東京都は5G技術を活用した新しい日常を生み出す技術開発やビジネス確立を促進するため、「5G技術活用型開発等促進事業」採択アクセラレータープログラム「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」を実施している。2022年8月31日には採択企業5社による成果発表会が行われ、企業ごとに取り組み事業の革新性や5G技術との適合性を発表した。

5G活用事業を創出する「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」

 GO BEYOND DIMENSIONS TOKYOは5G技術イノベーションの社会実装を通して人々の生活を豊かにアップデートする目的で実施されており、スタートアップ企業ならではの新しい切り口となる事業アイデアの実現を支援することで5G活用事業モデルを創出・具体化している事業だ。

 支援の中には他事業者とのマッチングも含まれており、街中に5G技術を導入できるリアルな実証実験フィールドやターゲット層となる顧客を持つ事業者(街中実装パートナー)とスタートアップ企業を事業マッチングさせることで、各企業が生み出した5G技術を街中で実装・実証実験までサポートし、人々に5G技術が確実に届く事業開発の担保を実現している。

 今回の成果発表会では採択企業5社が発表を行った。本記事ではそのうち2社の取り組みを紹介する。

5G通信を活用したドローンの自動飛行/撮影による被災状況リアルタイム把握技術開発「サイトセンシング」

 サイトセンシングは産業技術総合研究所から発展したベンチャー企業であり、非GPS環境下での測位技術をベースとした事業を展開している。サイトセンシングは「減災初期対応に必要な災害時の被災状況のドローン生中継サービス」でGO BEYOND DIMENSIONS TOKYOに採択されており、非GPS環境下での自動飛行・撮影を行うドローン技術の開発を推進中だ。

 事業コンセプトとして「被災状況のリアルタイム把握」を掲げており、サイトセンシングが着目したのは災害時に被害が出やすい場所ほど非GPS環境であることが多い点だ。5G通信網を駆使すれば、GPSが入らない環境であっても4K・8Kカメラの画質が良好なドローンを自動飛行させ、被災状況のリアルタイム把握を実現できる。これらの技術は河川が氾濫している時や橋梁裏の腐食状況を把握したい時、トンネル内の火災や事故の状況把握などを想定して開発中とのことだ。

 サイトセンシングの平林代表は「非GPS環境下用測位手法である自社独自の自律航法技術(xDR)と5Gを組み合わせることでさまざまなことができるようになる」とコメントした。サイトセンシングは、すでに東京都立大学日野キャンパスをフィールドとした自動飛行・撮影の実験を行っており、今後は5G環境下でのドローン自動飛行による偵察・監視の実証実験や、地下14階で行う5Gの低遅延通信能力を活用したドローンの簡単・有効な測位誤差補正の実証実験を控えている。今後はより誤差が少ない5G通信で遠隔飛行するドローンが活躍する可能性も高いだろう。

5G通信を活用した自動配送ロボットによる非対面配送の実現「LOMBY」

 LOMBYは5G通信を活用し、自動配送ロボットを使うことで配送業者と利用者の対面を削減する配送事業に取り組んでいるスタートアップ企業だ。Amazonのように翌日配達が一般的になっている現在、配送業界では配送センターからユーザーまで届けるラストマイル配送において配送員不足が課題である。日本経済センターの宅配物取扱量と労働人口の推移予測では、2020年から2035年で宅配物取扱量が43億個増えると考えられているが、その一方で配送を行う労働人口は900万人近く減少すると予測されており、深刻な人材不足に陥る可能性が高い。

 LOMBYは今後の配送業界の人材不足も見据え、5G通信を利用して配送ロボットを遠隔操作・監視できるようになれば操縦者が何処にいても空き時間に配送員になれる仕組みの展開を目指し、現在実証実験に取り組んでいる。既にJR東日本都市開発や東京都立大学、三菱地所で配送ロボットを使用した非対面配送実験を実証しており、体験ユーザーへのアンケートでは「ロボットが運んで来てくれて可愛らしかった」のような声もあり、ロボットによる配送に好感を持つ者が多い傾向にある。

 JR東日本都市開発との実証実験では大阪からの遠隔操作で東京の公道走行を見事成功したものの、ロボットの路面上においての操作性や時間帯に伴うLTE回線の通信遅延などが課題として浮上した。これらの課題は以後の東京都立大学や三菱地所との実証実験で改善に取り組んでおり確実に課題をクリアしている。今後5G通信が発展すれば、配送ロボットが荷物配達を行う未来もそう遠くないのではないだろうか。