2020年10月6日、maxonは、ドローンのスタートアップ企業Flybotixと、新しいタイプの検査用ドローンに最適化されたBLDCモータを共同開発したことを発表した。多くのプロジェクトで培ったノウハウを活かし、各種コンポーネントの信頼性と品質が重要性を増しつつあるUAV市場にmaxonが参入する。

maxon BLDCモータ

 ローターは4個ではなく2個。Flybotixは、このアプローチに基づいて検査用ドローン「ASIO」を開発した。産業プラント用のこの屋内型ドローンには、maxonのブラシレスDCモータで駆動する特許取得済みドライブシステムが使われている。maxonがFlybotixと共同開発したこの電子モータは、ドローン用途のための改良が加えられ、重量と性能が最適化されている。これによりASIOは、より長時間のミッションを遂行することが可能になり、より離れた場所に飛行することができるほか、コストの節約にもつなげることができる。

Flybotixドローン

 Flybotixはスイスの企業で、maxonのラボもあるローザンヌのスイス連邦工科大学ローザンヌ校イノベーションパークに拠点を置いている。CEOで創業者でもあるサミール・ブアブダラ氏は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校とチューリッヒ校でドローン技術の開発に15年にわたり携わった経験を持っている。ブアブダラ氏のチームで開発されたシステムは、2つの自由度を備えたアルゴリズム制御式の駆動・操舵機構である。「この機構によって、ヘリコプターの空力性能とクワッドの機械的な安定性をドローンにもたせるのです」とブアブダラ氏。ASIOは保護ケージで囲まれており衝突に強く、狭い場所でも通り抜けることができるため、安全に検査を行える。また、オンボードカメラと高品質なディスプレイを遠隔操作で組み合わせることで、石油貯蔵タンク、地下鉱山、発電所などの危険な場所でも安全なドローンの操縦が可能である。

 無人航空機(UAV)の市場には、Flybotixのような多くのスタートアップ企業が参入しており、検査、農業、セキュリティ、輸送など幅広い応用分野への展開が期待されている。また、無人航空機とそのコンポーネントに対する安全性の要件は継続的に高まっている。これらの要件を満たすドローン用モータの開発に欠かせない高品質のドライブと専門知識をmaxonは有している。2019年には、特別なプロジェクトのための最初のドライブと、そのためのESC制御ユニット(Electronic Speed Controllers:電子回転数コントローラー)を製造している。ドローン市場において重要なのはモータだけでなく、BLDCモータとモータコントローラー、そして、それに適合したプロペラといったすべての構成要素が完璧な相互作用を生み出すことがさらに重要になるという。
 maxonは、UAV市場において、カスタマイズされたドライブとシステムで顧客をサポートしていきたい、としている。

 ちなみに同社は、NASAの火星探査ミッションにもモータを納めており、2021年火星に着陸予定の探査車「パーセベランス(Perseverance)」の車体下部にとりつけられたヘリコプター型ドローン「インジェニュイティ(Ingenuity)」には、maxon製DCモータが6個搭載されている。