のフルパワーでドローンを稼働させた場合の飛行能力を測定する、長時間飛行させてログを取得するなどを、実飛行なしに評価できるのが魅力。実際に、自社での機体開発で最大積載重量を決定するのに役立った、外部から依頼されて100時間の耐久試験を実施したなどの実績もある。

 福島ロボットテストフィールドに、製品化第1号を納入しており、施設利用者はドローンアナライザーの利用もできるそうだ。今後も、大分県産業科学技術センターによる技術支援のもと、共同で製品化に向けて開発を進めるとのことで、型式認証審査の中で活用が進む可能性などを考えると、今後もニーズが高く要注目の製品といえるだろう。

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