屋内の自律飛行を遠隔管理

 これら2つの屋外ドローンポートに対して、屋内での運用に適したドローンポートを紹介したのはJIWだ。米国Skydio社製の自律飛行型ドローンSkydio 2+に対応した「Skydio Dock」のデモを行った。

 そもそもSkydio 2+は、日本国内でも非常に注目度が高い機体だ。本イベントでも参加者の半数以上が、1度はSkydio 2+を見たことがあるようだった。GPSに依存せず、Visual SLAMを用いて飛行を制御するため、非GPS空間でも障害物を回避しながら飛行できる自律飛行型ドローンだ。

「Skydio 2+」。
手前右側から「Skydio X2」「Skydio 2+」。

 JIWはもともと、NTT西日本の出資で橋梁にかかる通信線を点検するために設立された会社で、昨年1年間で約500の橋梁点検を行ったという。日本国内でもいち早くSkydioの有用性に着眼して、Skydio日本法人が立ち上がる以前から、米国にあるSkydio本社と協働でインフラ点検を想定した実証実験などに取り組んできた。

 そんなJIWが「満を持して」と紹介したのが、屋内や施設内の自動巡回に最適なドローンポート「Skydio Dock」だ。筆者もこれまで、自律飛行型ドローンSkydioは、屋外における点検のみならず、屋内における警備や施設内の巡視、倉庫における作業の代替などへのニーズが高い、とさまざまな取材で耳にしていた。今回、自動充電機能を有し、インターネットを介して遠隔での操作もできるSkydio Dockが正式にリリースされたことで、Skydioへの注目度がさらに高まっているように見受けられた。

デモンストレーションの概要を説明するJIW岡田氏。

 デモンストレーションでは、2つのDockから同時にSkydio 2+が1機ずつ飛び立った。1回目は、パソコンでSkydio Dockを遠隔操作し、Skydio 2+が予め設定したミッションを行う様子が披露された。2回目は、設定した時刻になるとSkydio Dock前方の扉が自動で開き、Skydio 2+が飛行するところが披露された。また、ドローン飛行中のカメラ映像を映し出す外部モニターも用意されていた。

Skydio 2+が飛行する様子。
2機のカメラ映像が外部モニターに表示された。右側の映像は、ドローンがメーター計測しているところ。

 各機体とも、空間座標でX、Y、Zのパラメーター数値を持ちながら、Visual SLAMを用いて障害物を回避しながら飛行。片方のドローンは、まず前進して、バスケットボールのゴールを見て、次にカメラを真上に向けて天井を見て、ポートに帰還した。もう一方のドローンは、まず同様に前進して、メーターの数値を見て、狭隘部を通り抜けてから、体育館の時計を見て、ポートに帰還した。2回目のデモでは、モニターに遠隔操作アプリの画面が映し出されていた。

ポートの管理画面がモニターに表示された。

 着陸時、ドローンはカメラを真下に向けて、自身が離陸したポートと同一であるかを確認した上で着陸体制に入っていった。ポート着陸時は、ポート側のカメラ映像も遠隔監視できる。

着陸時のカメラ映像。
ポート側のカメラ映像。
Skydio 2+が離陸するところ。

 詳細説明を担当したJIWの寺島氏は、「昨日、私も六本木のオフィスにいながら、この体育館にセットされたSkydio Dockを遠隔操作して飛行ルートを作り、所定の時間になったらそのルート通りにドローンを飛ばすということを行った。Skydioはパラメーター数値を後から編集できるのも魅力。今回、通信にはStarlinkを活用したが非常に安定しており、お客さまに安心して提供できる商材になっている」と自信を覗かせた。

用途に合わせたドローンポート選定を

 当日は、ドローンポートやドローン自体をどう遠隔運用できるのか、という視点でさまざまな質問が上がっていた。例えば、電源供給、通信方式、遠隔操作アプリケーションの仕様やUI、対応カメラの種類や脱着方法、データの保存方法のほか、ポートからポートへのホッピングが可能かどうか、どれくらいの外気温まで耐えられるのか、Visual SLAMを使える照度についてなど。参加者同士、お互いの質問の観点からも、気づきがあったのではないだろうか。

 日本国内には、本イベントには登場しなかったドローンポートもあるし、JIWによるとSkydioでは屋外での運用に対応したドックの開発も進めており、その際には日本でのお披露目も予定されているという。開会式でアイ・ロボティクスの安藤氏が話した通り、ドローンポートはドローン活用の可能性を広げるためにはなくてはならない存在だ。今後も、日本国内におけるドローンポートの活用拡大や普及について、詳しい情報をお届けしていきたい。