JapanDrone2021は例年に比べ、国産ドローンの出展が多く見受けられた。各社が独自の強みを活かしたドローンを開発しており、飛行性能や耐久性の向上がうかがえる。これからドローン開発の加速が予想されるなか、モーター部品の製造開発を行うASTERは、より安全な運用につながるドローン用モーターを展示した。

耐久性は3000時間以上!雨天でも使える高寿命モーター

 プロペラを回転させるドローンのモーターは、飛行中に故障すれば墜落につながるリスクが高い重要部品だ。ASTERが開発するモーターの特長は、IP55やIP67の防塵防水構造を採用することで、メンテナンスフリーながらも高寿命なモーターを実現したことだ。現在使われているドローン用モーターの寿命は100~200時間と言われており、7割程度が異物や水の混入で破損してしまうという。ドローンは砂や砂鉄が多い過酷な環境で使われるほか、海上で活用するケースも少なくない。その結果、異物によってベアリングに傷が入ってしまったり、潮水で腐食してしまうなどの故障事例が報告されており、ASTERのIP規格を取得したモーターを採用することで、これらの破損を防止する。

東光鉄工のドローンに採用されている中型ドローン用モーター「ASTM0004」。650Wの出力を発揮し、IP67規格を取得。高い防塵防水性能を持つ。
大型ドローン用に開発中である「ASTM0005」の出力は4kW。

 ASTERのモーターは完全密閉構造にすることでIP規格を取得している。密閉されていない通常のモーターはメンテナンスをしても、中がしっかり掃除できているかが確認できず、次に飛行させる直前にベアリングがゴロゴロするなどの異常が発見されるケースもある。ASTERはそのようなリスクを1つでも多く無くすことを目標にモーターを開発してきた。
 密閉構造であれば、全体を水で洗い流すだけで念入りなメンテナンスは不要で、耐久試験では3000時間でも正常に可動することが確認されているというから驚きだ。

IP67規格を取得したモーターを採用した東光鉄工のTSV-RQ1。

 ASTERのモーターが取得しているIP55とIP67は防塵防水の基準が異なる。IP55はホースで水をかけても影響を受けず、粉塵が混入しても正常に可動することが認められたものだ。そして、IP55よりも優れたIP67は、1mの水中に1時間沈めても可動し、PM2.5相当の非常に小さな粒子を吹き付けても破損しない構造のものが取得できる規格となっている。ASTERのモーターは限りなくトラブルを減らすことができ、東光鉄工のドローンにも採用されているという。

 防塵防水に加え、材質にアルミを使っていることも特長のひとつだ。一般的なモーターは銅が使われており、近年は供給が不安定で、なおかつ高コストの傾向が見られる。消耗部品として100~200時間で廃棄されてしまうことを考えれば、アルミを使いながらも高寿命化されたASTERのモーターは環境保全の観点からも優れているといえる。

軽量で高出力を目的に開発された「ASTM0006」は小型ながらも出力は300Wとなる。

 ASTERは、他社と同じ体積のモーターであっても、より多いコイルの巻き数で高出力なモーターを強みにしてきた。これを活かした軽量かつ高出力なモーターも展示していた。他社のモーター重量が190gなのに対し、同サイズで130gのモーターを開発することに成功している。

 IP規格を取得した密閉型モーターは現在流通しているモーターに比べ、2倍ほどの販売価格となるが、寿命は10倍以上。コストパフォーマンスに優れ、ドローンの精度向上に大きく貢献する製品といえるだろう。また、IP規格を必要としないドローンにおいては、軽量かつ高出力のモーターを用いることで、よりコンパクトな機体設計が実現できそうだ。