多くの企業で開発が進んでいる無人車/ロボット/ローバーは、XAGの「R150」やDONKEYの「DONKEY」、Doogの「メカロン」など、量産化や試験販売などが進んでおり、実装目前となっている。会場ではさまざまな無人車の出展が行われていた。
多様な農業の用途にアタッチメントで対応するXAGのR150
XAG JAPANのブースではドローンのほか、6月より販売を開始した量産型無人車R150を展示していた。R150は、高速気流スプレーシステム「JetSprayer」を車体後部に2つ搭載し、これによる気流噴霧で液剤を散布する。今回は散布モードの他に3つのアタッチメントを展示した。
まずはR150の基本性能を紹介しよう。同製品はRTK制御によって誤差を最小限に抑えた移動制御が可能で、自動操作(ルートモード、ABモード)はもちろん、追随モード、リモコンモードで操作が行える。高性能モーターと四輪駆動の構造により、未舗装路での走破性も抜群で、平地だけでなく山間部の圃場や果樹園等の複雑な地形にも対応している。また、散布モードの噴射は左右に最大290度、上下に最大200度まで回転し、最大散布幅は12m、最大作業効率は5.3ha/h。特に果樹や園芸作物といった散布しにくいものに対して、正確で省力的な散布作業が期待でき、完全無人化の実現により、生産者の農薬散布の負担や作業者曝露を大幅に軽減できるのも魅力だ。
今回出展されたアタッチメントの1つめは「荷台」の役割となるものだ。荷台サイズは920×700mm、積載重量は150kg。駆動時間は4時間。基本ベースのタイヤ(小)のほかに、写真のタイヤ(大)とクローラー(販売未定)を用意しているという。高畝や軟弱圃場での作業には、大きなタイヤが威力を発揮する。
2つめは「草刈り」のアタッチメント。草刈り速度は0.5m/s、最大切断幅1m、駆動時間は1時間。果樹栽培における10a当たりの作業時間の中で、防除を含めた除草作業は全作業時間の約1割相当(参考:農林水産省「営農類型別経営統計」)と言われており、草刈り作業が占める負担は大きい。そのため、自動化・省力化が求められてきた。草刈性能に特化した草刈ロボットに比べると1時間と駆動時間は短いが、複数ある機能のうちの1つとして考えれば、特化型ロボットに比べ多くのシーンで活用できる。
そして3つめが「粒剤散布」のアタッチメントだ。タンク容量220L、最大散布幅8m、全負荷時駆動時間は2時間、最大運用効率20ha/hとなり、種子や肥料を効率よく散布できる。
各アタッチメントの変更はボルト固定式で、20分程度で交換が可能だ。販売価格は、「液剤散布」モードを搭載した基本ベースで本体+バッテリー+充電器+測量機材+散布ノズル+タンクを含めて250万円程度。アタッチメントはそれぞれ20万円程度で、2022年前半に発売開始を予定している。
2022年4月には量産モデルを発売予定! 中小規模農家向けの農業ロボット「DONKEY」
農業関係者にはすでにお馴染みの企業であるDONKEYは、ついに今年の7月からスマート農業ロボット「DONKEY/XCP100」の試験販売開始を発表。スマート農業ロボットを開発するDONKEYは、2016年に日本総合研究所が「農業者みなが儲かる農業=『Agriculture4.0』」を提唱し、これに共感した企業や大学有志による数年間の検討を経て、2020年3月にアルプス技研、情報技術開発、日本総合研究所、ユアサ商事、渡辺パイプが共同で設立した会社だ。開発は一環して、日本の農業の多数を占める中小生産者のためのスマート農業の実現に向けた農業ロボットシステムというコンセプトを軸に行われてきた。
XCP100は電動台車をベースにした多目的の無人車だ。前方に搭載したカメラで作業者を認識し、一定の間隔を保ちながら追従する「自動追従」のほか、リモコンを使った遠隔操縦機能も備え、100kgの荷物を積載して20度の登坂を可能にした。また、防除タンクアタッチメント(100Lタンク/動力噴霧器/ノズル付きブーム/固定金具一式/ホース類一式)を取り付けることで、農薬散布にも対応する。車体は1100×610×750mmとコンパクトで、小回り(最小回転半径650mm)もきくため、果樹園だけでなく、ハウス内や露地圃場でも取り回しよく使用できる。農具の持ち運びや収穫物運搬の往復などで、作業負担を軽減してくれるだろう。
担当者によると2022年4月に、自動走行モデルの量産発売を予定しているという。それに加え、多様なアタッチメントが発売されれば、活躍の場がさらに広がることが期待される。
斜面やぬかるみに強いクローラー型の「メカロン」
Doogが展示したのはクローラー型の無人車「メカロン」。車輪タイプに比べてクローラー型は、斜面や雨後のぬかるんだ圃場、軟弱圃場における安定した走行が最大の特長だ。同社は車輪タイプの運搬ロボット「THOUZER BASIC」の販売実績があり、工場や物流業界で高く評価されている。
メカロンは、ボタンを押すだけで作業者の後を追従する自動追従、スティックを倒したほうへ誘導できる手動操縦、ライントレースに加えて、一度走行したルートを記憶させて何度も同じルートを走行させる「メモリートレース」機能といった走行機能が充実している。なかでも、メモリートレース機能は収穫物の運搬の往復作業などで利便性が高い。路面に応じて100〜200kgの積載が可能なので、カゴを載せ収穫物や農作業に必要なツール類を載せて走行でき、パワーがあるので台車の牽引も行える。
価格は250~600万円とし、バッテリー容量や開発協力に応じて、幅広い価格設定となった。自動走行向けのネットワークインタフェースやメカロンから電源を供給するためのカスタマイズも可能で、生産者の要望に応えられる自由度の高い無人車といえる。
今年に入って無人車/ロボット/ローバーの本格販売や試験販売を始めるメーカーが増え、いよいよ実用化が進んできた。今後はアタッチメントの多様さ、低コスト化が普及のカギとなってくる。