ドローン国家資格とeラーニング活用のススメ

──最初に、エネコムと日本無人航空機免許センター(JULC)、それぞれのドローンに関する事業内容を教えてください。

エネコム空尾英樹氏(以下、空尾) :エネコムは、2015年からドローン事業に携わっています。親会社である中国電力とグループ企業の中国電力ネットワークが保有する送電線や鉄塔などの電気設備点検や災害時の被害調査などにドローンの活用を進め、2017年には日本ドローンコンソーシアム(JDC)認定ドローンスクール向けのeラーニング教材を独自で開発し、電力会社はもちろん、インフラ関連、イベント関連、測量などの多種多様な業界で利用実績を積み重ねてきました。

 点検を行う送電線は、山間部から都心部の街中まで至るところにあり、ドローンの運用方法を間違えると大事故につながります。そこで現在は、積み重ねたスキル・ノウハウを活かし、世の中に「安心・安全」なドローン活用の拡大につながる教材開発を中心に進めています。

JULC 皆川正昭氏(以下、皆川) :JULCは、質の高い無人航空機の講習やトレーニングを提供する組織です。無人航空機業務で実績のあるパイロットが教官となり、国家資格(無人航空機操縦者技能証明)や民間資格の講習を通して、ドローンパイロットに必要な正しい知識や技術を教えています。

 また、国内のどこでも講習を提供できるように全国展開を目指し、現在は登録講習機関として国内最多(※2024年5月20日時点)33教習所を運営しております。ドローンはツールであり、扱う側、つまり人への教育が最重要ととらえ日々活動しております。

[中央]株式会社エネコム ソリューション事業本部 ソリューションサービス部 プラットフォームサービスチーム 空尾英樹氏、[左]同、山本拓弥氏、[右]日本無人航空機免許センター株式会社(JULC) 事業本部 本部長 皆川正昭氏

ドローン活用の発展は「安心・安全」がカギ

──無人航空機の利活用が急速に増加している昨今、操縦者を教育する立場として、ドローンの運用面でどのような課題があると考えているのでしょうか?

空尾 :ドローンはリスクがともなうテクノロジーです。高性能な機体が次々と開発され、手軽に飛ばせるようになっているのは望ましい状況ですが、その反面、機体のシステムや仕様、法令等の理解が不足していると、事故や法令違反を起こして社会に迷惑をかけるだけでなく、企業としての社会的な信頼を失墜しかねません。ドローンを操縦する危険性を充分に把握し、正しい知識と技能をインプットしてはじめて、「安心・安全」な運航が実現できると考えています。

皆川 :ドローンの「安心・安全」は、機体の性能だけでなく、操縦者の技量と、航空法をはじめとするルールを遵守した運用が重要だと考えます。国交省が開示するドローンの「無人航空機に係る事故等報告一覧」を閲覧すると、ヒューマンエラーに起因する事故が多く、もちろんなかにはドローンの制御不能による事故もありますが、その場合も日常点検や飛行前点検で未然に防ぐことができるケースも少なくないことがわかります。

 そのためJULCでは、各点検作業や異常事態時のリカバリーも重点的に指導しています。また講習とは別に、航空法をはじめとするドローン飛行に関わる法律・ルールを深掘りする法令セミナーを全国各地で定期的に開催しています。

ドローン国家資格がビジネスで必要不可欠に

──ドローン運用の「安心・安全」を担保するために導入された、国家資格(無人航空機操縦者技能証明)制度。この国家資格のあり方や今後の必要性は?

皆川 :これからは国家資格の取得がドローンパイロットとしての”第一歩”になっていくでしょう。ドローンを運用するために必要最低限の知識が集約されているのが国家資格だと考えています。これからドローン事業に新規参入する企業も、ドローンについてしっかり学び、国家資格を取得するというステップを踏むことで、コンプライアンスや社会的責任も果たしながら、安心・安全な運用につながるのではないでしょうか。

空尾 :最近は、建設業界でも外注業者を選定する際に、受注者側で国家資格を所持しているかが問われるシーンが増えてきているようです。国家資格という一定の操縦技能を有していることの証明が、発注者側に安心感を与えているのだと思います。さらに今後は、操縦する受注者側だけではなく発注する側もドローンに関する基礎的な知識が必要とされるようになっていくと想定されます。たとえば、発注者側が「特定飛行」について理解していないと、操縦者が法律を遵守して運用しているかどうかを判断できず、万が一操縦者が航空法に違反した飛行をした場合、発注者側も責任を追及されることになるでしょう。

 国家資格が普及し、操縦者の技能レベルが統一されることは、ドローンに関するモラル向上にもつながります。安心・安全にドローンを活用できるパイロットが増え、国内でドローンを活用したビジネスがさらに拡大することを期待しています。それらを踏まえて国家資格を取得してビジネスに活用したいと考える多くの方のお役に立てるよう、エネコムはeラーニングサービスの開発・提供に注力しています。

いつでもどこでも、スキマ時間に受講可能

──国家資格を取得するための学習支援ツールとして導入が推奨されている「eラーニング」のメリットと活用法を教えてください。

エネコム山本拓弥氏(以下、山本) :eラーニングはオンライン教材という特性上、”いつでもどこでも”時間や場所を問わずに受講できるところが大きなメリットです。たとえば、移動中のスキマ時間を有効活用して、スマートフォンでも学習が可能ですし、繰り返し再生が可能なので、講義の内容を充分に理解できなかった箇所を聴き直すことができて理解度が高まります。

 登録講習機関をはじめとする法人にとってもeラーニングの利便性は高く、短期間で大人数を育成できるほか、受講生の学習状況や理解度をデータ管理できるため、個人ごとに適切なアドバイスを行うなど教育の品質向上につながります。また、教則の内容が更新された際、迅速にアップデートできることもオンライン教材ならではのメリットです。

皆川 :JULCの受講生には県をまたいで通っていただいている方もいます。eラーニングによる移動時間やコストの削減は、受講者の負担を減らすニーズに沿った講習だと考えます。また、eラーニングは理解不足の箇所を手軽に学び直しができ、操縦者の習熟度向上に役立ちます。一方、講習を行う立場では、学科講習をオンラインにすることで、オフラインの対面でしかできない実技講習やグループワークなどに講習時間を充てることができ、受講者と教習所側の双方にメリットがあります。場所と時間を問わないオンライン形式のeラーニングは、とにかく忙しい人が多いドローン業界にもマッチしていますね。

現場を想定した、実用的なノウハウも学べる「EneLearn Drone Meister」

──ドローン国家資格制度における二等資格の取得を支援するeラーニングサービス「EneLearn Drone Meister」の特長を教えてください。

山本 :エネコムが提供するeラーニングサービス「EneLearn Drone Meister」は、二等無人航空機操縦士資格プランの「学習コース」「学科試験対策コース」「口述試験対策コース」の3つのコースから、国家資格の取得や優れたドローンパイロットの育成を支援しています。登録講習機関(ドローンスクール)やドローンビジネスを営む法人、指定試験機関での一発試験に挑戦する個人の方も受講できます。

 本教材でしっかり学んで、資格を取得した後も安心・安全にドローンを運航していただくことを想定しているため、教則には収録されていない実際の運用シーンやヒヤリハットを想像しながら学習できるのも特長のひとつ。たとえば、操縦時のモニターとして活用するタブレットが夏場に熱暴走し使えなくなるリスクを考慮し、予備機の準備や発熱対策などをアドバイスしています。他にも、ドローンに関連する法令として、道路交通法や海上交通安全法を解説するなど、実務運用におけるドローンの危険性をわかりやすく説明しています。我々自身がドローンを運用したときの失敗や経験をもとに、教材を何度も改良しながら開発しており、二等資格においても国土交通省の教則に沿いながら現場に即した内容を補足して、資格取得後の実務に活かせる満足度の高い教材づくりに努めています。

皆川 :「EneLearn Drone Meister」は高いクオリティの教材で、丁寧に作り込んでいる様子が伺えます。内容は教則に従って構成されていますが、参考図表の挿入や、重要ポイントを抜き出して効率良く習得できる仕掛けがいくつかあります。さらに各章のおわりに確認テストが設定されているため理解度の自己チェックも可能なのがありがたいです。国家資格のカリキュラムに必要な受講時間のログもシステムとして導入されているので、登録講習機関が受けなければならない監査への対策も万全で、安心して利用できます。

「EneLearn Drone Meister」サービスを利用した合格までの流れ 経験者・自信がある方 直接試験を受ける人 初心者・自信が無い方 登録講習機関へ入校する人
「EneLearn Drone Meister」サービスを利用した合格までの流れ

──最後に、ドローン操縦者の教育をになう事業者として、今後の課題や展望をお聞かせください。

皆川 :国家資格は3年ごとに更新が必要です。今後は登録更新講習機関としても登録し、全国各地で国家資格の更新が受けられる体制を構築していきます。また、最新のドローン情報を定期的に発信し、安心・安全に運航するための啓蒙活動も積極的に行っていきます。講習などのコンテンツはエネコムさんとタッグを組んで、利便性が高いeラーニング化を進めていきます。

 教育を通して国内のあらゆるシーンでドローンが飛び交う世界を実現していきたいです。

空尾 :ドローン業界の成長はまだまだこれから。社会の変化や技術、法令のアップデートにいち早く追従しながら、我々単独ではなくJULCさんをはじめサービスをご利用いただくお客さまとともに「安心・安全」とは何かを常に追求し、教材開発やコンテンツの拡充に努めてまいります。

 お客さまの声をもとに、民間資格取得者等のドローン運用経験者を対象とした「二等経験者学習コース」を近日中にリリース予定です。国家資格取得に向け民間資格との差分をリーズナブルかつ集中的に学習できるコースとなっておりますので、ぜひご期待ください。

EneLearn Drone Meisterの特徴

安心・安全なドローンパイロットの育成をコンセプトとして、ドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)取得を支援するeラーニングサービス。国土交通省が認定する登録講習機関(ドローンスクール)の講習教材や、法人の社内教育教材、個人まで幅広く利用できる。

1.手軽なオンライン学習!

手持ちのパソコンやスマートフォンからいつでもどこでも学習できる。受講生はスキマ時間などの自由時間を活用し、繰り返し学習を行うことで学習効率・理解度がアップし、登録講習機関はスクール運営の効率化を実現できる。

2.国家資格の取得だけでなく安心・安全な飛行に繋がる教材!

国土交通省の示すカリキュラム・教則に、現場経験豊富なパイロットが業務で得た知見・ノウハウを加え、ドローン法務アドバイザー八角行政書士が監修。受講生は、国家資格の取得だけでなく、ドローンの安全な運用に役立つ現場知識と法令知識を取得でき、登録講習機関は現場・法令知識などが補足された学科教材により講師の指導負担を軽減できる。

学習や試験対策に使える3つのコース

学習コース

受講時間:約10時間
受講期限:受講申込み後より1ヶ月
27,500円
二等資格(初学者)の学科試験合格に必須となる知識を網羅的に学習するコース。音声説明により、重要なポイントを効率よく学ぶことができます。学習後には、章末テストと修了テストを受けることで学習効果を確認できます。

学科試験対策コース

受講期限:受講申し込み後より1ヶ月
13,200円
模擬試験と一問一答形式により二等資格の学科試験対策を行うコース。模擬試験では、本番を想定した出題形式(50問30分、3択問題形式)を実践することができます。一問一答問題では、多くの問題を繰り返し解くことができます。

口述試験対策コース

受講期限:受講申込み後より1ヶ月
13,200円
一問一答形式により二等資格の実地試験における口述試験対策を行うコース。現場の飛行経験で得た知見やヒヤリハットが織り込まれた内容となっており、操縦前後も含めた注意点等を具体的に学習できます。

※価格はすべて税込価格です。

お問い合わせ先

株式会社エネコム
〒730-0051 広島県広島市中区大手町2-11-10
TEL:050-8201-2197
E-mail:enecom-drone-info@enecom.co.jp
https://www.enecom.co.jp/drone/e-learning/index.html